ガレージ・アニメ“マウスマン”と佐藤亮の世界#1

「アートアニメーション」ってなに?

この記事は約5分で読めます by 水落直紀

ラフスケッチのようなマウスマンが動き出し、乾いた笑いを届けてくれるガレージ・アニメ『マウスマン』や、人形を使ったコマ撮りの短編アニメーションなどを手掛けるアートアニメーション作家の佐藤亮さん。現在、303 BOOKSで出版する絵本『そらごとの月』『ほんとうの星』のPVを制作中です。今回は、仕事場でもある自宅にお邪魔して、佐藤さんの世界を覗いてみましょう。

佐藤亮さん
佐藤亮(さとうりょう)
アニメーション作家。頭部が唇だけのキャラクター「マウスマン」シリーズや、人形アニメーションの制作に携わり、世界4大アニメーションフェスティバルのひとつである広島国際アニメーションフェスティバルで作品が上映されたこともある。今年は韓国で開催された「Indie-AniFest 2019」のリレーアニメーションプロジェクトにも参加。
Tumblr
マウスマンの動画更新ができなかったと謝罪をしている佐藤さんのところに・・・。

「アートアニメーション」ってなに?

まず、「アートアニメーション」ってなんでしょう?

水落

あまりはっきりとした定義はありません。作家さんの中にはこの言葉を使うのを嫌がる人もいますね。

佐藤

なるほど。個人的には少し難解な短編アニメーションがそう呼ばれるイメージがありました。

水落

僕としては、「TVで放送されるアニメーション以外」というとらえ方をしています。なんでも動けばアニメーションですから。

佐藤
動画制作を行う佐藤さん
動画制作は「Adobe After Effects」を使って行う。
『カメラマンの復讐』
ロシアで初めて人形アニメーションをつくったラディスラフ・スタレヴィッチが1912年に制作したアニメーション。本物の昆虫を人形にし、虫の夫婦の間に起こる事件をコメディタッチで描いている。

日本ではアニメ産業が盛んで、みんなTVアニメに親しみがあると思います。どうしてTVアニメじゃなく、アートアニメーションを目指したのでしょうか?

水落

実は、僕はTVアニメにはほとんど影響を受けていないんですよ。

佐藤

え? じゃあ僕の好きな『太陽の牙ダグラム』とか、『蒼き流星SPTレイズナー』とかも通ってないんですね・・・。

水落

※『太陽の牙ダグラム』=1981年~1983年までテレビ東京で放送されたロボットアニメ。監督は『装甲騎兵ボトムズ』で有名な高橋良輔。

※『蒼き流星SPTレイズナー』=同じく高橋良輔が監督したロボットアニメ。初めは王道のSF路線だったが、当時大人気だった『北斗の拳』に影響を受け、とんでもない路線変更をした。

原点としては、やっぱりディズニーです。

佐藤

『ファンタジア』などでしょうか?

水落

個人的には、もっと古い白黒のものが好みです。たとえば、『Plane Crazy』とか。

佐藤
佐藤さんのデスク
デスクにはミッキーマウスなどお気に入りのキャラクターが飾られている。
1929年公開。今や世界的キャラクターになったミッキーマウスの最初期の作品。前年に大西洋を単独で横断飛行したチャールズ・リンドバーグから着想を得て制作された。

従兄弟の家にディズニーのLDがあって、それをVHSにダビングしたものを家で見ていました。

佐藤

確かに、佐藤さんの作品を観ると、いい意味で日本人らしくないというか、海外でウケそうなセンスを感じます。

水落

日本のアニメにはあまり興味がなくて、実はジブリの主要作品もまだ観ていないんです。

佐藤

アニメーション制作の道へ

でも、アニメが好きでも、作るとなると別物だと思います。アニメーションを作り始めたのはいつごろなんでしょうか?

水落

昔から絵を描くのは好きで、キャラクターなどは作っていました。でも、どうやってアニメーションを作るかは学生のころはわかっていなかったですね。

佐藤

確かに、機材や手法など、すぐにできるものではないですよね。

水落

アニメーションを作りたいという思いはぼんやりとありました。そんなときに、つちもちしんじさんに「こんなところもあるよ」って学校を教えてもらったんです。

佐藤

それは、『代アニ』のようなアニメの専門学校ですか?

水落

いえ、TVアニメ制作を目指す学校ではなく、アートアニメーション専門の学校です。名前もそのまま「アート・アニメーションのちいさな学校 。

佐藤

※アート・アニメーションのちいさな学校=東京都阿佐ヶ谷にある、アートアニメーションの専門学校。平面アニメーションのほか、日本では唯一人形アニメーションを学ぶことのできる学校。

こんな学校があるんですね!

水落

TVアニメの学校よりは入りやすそうだし、やってみようということで、平面アニメーションのコースに申し込みました。26歳のころですね。

佐藤

こうしてアニメーション制作の道へと入っていったんですね。次はアニメーションの学校時代のお話や、代表作『マウスマン』シリーズについてもお聞きしたいと思います。

水落
“Condominium”
マンションのエレベーターを昇り降りするマウスマンと、人々の人生が描かれる作品。

#2 “マウスマン”の誕生

CREDIT

クレジット

執筆・撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。
    撮影
    千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。