アーティスト稲葉怜を中心に立ち上げた『砂漠の水プロジェクト』始動#1

「KAISU」から始まった『砂漠の水プロジェクト』への想い

この記事は約8分で読めます by 常松心平

着物の糸を貼り付ける独自の「繊維画」で作品を作り出す、アーティストの稲葉怜さん。7月から、稲葉さんが立ち上げたアートプロジェクト『砂漠の水』が始まりました。今回は、シーズン1となるイベント『Ripple』へ行き、稲葉さんと、スタッフ兼アーティストとして参加する_hirosato_さんにプロジェクトへの想いをおうかがいします。

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『砂漠の水』staff Instagramアカウント 
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REI INABA
着物の糸を貼り付ける独自の手法「繊維画」で日本唯一の画家。油彩、モノタイプ版画、ミクスドメディアでの制作も行ない、アムステルダムや台北をはじめ海外出展多数。企業コラボレーション壁画やイベントのライブペイント等、具象 / 抽象問わず幅広い活動を続けている。
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_hirosato_
28歳で会社を退職後、海外へ留学。オーストラリア、ニュージーランドを旅し、様々なアーティストやヒッピーと交流を持つ。彼らの自由に表現をする姿、アートによる心の解放効果に感銘を受け、自身もパターンアートを独学する。 帰国後、口コミで雑貨のオーダー制作を受注したことから、作家活動をスタート。現在は様々な展示に参加しつつ、マンダラーアートをベースにした作品制作や生活雑貨へのデザインを中心に活動中。
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プロジェクト立ち上げは、展示会の1ヶ月半前

早速今回の展示会についてお話をうかがいたいんですけれども、最初はどういったところから出発していった話なんですか?

心平

もともと、今回の会場である「KAISU」さんでは何度か展示をやらせていただいたことがあるんです。そして、今回の展示を開く1ヶ月半前にオーナーさんにお目にかかった時に、もともとゲストハウスだった建物の中が、コロナ禍の影響で閉館となり、ベッドなども撤去しているとうかがいました。そこでこのスペースが自由に使えるというお話を聞いて、今回の展示会が思い浮かんだんです。私は絵描きなので、今まではイベント企画の依頼が来てもお断りさせていただいていたんですが、動きたくても動けないアーティストや、そんなアーティストを応援したい方への想いから、今回の企画を立ち上げようというエネルギーが湧いてきて、ベテランの方からまだスタート地点の方まで私の感覚でいろいろお声掛けさせて頂き『砂漠の水』という名前でプロジェクトを始めました。

稲葉
会場である「KAISU」

1ヶ月半前にアーティストの皆さんに声をかけたんですか?

心平

まずは絵の方からお声がけをしていって、ある程度決まったところでライブのブッキングを始め、ご紹介もあって、ミュージシャンも徐々にラインナップできるようになり、最終的には50組以上のアーティストの方に参加していただける形になりました。

稲葉

今月いっぱいこの場所を使ってるんですよね?

心平

そうなんです。カフェ以外は全部貸切状態です。

稲葉

なかなかない規模なんじゃないですか?

心平

この時期ならではですね。規模もそうですが、アートとの出会い、誰かの新しい世界への入口となりたいという想いがあるので、「出会う場所」というコンセプトから名付けられたこの「KAISU(会す)」で第1回目を開催することができたことにとても感謝しています。

稲葉

このプロジェクトを立ち上げた時は、どういう想いだったんですか?

心平

アートって、人生を豊かにする上でなくてはならない存在だと思うんです。でもそのアートを作るアーティストは、今、アートで生計を立てていくのが難しいのが現実です。そこで、さまざまなアーティストが表現する場、そして今までアートに触れる機会のなかった方に、より身近に感じてもらえる場ができたらいいなという想いで、このプロジェクトを立ち上げました。

稲葉

声をかけたのは、作品への姿勢に共感できるアーティスト

このプロジェクトを立ち上げた時、手伝いたいって言ってくれる方が佐藤くんと、もう1人女性の方と2人いて。実際にお手伝いしてもらって、現場ですごく動いてくれるので助かってます。

稲葉

佐藤さんは稲葉さんと以前からお知り合いだったんですか?

心平

最初に知り合ったのが3年前ですね。以前僕がオーストラリアに留学していたんですけど、実は稲葉さんも同じ時期に同じ語学学校にいたらしく、その時は面識はなかったんですけど、共通の友人を解してそのあと東京で出会いました。

佐藤

展示に来てくれたんです。

稲葉

で、ちょうど絵描きを始めて僕も3年目なんですけど、展示をしていきたいという時だったのでお声がけいただいて、今回展示もさせていただいています。

佐藤

じゃあ佐藤さんは、運営側でもありアーティストでもあるということなんですね。

心平

そうですね。

佐藤
佐藤さんの展示作品

なるほど。稲葉さんは、アーティストの方にお声がけする時にどういう方に声をかけたんですか?

心平

うまく言葉にできないんですけれど、実際お声がけさせていただいた方って本当に直感がだいたい当たっていると思っていて。やっていく中で感じることだったり、向かっているところが一緒なんですよね。

稲葉

僕が見ていると、稲葉さんへの信頼とか絆が強い方が多いと感じます。前向きで活動的で協力的な。

佐藤

作品のテイストというより、作品に向かう姿勢で共感しているのかもしれないですね。

心平

そうですね。作品はジャンルも問わずいろんな方がいるので、人としてももちろんそうですし、姿勢とか考え方で共感している方にお声がけしたんだと思います。

稲葉

『砂漠の水』は、アートの浸透をイメージしたタイトル

プロジェクトの『砂漠の水』という名前はどういうところから着想を得たんですか?

心平

『砂漠の水』っていうのは割と自然に出てきたんですよね。もともとオアシスなどの言葉を探っていて、そこから、砂漠の水からオアシスができるようなイメージを思い浮かべてこの名前にしました。

稲葉

浸透していくみたいなイメージですよね。

佐藤

そうですね。着物でもそうですけど、ただ好きで着ていることで実際に周りにも着物を着る人が増えていって、月1のイベントを続けてきたらなんだかんだ15人くらいが着物デビューをしてるといったことがあったんです。同じように、敷居が高いと思われがちなアートの世界への入り口を、このプロジェクトを通して広げていき、アート自体をもっと自然に浸透させていきたいと思ってつけたのがこのタイトルです。

稲葉

なるほど。

心平

シーズン1のイベントの名前が『Ripple』なんですけど、一筋の雫が落ちて、その波紋のようにアートが広がっていくというイメージで。そして砂漠はもともとアートが浸透していない状態をイメージしていらっしゃったんですよね?

佐藤

はい。アーティストが生き辛いということなども含めてなんですけど。

稲葉

やはりコロナ禍っていうのはアーティストにとって厳しい状況なんですか?

心平

動き方次第だと思うんですけど、私の場合は“動きは止めない”という自分の判断のもと、開催場所がやっている限りやり続けていて、でも結局やってもお客さんにお声がけが一切できない時期が1年以上ありましたね。

稲葉

なかなか活動するのは難しいんですね。

心平

そうですね。見ていただかないと仕事が来ないので。

稲葉

特にアートの場合は、作品を見ないとっていうところはありますもんね。

心平

VRとかでやっている方もいるし、そういう方法もいろいろあると思うんですけど、やっぱり自分も生で見たいし見て欲しいので。

稲葉

このご時世では声をかけるのも難しい雰囲気の時もありますもんね。

心平

そうですね。まだ分からなかった頃はさすがに仲の良い人にも声をかけられず、開催のみをしているという状況でした。

稲葉

展示しているのは、ビタミン的な存在のアート

今回の展示会で生まれた関係性で、また何か継続的にやりたいっていうのはあるんですか?

心平

実はプロジェクトを立ち上げてすぐに、いくつかお話をいただいているんです。

稲葉

じゃあ継続的に繋がっていくイメージなんですね。

心平

そうですね。強い想いが先行して始まったプロジェクトですが、シーズン2、シーズン3と丁寧に育てていって、いい形で繋げていけたらベストです。

稲葉

でもそうなると、稲葉さんは結構企画の方に携わっていく感じですよね。今までとはまたちょっとギアが違うというか。

心平

変な話、企画をしているときと絵を描いている時の脳みそが全く別なんです。企画ばかりしていると絵描きの自分がいなくなってしまうんですけど、できれば絵描きでいたいので、どういう形にしようかなっていうのが課題です(笑)

稲葉
稲葉さんの展示作品

やっぱりプロデュース的なことをやってると、そっちに集中しないといけないから。

心平

両立すると変なことになるので、今はどっちかに集中するようにしています。

稲葉

この展示会に来るお客さんに、何を見てもらいたいですか?

心平

すでに来ていただいたお客さんで、エネルギーを感じるって言っていただける方がすごく多いんです。単純に元気になるとか、何かそういうものを求められているなっていうのは体感していて、癒しとかエネルギーとか、そういうビタミン的な存在のアートっていうのがここにはあるのかなと思います。

稲葉

佐藤さんはどうですか?

心平

本当に新進気鋭の方から大ベテランの方までいて、それぞれ情熱やスタイルをお持ちなので、自分に波長の合うエネルギーを持って帰れるのではないかと思います。また、そもそもアートの間口を広げていろんな方がアートに触れるきっかけになれたらという願いを込めているので、あまり気負わずに純粋にアートに触れ合ってもらって、少しでも何か感じてもらえたらと思います。

佐藤

CREDIT

クレジット

聞き手
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
執筆
フリーのライター兼プランナー。趣味は料理と映画鑑賞、特技は一人飲み。一人でどんなお店にでも入れるため、取材も積極的に行う26歳。人との繋がりとコミュニケーションを大切に、遊びも仕事も全力で取り組みます!
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。世間のブームにのりたい47歳。パンダが好き。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。