絵本作家・長田真作×俳優・松坂桃李『ほんとうの星』『そらごとの月』刊行記念対談

平成生まれ、30代。最近気になる節目の話

この記事は約5分で読めます by 常松心平

2016年のデビュー以来、30冊を超える絵本を世に送り出してきた長田真作さん。
このたび、新作絵本『ほんとうの星』『そらごとの月』が、303BOOKSより2冊同時刊行となります!
その発売を祝し、作者の長田さんと俳優の松坂桃李さんによるスペシャル対談が実現しました!
お二人は、5年来のご友人だそう。
第一回目は、30代という節目を迎えた今の心境や作品への向き合い方についてざっくばらんに語っていただきました。

長田真作(ながたしんさく)
広島県出身。2016年に『あおいカエル』(文・石井裕也/リトル・モア)で絵本作家としてデビュー。『きみょうなこうしん』『みずがあった』『もうひとつのせかい』(以上、現代企画室)、『風のよりどころ』(国書刊行会)、『すてきなロウソク』(共和国)、『とじてひらいて』(高陵社書店)、『いっしょにいこうよ』(交通新聞社)など多数の作品を手がける。
松坂桃李(まつざかとおり)
1988年生まれ、神奈川県出身。2008年に男性ファッション誌の専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、モデルとしてデビュー。2009年、『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。それ以降、数々のドラマや映画に出演。映画『新聞記者』(2019年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。公開待機作として映画『あの頃。 』、 『空白』、 『耳をすませば』を控える。

30歳で迎えた、意識の変化

僕は平成元年生まれで今30歳なんだけど、桃李くんは31歳?

長田

そう。31歳。

松坂

あまり急に「この世代」みたいな事でくくるのは早いかもしれないんだけど、一応、僕、30歳の節目なので。よく言うじゃない、節目の話。

長田

節目の話ね。

松坂

30歳になって『ほんとうの星』『そらごとの月』を描いたわけだけど、これまでの作品には無かった、なんというか……かなり純度の高い自分の質感みたいなものが出てきたなと感じたんだよね。

長田

おお、なるほど。

松坂

じつは僕、これまで作品を描くとき、読者設定みたいなものを考えたことがなかったの。だけど、自分が30代にさしかかったというのがきっかけになって、「同年代の人は自分の作品を読んでどんな印象をもつのかな?」と思ったの。
それで、桃李くんをお呼びしたと。こういう次第で(笑)。

長田

そういう事だったんですね(笑)。いや、嬉しいですよ。

松坂

桃李くんはどう? 仕事をする上で、年代のことってどういうふうに意識してきたの?

長田

10代も20代も、「その年代だからこそできる作品」というのはあるから、それは意識してきたかな。20代後半は特に、「30歳になるまでにいろんな事を経験しておきたい」と思ってた。

松坂

うんうん。

長田

チャンスがあるなら、もう本当に「何でもやります!」みたいな。
『がむしゃらに走る』という事をやった上で30歳を迎えたほうが、30代での仕事の仕方が見えてくるんじゃないかなというふうに思ったんだよね。

松坂

なるほど。

長田

30代の10年間は、40代になったときの糧になるような時間の使い方をしたいと思っているんだ。だから20代のころと比べて大きな心境の変化みたいなものがあるわけではないんだけど。

松坂

同年代の作品を見て、自分自身を顧みる

真作くんはどう? 意識の変化ってあるの?

松坂

僕は10代20代、あるいは一桁の年齢の時から、目的意識とか、目先の事さえもちょっとよくわかってないような状態で、ぼんやりしてたね。絵本描くのもひょんな事で描き始めたんだよね。

長田

そうなんだ!

松坂

そのあたりのきっかけも含めて、そこからどう流れていくか、あるいは今もどうなっていくのかみたいな事さっぱり考えていなくて。当てずっぽうなわけですよ。

長田

おお。

松坂

だけどだいぶ前、たまたまある出版社の社長と話していて、僕が今29歳で、もうすぐ30歳になるという話をしたら、急に「あら!あなた魔の29歳ね!」と。

長田

どういう事?

松坂

どうも、その会社では29歳になると社員が転職して出ていくというのがあるみたいで。だから、新しく採用しようとするのも29歳の人たちだと。

長田

へええ!

松坂

それを聞いて、やっぱり節目ってあるんだなあと思ったんだよね。30歳って、どんな人にとっても「動かなきゃ」という意識が高まるタイミングなのかもしれないと改めて思ったの。

長田

それはあるかもしれないね。

松坂

ここまで当てずっぽうで来た僕なんだけど、そういう「動かなきゃ」という意識は、今回の2作品を描いたときに少なからず作用したなと思っていて。

長田

そうなの?

松坂

うん、「動かなきゃ」の他にもたくさんの変化があるのかもしれない、そう思い始めてね。今になって急に同年代というキーワードが浮き上がってきたの。

長田

なるほどね。

松坂

音楽、ダンス、映画、小説、漫画……見ず知らずの同年代の作品を見て、今の自分やこれまでの自分のことを顧みるって、エンターテイメントだからこそできることだと思うんだよね。僕も、桃李くんの作品を見て、すごく刺激を受けているし。そのあたりのことが気になってね。

長田

次回は、長田さんと松坂さんの出会いの話や、漫画『ONE PIECE』を絵本化した話……などなど、語っていただきます

構成:常松心平、中根会美、撮影:土屋貴章、水落直紀

二人の出会い。そして絵本の可能性について

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編集部
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。