私たちは、絵本をつくる絵本屋です。ニジノ絵本屋

人と人のつながりで広がるお店

この記事は約5分で読めます by 野田浩樹

ニジノ絵本屋さんは、絵本を売るだけでなく、絵本を作っています。
国内から海外までいろいろな場所でイベントもしています。
今回のインタビューでは、このユニークなお店が10年も続いている理由を、ちょっと深めにさぐってみました。

いしいあや
絵本専門店「ニジノ絵本屋」代表。2011年に「ニジノ絵本屋」をオープン。2012年より出版事業をはじめる。絵本にまつわるLIVEパフォーマンスやワークショップなどのイベントを国内外で開催している。

前回のインタビューでは、絵本に対する強い思いがあったわけではないとうかがいました。そういうものがなくてお店が10年続くのは、すごいですよね。

野田

なぜ続けられるかっていうと、人のつながりがあるんですよね。つながっていく人たちは、素敵な人が多いんです。自分が本好きなだけでつなぎとめておこうとすると、自分のモチベーションだけにダイレクトに左右されてしまいます。人とのつながりが土台にあれば、全員がやる気をなくすっていうことは、ほぼ起きないですから。

いしい

ニジノ絵本屋のサイトに「品ぞろえは、ほんの少し。」とあったのが印象的でした。これは結構、選ぶ側からするとポイントです。

野田

そうなんです。ニジノ絵本屋の選書の基準は、作り手さんとのご縁のあるものばっかりなんです。その人を知っているから「この絵本は~」っていうセールストークが自然とできてしまうんです。私は絵本の勉強を基本的にしたことがなくて、無知で、「なんでこの作家さん知らないの?」と、周りからはひやひやされますけれど。

いしい

そういう絵本作家の方たちとも、つながりができたんですね。

野田

第一線で活躍されている絵本作家さんに、ありがたくも仲良くしていただいています。絵本作家さんが選書する絵本の棚をつくっていて、棚のポップを全部直筆で書いてもらっているんです。ポップはつまり、原画ですよね。

いしい
作家さんセレクトの絵本とポップ。ポップは原画でもあるというこの贅沢さ!

たとえば、どんな作家さんの絵本棚があるんですか?

野田

今は、えがしらみちこさんの棚です。新井洋行さんの発案で始めた絵本棚なんですが、今までだと、tupera tuperaさんや荒井良二さんなど多くの方にすごくお世話になりました。

いしい

作家さんたちが自分で棚をつくって、ポップも描けるとなると、気合が入るかもしれませんね。

野田

はい、みなさん楽しいとおっしゃってくださっています。作家さん自身が担当のコーナーを作るので、偏りがないとも言えますし、いい循環が生まれます。新しい出会いもあるし、出版社さんも著者さんも、みんないい感じになるかなあと思って。

いしい

この手作りポップ、たくさんの人に見てもらいたくなりますね。

野田
えがしらみちこさんセレクトの絵本とポップがならぶ棚。

そうなんです、うちだけで終わるのはもったいないんですよね。それで、知り合いの本屋さんを巡る棚キャラバンをしているんですよ。選書リストとポップを額装したものを、本屋さんに巡回させています。だけど、なんせ手弁当でやっているので、予算が少なくて。

いしい

棚キャラバンっていうのは面白そうです。

野田

出版社の立場を半分使ってできる取り組みなんです。なぜかといえば、例えば本屋の立場で言うとなかなか難しいんです。ポップも大切な原画なので、他のお店さんに回す時には全部額装します。そうすると、額装のお金がかかります。送料も高いんです。でもそれをやってでも、広めていきたいなと思うんですよ。

いしい

本屋としてのメリットはないけど、出版社としてのメリットがあるということですか?

野田

そうなんです。棚キャラバンを送ると、そこの本屋さんはニジノ絵本屋のコーナーを作ってくださってご紹介してくださいます。販促のひとつと考えれば、続ける意味はあるかなと思います。今、選書リストと手作りポップがかなりたくさん貯まってきたので、一緒にやってくださる本屋さんとニジノ絵本屋とでうまく運用していけないかと考えていますが、なかなか難しいです。

いしい

取り組みとしては非常に面白いですね。

野田

ありがとうございます。大きな話じゃなくて、大好きな書店員さんがいる、大好きな出版社の販売の方、編集の方がいる、そんな輪を広げたいですよね。どうしても、業界全体が苦しいみたいな話になりがちなので、みんなで業界全体を盛り上げられたら楽しいんじゃないかなと思います。軸には、会社を続けていくにはどうしたらいいかということがあるんですけれど。

いしい
このポップも、棚キャラバンで旅立ったのでしょうか。

定期的に行っているイベントなどはありますか?

野田

ニジノ絵本屋は、店舗事業と出版事業、イベント事業の3つで回している会社なんです。定期的に行っているのは、自主企画のイベントです。絵本作家で、遊び歌作家の杉川としひろさんと毎月1回、「あそび歌と絵本の時間※」という0歳から幼稚園に入るまでのお子さんとお母さんを対象にしたイベントを開いていて、大変好評です。

いしい

※「あそび歌と絵本の時間」は現在オンラインにて毎月1回開催中です。

イベントではほかにどんなことをするんですか?

野田

店内のイベントだと、赤ちゃん向けの『たいようの木』という絵本を歌い読んでいくイベントを月1回やっています。ほかに最近では、タラブックスという南インドの出版社で本を出している日本人作家のおぐまこうきさんが、空想スケッチ※というイベントをやっています。タティングレース※というレース編みのワークショップも、もう2年近くやっていますね。

いしい

※空想スケッチは現在オンラインにて毎月1回開催中です。
※店内で開催している「たいようの木」とタディングレースは新型コロナウイルス感染拡大防止のためお休み中です。

レース編みを、ニジノ絵本屋でやっているんですか?

野田

そうです、レース編みの手芸教室です。この場を使ってもらいたくて、お貸ししています。絵本とは関係なく、定期開催です。

いしい

イベントをいしいさんご自身がやりたいというより、やりたいという方に協力しているという感じでしょうか。

野田

何かやりたい人たちが、周りにとてもたくさんいるので、そういう人たちの「やりたい」を一緒にやるという感じですね。でもやっぱり、私自身に「この人とやりたい」という気持ちがあります。

いしい

なるほど、キーワードはやっぱり「人」なんですね。

野田

“覚悟”をもった人たちと息の合った仕事をする

CREDIT

クレジット

執筆
東京生まれ。ブルーベリーを育てる事と動物が好きなナイスガイ。世界ネコ歩きは毎週欠かさず見ている。プログラマーをしていたはずが、なぜか47にして営業に。
構成
丑年生まれの編集者。3人の子どもが全員学齢期となり子育てが格段にラクになってきたので、自分の人生を取り戻すべく、楽器演奏の趣味を復活させようと助走をつけている。最近「Official髭男dism」を熱烈に応援するという新たな趣味も加わった。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。