VSコロナ コロンビア編

犯罪は減るのか!?

この記事は約5分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

4月21日福岡市のうなぎ店で、元従業員の男が店主の娘2人を人質に立てこもった事件が大きな話題を呼びました。コロナウイルスと戦う世界の様子を紹介する『VSコロナ コロンビア編』。日本に比べ治安の悪いコロンビアですが、ロックダウン以降犯罪件数が減少しているとの報告があります。その実態はどうなっているのでしょうか。笹島佑介が現地からお伝えします!

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175人でロックダウン

ロックダウンをしているいくつかの国では、全体的に犯罪件数が減っているとの報告が見られます。外出する人がいないのですから当然といえば当然ですが、筆者が住むコロンビアでもそうした動きが見られます。

国家警察都市公安局長のホルヘ・ルイス・バルガス少将によると、今年1月から4月までの間の犯罪件数を前年と比較すると、

  • 殺人→8%
  • 傷害→22%
  • 窃盗→22%

の減少が見られるようです。また、ロックダウンの間に限ると、

  • 殺人→53%
  • 傷害→88%
  • 窃盗→90%

も減っています。

※さまざまな犯罪が減少傾向にある。
(出典 :
https://www.eltiempo.com/justicia/delitos/aislamiento-por-el-coronavirus-reduce-los-indices-de-criminalidad-en-colombia-479240)

このように、ロックダウンによって犯罪発生は大幅に抑制されていますが、反対に増加している犯罪もあります。たとえば、最近ではスーパーマーケットや商店への略奪行為が見られます。略奪が起こっている地域では深刻な食料不足に陥っており、こうした食糧難が引き金になっていると見られます。

※動画にはショッキングな暴力シーンが含まれますので閲覧にはご注意ください。

ボゴタ市長がツイッターアップロードした動画に略奪行為を試みるグループが写っている。なお、この動画を上げた市長に対してツイッターユーザーから批判の声がたくさんあがっているが、その理由は次稿で。

また、ネット決済利用者を狙ったサイバー犯罪も増えているそうです。ロックダウン中でも特定の日は銀行手続きをするために外出できますが、銀行にはいつも長い列ができていて手続きするのも一苦労です。

また、空いてる日に行こうと思っても外出できない日(首都ボゴタは性別で、ほかの都市はマイナンバーの末尾数字で外出可能な曜日が決められている)だと警察に捕まって罰金を払わないといけません。

こうした面倒を避けるためにネット決済を利用する人が増えているのですが、この動きに合わせて個人情報やお金を盗む不正サイトも増えています。ロックダウン中のサイバー犯罪件数は150%も増加していて、これまでに200近くの不正サイトが見つかっており、当局は注意を促しています。

件数は減っているとはいえ殺人事件も起こっています。公安局長によると、ロックダウン中に起こった殺人事件のうちの34%はギャング同士の対立によるものだそうです。

街はロックダウンしていてもギャング同士の縄張り争いや小競り合いは続いていて、たとえば、あるグループが自分たちの縄張りで麻薬密売などのビジネスを展開している他のグループを見つけるとそのメンバーを殺害し、今度はメンバーを殺されたグループが復讐のために…という形で抗争が止むこと無く続いています。

また、ウイルス感染拡大で社会が混乱しているのを好機とみて、ほかのグループに攻勢をかけるものもいて、血で血を洗うギャングたちの抗争はコロナウイルスでも止められません。

ギャングの抗争と関係のない殺人も起こっていて、一週間ほど前に、外出禁止命令を無視して外でたむろしていた若者グループを注意した警察官が殺されるという許しがたい事件が起きています。

※動画にはショッキングな暴力シーンが含まれますので閲覧にはご注意ください。

※暴行を受けた末に携帯していた銃を奪われて殺害されたカルロス・アルベルト・レオン・スアレス氏

さらに、ロックダウン中でも武装組織による殺人・政府への攻撃・麻薬密売といった犯罪行為を止みません。

コロンビア内戦に関わった武装組織の犯罪調査などを行うJEP(Jurisdicción Especial para la Paz)という移行期正義機関によると、ロックダウンが始まった3月25日から4月9日までの間に、武装組織の支配に抵抗する地域活動家がほぼ2日に1人のペースで殺害されています。

同じ時期に、コロンビア最大の武装組織クラン・デル・ゴルフォ(Clan del Golfo)が組織から離反して社会復帰したメンバーを殺害する事件も起きています。

クラン・デル・ゴルフォやFARC(反政府極左ゲリラ組織。2014年に政府との和平合意経て解散したが、和平合意を認めないメンバーは武装闘争の維持を表明している)の元構成員などは、コロナウイルス感染拡大による混乱に乗じて首都ボゴタの貧困層地区住民に彼ら独自の法を押しつけて支配しようとしています。

コロンビア南部では、支配地域や密売ルートをめぐって政府軍の特殊部隊と武装組織の戦闘が繰り広げられています。武装組織はコカインの栽培・密売で資金を得ていて、政府はそうしたコカの畑を見つけ次第根絶やしにしています。

そのため、武装組織は新たなコカ畑をつくってその密輸ルートを確立する地域を手に入れるため政府軍と交戦するのです。

コカの栽培ポイントになっているコロンビア西部のアルヘリアという村ではテリトリーを巡って政府軍と武装組織が激しい戦闘を繰り広げていて、3月7日には警報が出されて270の家族が村から去りました。その後も争いは続いており、3月15日には武装組織の構成員8名が死亡する戦闘が起こっています。

悲しいことに、ただでさえロックダウンで経済的、精神的に疲弊しているのに、略奪やギャングの抗争、武装組織の支配といった暴力にも怯えて暮らさないといけない人々がいます。

次回は、支援を求め過激化するデモについて少し紹介したいと思います。

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暴力と嘘

CREDIT

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執筆・編集・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。