VSコロナ コロンビア編

175人でロックダウン

この記事は約5分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

緊急企画です。コロナウイルスとの戦いは地球に暮らす人類みんなの戦いです。そこで、ともにコロナと戦う地球の裏側の様子をお伝えします。ここでは、ユースケ“丹波”ササジマが、コロンビアの最新事情をお送りします。参考になる部分があれば!

2019年末、中国の武漢市付近で発生した新型ウイルスは瞬く間に世界へと広がり、2020年4月現在でも多くの国で感染者、死者を出し続けています。これまで感染者数・死者数ともに比較的低く抑えられてきた日本でも、最近は感染確認件数が増加しており、「東京がロックダウン(都市封鎖)」するんじゃないと(日本では外出禁止にすることはできないので、原則としてロックダウンはできないですが)騒がれています。日本国内にいる人はもちろん、海外にいる多くの日本人も心配しています。私も、そうした事態を海外から見ている一人ですが、あまり心配はしていません。何もしなくても大丈夫という意味ではなく、国民ひとりひとりが油断することなく細心の注意を払って過ごせば、ヨーロッパや北米で起こっている苛烈な状況を免れることができると思っています。

ところで、私がくらすコロンビアも新型ウイルスの猛威にさらされていますが、綱渡り状態です。

  • 病床数は10万人あたり1.7(日本は13)
  • 医療チームが治療するための防護用品が足りていない
  • ICUベッドの数は10万人あたり2以下(日本は4)
  • 田舎のほうではICUベッド自体がなく重篤患者への治療ができない

感染が広がると一気に医療崩壊してしまいそうです。もしコロナウイルスにかかっても診てもらえる気がしませんね! 

こうした医療体制問題のほかにも、コロンビア国内には経済的に困窮した人が多く、貧困層がくらす地域では小さな家でたくさんの家族と住んでいるというケースが多いです。そうした場所でひとたび感染が起こると一気に広がってしまうかもしれません。また、他国同様、今回の事態で職を失う人も多く、そうして立ち行かなくなった人々が食料を求めて暴動を起こすこともあるかもしれません。

日本では報道されていませんが、フランスやイタリアなどのように、コロンビアでも去る3月24日に感染拡大を防ぐために強制自宅待機命令が出され、ロックダウンしています。この強制自宅待機命令が出されたときは、国内感染者はまだ175人でしたが早々にロックダウンに踏み切りました。私は関係者でも専門家でもないので詳しいことはわかりませんが、他国での感染拡大のスピードや上記のような問題を考慮して、こうした果断な対応に至ったのかと想像しています。

この待機命令で、ほとんどの市民は限られた場合(仕事、食料品の買い出し、銀行手続きなど)にしか外出することができなくなっています。さらに、国内線の便は全休なので都市間での大きな移動もありません。自治体によっては、街を封鎖して許可された人しか入れなくなっているところもあります。

しかし、こちらではパニックになったり絶望的になったりということはありません。不十分な医療体制や格差問題などハードの面は心許ないですが、新型ウイルスに立ち向かうために政府は次々と対策を講じ、ほとんどの市民は辛抱強く家に引きこもっています。

日本には迅速に対応する政府はないかもしれませんが、比較的しっかりした医療体制があり、優れた公衆衛生もあり、感染防止に好ましい生活習慣があります。ひとりひとりがマスク着用・手洗いうがい・不要不急の外出自粛など、“3密”の回避など感染防止のために推奨されている提言を徹底すること、怪しい症状が出たら無理して外に出ないようにすることで、コロンビアよりも容易に感染拡大を防ぐことができると思います。

これからどうなるかは誰にもわかりませんが、今回のコロナウイルス禍を乗り越えるために私たちがしなければいけないことは、各個人が自覚的に行動するしかありません。欧米諸国と同じ道を辿るわけにはいきません。少しでも早く収束するように、絶望的にならず、落ち着いて、気を引き締めなおして、もう少しがんばりましょう!

さて、前置きが長くなりました。この連載は、コロナウイルス禍でロックダウン中のコロンビアでくらす筆者が、現地の様子をお伝えしていくカジュアルなルポです。外出自粛中の暇つぶしに、コロンビアを知るきっかけに、日本の良い点と悪い点を考えるひとつの材料に、とにかく何かの足しになれば幸いです。

第1回の本稿では、コロンビア全土が強制自宅待機措置を敷かれるまでの経緯をおおまかに辿ってみましょう。

3月6日、首都ボゴタで国内で最初の新型コロナウイルスの感染者が確認されました。19才の女性で、イタリアのミランからの帰国者でした。その3日後の3月9日には、スペインから帰国した2人の男性の感染が発覚、その2日後の3月11日から徐々に感染者数が増えていき19日には100人を超えます。3月2日に、厚生・社会保障省大臣が渡航者チェックの強化を決めて、「コロンビアは感染防止にむけてしっかりと動いているので、皆さんには落ち着いてほしい」と語った2週間後でした。このあたりから感染拡大防止に向けていろいろ動きだします。

3月14日、公園や図書館、博物館、プールなど多くの人が集まる場所の閉鎖が決定(筆者が暮らすメデジン市)
3月15日、大統領がコロンビア全土の公立学校の休校が発表
3月17日、強制自宅待機演習の計画を発表(首都ボゴタ)
3月19日、20〜24日にかけて4日間の強制自宅待機措置を発表(メデジン市)
3月20日、メデジン市の強制自宅待機措置発表の翌日、突然、大統領が3月24日〜4月13日までの19日間、コロンビア全土で強制自宅待機措置をとることを発表。

国内全土での強制自宅待機措置が発表されたときの感染者は175人でした。その発表から約2週間後の4月1日現在では、1065人にまで増えてます。この増加分は強制自宅待機措置前に感染した人が多いと思うので、効果が現れるのはこれからでしょうか。

大統領の権限が強いので対策の実行がめちゃくちゃ速いです。3月18日には、各県や自治体が何かしらのコロナウイルス対策を行う際には先ず大統領を通さないといけない命令を出し、コロンビア全土を大統領がコントロールする中央集権体制がより強化されました。このシステムに反対している自治体の長もいるみたいですが、次々と手を打っていかないといけない今回のような事態では、そうしたシステムも必要でしょう。悪手を打たなければという条件付きですが…。

次回は強制自宅待機命令について少し詳しく解説いたします!

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"ロックダウン"封鎖された街

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執筆・編集・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。