
前回は、長田さんの絵本についての考え方、向き合い方をうかがいました。第2回は、絵本のアイディアやストーリーが生まれる瞬間についてのお話です。

ほんとうの長田真作、そらごとの長田真作
感覚と理屈、意識と無意識
頭の中で妄想の旅に出る

絵本のストーリーはどういうところから降りてくるんですか?

いつも、日常をもうちょっとおもしろくしたいなって思っているんです。絵本の作業はその延長ですね。自分が現実にどこかへ行くのは限度があるけど、机に向かって妄想して、創作して、こうだったらおもしろいのになあとか、頭の中ではどこまでも旅ができる。そういう中で自然とストーリーが生まれてきます。

自由な空想の中からお話ができてくるんですね。

はい。ですから、最初から読者のことを意識してストーリーを作っているわけではないですね。基本的には、どれだけ自分が高揚できるか。そこらへんの感覚ですね。



長田さんはお会いするとすごく明るくてポップだと思うんですけど、今回の『ほんとうの星』『そらごとの月』を含め、作品からは孤独で厳しい世界観を感じることがあります。それはどうしてだと思いますか?

多分それは、どうしても絵はデフォルメ、誇張して描いているからかな。僕自身から感じる要素と絵に出てくる要素が違ってるなら、それはまた面白いじゃないですか。僕は風景をそのまま描くタイプじゃないですから。でも、今回の2作のような絵ってわりと、考えこまずにスッと描いてる感じなんです。だから絵と描き手の関係性というのは案外一致しないのかもしれないですね。

ごく自然にああいうイメージが浮かんでくるんでしょうか?

そうですね。でもどう見ても不自然な世界ですよね(笑)。
絵から始まる絵本の世界



絵本を作るときは、絵から先に描き始めるんですか?

どちらかといえばそうですね。まず絵を思いついて、そこからストーリーがわっと閃くほうが多い。言葉からっていうのはあんまりないと思います。こんなのがいたら世の中っておもしろいよね、とへんてこなイメージが思いついたら、すぐ家に帰って描きはじめます。友人とお茶してるときに思いついたりしたら、帰りたくてしょうがないですよ(笑)

描き上げた絵からお話が始まるんですね。

そう。絵は描けたらほとんど修正も付け足しもしなくて、だいたいが文字の修正です。

今まで全部の作品で、そういう作り方なんですか?

そうです。意識しているわけじゃなくて、なんとなく自然な流れでそうなっています。僕の中で描いている段階からある程度コンセプトが定まっている絵本もあれば、説明しづらいものもありますが、どれも同じように、ふと思いついて作業に向かったらできたという感じです。“あー、こんなもんかなあ”なんてね。大体が、その繰り返しですね。


『ほんとうの星』『そらごとの月』も同じように生まれたんですね。

あれもそうですよ。まず最初に思いついた絵を描き上げて、これはなんだろう? と考えるところから始まるから。で、絵ができあがってから想像するんです。これからどうなっていくのか? と。

絵本の作業は毎日やっているんですか?

いやいや。できるときは一気にやって、できないときはほんとにやってない。かといって、描いていないときは、何かから甚大なるイメージを吸収してやるんだぞ! という志はないですね。たとえば遠出して色んな物を見聞きすることを意識しているわけではなくて、どっちかというとふらふらしてる。ふらふらしてる時間が長ければ長いほど頭に何かが溜まっていくんですよ、一応そういうことだろうと自分で思い込んでいます(笑)。要は、アイデアが湧いてくるのを待ってるわけです、たぶん。

アイデアが湧いてくるのはどういう時ですか?

うーん…あえていえば、人と喋ってる時でしょうね。僕はおしゃべりが好きですからね。あてもなく人と喋っていると色々な価値観がそこに落っこちているから。あとびっくりするのは、自分で言ったことに対して、自分でも「そうだったんだ」って思うことがあるんです。まあ、つまりは無意識のうちに考えていることが、喋ってみるとちょっとまとまる…のかな。おしゃべりの醍醐味とでも言いましょうか(笑)

ほんとうの長田真作、そらごとの長田真作
時代へのまなざし
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