『そらのうえ うみのそこ』大復活プロジェクト

科学界のインディ・ジョーンズ長沼毅教授1

この記事は約5分で読めます by 常松心平

2013年にオフィス303企画制作で、TOブックスから発行された科学絵本『そらのうえ うみのそこ』。縦型の絵本で、上から読んでも下から読んでも読むことができる絵本です。主人公はインディ号に乗るタケシ。国際宇宙ステーションから、マリアナ海溝の底まで、さまざまな自然現象、不思議な生物たちと出会いながら大冒険をします。しかし、あえなく絶版。そこで303 BOOKSでリメイクして、2020年6月に再発することにしました(※追記:少し遅れて2020年7月31日に無事発売しました)。このサイトで、その進捗を報告していきます。そこで、まずは監修者である広島大学の長沼毅教授にお会いしてきました。

長沼毅さん
長沼毅(ながぬまたけし)
1961年、人類が初めて宇宙へ飛んだ日に生まれる。 1989年、筑波大学大学院生物科学研究科修了。深海から宇宙、北極から南極、砂漠から高山まで、あらゆる極地で、生命について研究する。科学界のインディ・ジョーンズの異名を持つ。JAMSTEC研究員、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校研究員を経て、現在は広島大学大学院統合生命科学研究科教授。

『そらのうえ うみのそこ』誕生

長沼先生! 『そらのうえ うみのそこ』で303 BOOKSで再発することになりました。そこで先生にアップデートの相談をしつつ。監修していただいた先生自身のお話をうかがえればと思います。

心平

改めて読んでみると、いい本だね〜。

長沼

ほんとにそうなんですよ! この本をつくる少し前、2012年に講談社の『WONDER MOVE 大自然のふしぎ』という本で、初めてご一緒したんですよね。

心平
move 大自然のふしぎ
『WONDER MOVE 大自然のふしぎ』
『WONDER MOVE 大自然のふしぎ』(講談社)。講談社のDVD付き図鑑シリーズの1つ。この本で、303と長沼先生は初めて一緒に本をつくった。

そうだね。宇宙や、深海、南極や北極、砂漠、火山なんかの自然現象と、そこに生きる生物を取り上げた本をつくったんだよね。子ども向けでここまでやるか!というネタをたくさん入れたね。

長沼

そういう流れがあって、この絵本『そらのうえ うみのそこ』が生まれました。

心平

宇宙と深海、両方同時に監修する人は僕以外にはいないかな(笑)

長沼

そうですね(笑)だからインディ号だし、主人公はタケシなんですよ。

心平
『そらのうえ うみのそこ』表紙
『そらのうえ うみのそこ』宇宙
『そらのうえ うみのそこ』積乱雲
『そらのうえ うみのそこ』日本上空
『そらのうえ うみのそこ』研究所
『そらのうえ うみのそこ』海底
『そらのうえ うみのそこ』深海
『そらのうえ うみのそこ』(TOブックス)
監修:長沼毅、絵:大橋慶子、装丁:セキネシンイチ
協力:寺門和夫、佐藤孝子 編集:西塔香絵、常松心平、設楽幸生

チューブワームがはじまり

話す心平と長沼教授

先生ってそもそもどうして極限の世界に興味をもったんですか? 

心平

実は僕は出不精で、極限の世界なんて嫌いなんだよ。用があるから行っているにすぎないので(笑)

長沼

えっ! それはどんな用が??

心平

僕が本当に自分から興味をもったのは、深海に住むチューブワームだけなの。それだけは自分の意志で調査にでかけた。

長沼
チューブワーム
チューブワーム: 深海の熱水噴出孔や冷水湧出帯周辺に生息している。チューブ状の棲管をつくって、その中で暮らしている。和名はハオリムシ。写真は、メキシコ湾で撮影されたもの。
Photo: Charles Fisher) – Microfauna–Macrofauna Interaction in the Seafloor: Lessons from the Tubeworm. Boetius A PLoS Biology Vol. 3/3/2005, e102 doi:10.1371/journal.pbio.0030102

チューブワームだけですか??

心平

そうそう。JAMSTECのときに、潜水調査船に乗って、海底火山の近くのチューブワームに会いに行ったんだよね。

長沼

チューブワームってふしぎな生物ですよね〜。

心平

そう。チューブワームはおもしろくて、世界中の海底火山にいると思いきや、大西洋にはいないのよ。

長沼

あ! そうなんですか! 知らなかった!

心平

それで、「なんでかな?」と思っていたら、「大西洋の海底火山に潜らないか?」と言う話が沸き上がって、「じゃあ行きまーす!」というノリで行くことになって。

長沼

なんか、温泉いかない? みたいなノリですけど(笑)

心平

それで行って潜って、チューブワームいないんだけども、ぶくぶくお湯が湧いてくるわけ。「あのお湯の中に微生物がいるぞ」と言うから、その微生物を培養しようと思ったわけ。

長沼

培養しちゃうんですね。

心平
LOFT9で話す二人

そうそう。普通、培養する時には化学薬品を使うんだけど、それを忘れちゃって。「どうしよう?」と思ったんだけど、ふと思いついて「塩をぶち込もうか」と。

長沼

塩??

心平

海底火山の底で海水が分離するのよ。真水と超濃い塩水に。その超濃い塩水にも微生物がいるはずなんだ。それを取ろうかと思って、塩を培養したらやっぱりいるんですよ。生物が。

長沼

超塩水でもいるんだ。

心平

それで日本に帰ってきて、データベースに照合したら、近い生物がいる。それがなんと南極の微生物だったんだ!

長沼

南極なんですか!?

心平

そうしたら、南極に行かないか?って話になってきて・・・。

長沼

ちょっと待った! 先生、すごくおもしろいので、南極からの話は来週もう一度掲載させてください! というわけで、この続きは次回。お楽しみに!

心平
取材協力
LOFT9 Shibuya
LOFT9 Shibuya
〒150-0044 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS(キノハウス) 1F
http://www.loft-prj.co.jp/loft9/

渋谷円山町にあるトークライブハウス。日中はフードもドリンクもバラエティ豊かなメニューが揃うカフェだが、夜は超バラエティ豊かなトークライブが連日行われる。アーティスト、学者、芸人、アイドルなどが、「トークライブ」ならではの、密度の濃いコミュニケーションを生み出していく。

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執筆・編集
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。