VSコロナ コロンビア編#6

封鎖された世界の罪と罰

この記事は約5分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

コロナウイルスと戦う世界の様子を伝えるこの緊急企画「VS コロナ」。第6回は、コロンビアで、外出禁止にもし従わなかったら?という内容です。日本の非常事態宣言の特徴はあくまで「自粛要請」にとどまり、罰則がないということです。しかし、本格的にロックダウンさせたコロンビアでは、そうはいかないのです。さて、今後、日本が外出自粛を続け、踏みとどまれるか、今が正念場です。コロンビアの様子をぜひ参考にしてください。

笹島佑介が現地からお伝えします。

感染拡大を防ぐために3月24日から始まったロックダウンで、コロンビアの街はすっかり静まりかえっています。大半の市民は強制自宅待機命令に従って家にこもっていますが、ほかのロックダウンしている国でも見られるように、一部の人は命令に背いて外出してしまう人がいます。たとえば、私が住んでいるメデジンという市(人口約240万人)ではこれまでに8405回の罰金命令が出ています。罰金は936,323ペソ(約26,200円)なので、最低賃金ぐらいあり、決して安くはないです。メデジン市長によると、徴収された罰金は医療現場で働く人々が使うマスクや手袋、防護服に使われるとのこと。

メデジン市の場合、こうした違反者は当局の目が行き届かない都市の中心部から少し離れた場所に多く、いまだにサッカーコートで遊ぶ子どもの姿が見られるようです。もっとも、こうした地域は平時から雑然としており、違法駐車して道を塞ぐ車やヘルメットをかぶらずに闊歩するバイカーがよく見られます。首都ボゴタでも、いまだに外出禁止令を守らない人やこうした対策の意味を理解していない人がおり、「罰金っつったて払う金なんかねえよ」と憤る中年男性や、「ずっと家にいたら退屈だから外出するの」という高齢女性などがニュースで取り上げられていました。ちなみに、コロンビアでは4月4日からマスクの着用が義務になっています。具体的にいうと、

  • 公共交通機関内、市場やスーパーマーケットなど人が多く集まるところで他人との距離を1mも取れないところ
  • 吸器系疾患の兆候を持っている人
  • 重症化するなど危険な状態になる可能性が高い人(70才以上、循環器系・免疫系疾患、がん、HIVキャリア、妊婦、呼吸器系の慢性疾患を持っている人)

という場合、マスクをつけるのが義務になっており、「マスク着用を心がけよう」と呼びかけていますが、マスクをつけていない人、口を覆わずにただ耳と耳にマスクをかけているだけの人も見かけられます。

数日前、ロックダウンの真っ只中、メデジンの北にあるベジョ市で、ある故人のために多くの地元民が街へくりだし、長い葬列をつくって弔ったというニュースがありました。その故人とは、ベジョ市を拠点とするギャンググループの頭目で、2019年に逮捕され収監されていましたが、先日心不全のために死亡しました。地域住民から慕われており、警察が逮捕したときも頭目を乗せたパトカーを住民たちが止めようとしたほどです。そのため、外出が禁じられているにも関わらず、彼の死を弔おうと多くの住民が街頭に出て葬列をなしました。この葬儀を察知した当局はすぐに警察を送って解散させ、約50人に罰金命令を出したようです。ロックダウン中でも葬儀はできますが、立ち会えるのは家族だけです。

※葬列の様子
(出典 : https://www.eltiempo.com/colombia/medellin/en-plena-cuarentena-caravana-despide-a-jefe-de-bacrim-en-bello-482180 )

上記のURLから葬儀の様子を見ることができます。ロックダウン中とは思えないほどの人出です。マスクしている人も少ないです。なお、誤解がないためにいうと、日本でイメージの悪いコロンビアといっても、地域住民がギャングの頭目のために大々的に葬儀をするということは普通ではありません。

ところで、外出禁止令の違反者は罰金を支払うか、ひどい場合は懲役刑になりますが、こうした処罰のほかに、教育的処罰というものもあります。地方の自治体では、外出禁止令を破った未成年に対して、“No debo salir de la casa(家から出てはいけない)”という文章を1000回書かせる罰を実施しているところがあります。さらに、未成年の親も、“No debo dejar que mi hijo salga de la casa(自分の子どもを外出させてはいけない)”を1000回書かないといけないようです。外出させた責任がありますからね。

こうした罰は、罰金を課すかわりの代替策(罰金を払うことが難しい人もいるため)のようですが、懲りずにまた違反した場合、900,000ペソ(約25,000円)の罰金が課されるとのこと。こうした教育的処罰のほかに、バジェドゥパルという都市では街の清掃を罰として義務付けようという動きがあるようです。罰とはいえ外出しないほうがいいと思いますが……。

コロンビアでの様子や他国のニュースを見ていると、外出禁止令という強権を発動せずとも、それなりに街を空っぽにできる日本はやはり規律が高いなと思いました。もちろん「自分は大丈夫」などといって外出してしまう人もいるでしょうが、それはどこの国も同じですよね。それにしても、大統領の命令で次々ことが決まっていく国にいながら、「要請」「求める」「指示」などの文言が頻発する日本の緊急事態宣言を見ていると、つくづく良くも悪くも日本的な宣言だと実感させられます。

今回のような緊急事態において、文化的に「主体性がある」とされている欧米諸国ではそうした個々人の主体性を奪う強権が現れて、「主体性がない」とされている日本ではそうした強権は現れず、なぜか個々の主体性に委ねられるというねじれ現象は面白いですね。

さて、次稿は経済的に弱い立場にある人々への支援における問題などを紹介したいと思います。

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株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。