私たちは、絵本をつくる絵本屋です。ニジノ絵本屋#5

私たちならでは、私たちだからできることにこだわって。

この記事は約5分で読めます by 野田浩樹

ニジノ絵本屋さんは、絵本を売るだけでなく、作家さんと絵本を作っています。
国内から海外までいろいろな場所でイベントもしています。
インタビュー最終回では、いしいさんが考える本の将来について、お話をうかがいました。

いしいあや
絵本専門店「ニジノ絵本屋」代表。2011年に「ニジノ絵本屋」をオープン。2012年より出版事業をはじめる。絵本にまつわるLIVEパフォーマンスやワークショップなどのイベントを国内外で開催している。

前回のインタビューでは、絵本は表紙が大切とか、子供向けの絵本は年齢に応じたものをと考えすぎなくてよいなど、個性のあるお返事をたくさんいただいて、おもしろくお聞きしました。いしいさんのやりたいことが、はっきりしてるように感じます。

野田

私たちだからできることには、やっぱりこだわっていきたいとは思っています。今は、絵本の資格があったり、絵本や児童文学を大学で専攻できたりとか、勉強しようと思えばやり方は色々ありますが、結局そこには、よほど絵本が好きな人じゃないとたどり着けないですよね。自分が一般消費者の立場により近いから、そう思うのですけれど。

いしい

「絵本をよほど好きな人」以外へのアプローチですね。

野田

そうです。普通は、よほどじゃないと、コアな絵本まではたどり着けない。けれど、やっぱり絵本の仕事をしている以上、たくさんの人に絵本を届けたいんです。でも、絵本は子どもの物だって思っている人が多いんですよ。確かに子どもの物だけど、大人が楽しんでもいい。だとしたら、私達が「絵本が他人事」の人たちの入り口になりたい。そこに対してはこだわりがあります。

いしい

「絵本が他人事」の人たちの入り口、ですか。なるほど。

野田

その入り口を作る方法に対しては、色々と柔軟にやっています。絵本と何かをコラボレーションさせる試みは、たくさんしているんです。絵本とコーヒー、絵本とワイン、絵本と音楽、絵本と食とか。絵本と音楽のコラボレーションは、私たちは絵本ライブと呼んでいて、色んなミュージシャンの方と7年前からやっています。ほかにも、たとえばさきほど、なぜここでレース編みの教室? という話がありましたけれど、私はそれもいいと思っています。どこか絵本っぽいところがありますし。

いしい
絵本『ごはん山』は、ごはんが入ったごはん缶とセット。第一回インタビューに出てきた、店内の「おむすび見つかるかな?」クイズと関係があるのでしょうか?

絵本のお店が、サマーソニックに出られているとは驚きでした。

野田

絵本を体験できる場をつくっていきたくて続けている活動の中で、サマーソニックなどの、フェスのキッズ向けコンテンツとして呼んでもらうことが多くなってきました。仲間と絵本の読み聞かせのステージパフォーマンスをしています。音楽フェスで絵本をなんて、普通思いませんよね。そんな驚きの出会いをつくりたくて、お父さんとお母さんが、楽しい、かっこいいって思えるようなステージをやっています。ビールを飲みながらもOKです。

いしい

それは、子連れの大人にとってはうれしいですよ。

野田

そうなんですよ。「絵本が他人事」の人たちに「絵本、いけてるじゃん」と感じてもらい、ニジノ絵本屋で絵本に興味を持ってもらって、もっと絵本知りたいなって思ったら、さらに深く知れる絵本のコミュニティが全国各地にたくさんあると思います。そちらにも興味を持っていただけると嬉しいです。私たちは1回でもすそ野を広げていく活動ができたら、それが楽しいんです。

いしい

最後になりますが、303BOOKSでは「本の未来、未来の本」をコンセプトにしているのですが、ニジノ絵本屋さんが考える「本の未来、未来の本」を教えてください。

野田

本が好きな人は一定数いますよね。本が好きな人は、本屋巡りもするだろうし、本も買うだろうし、自分から情報を取りに行けます。だから、「本が他人事」の人をどこまで巻き込めるかに、未来がかかっていると思っています。本が嫌いな人に読書しろって言っても、それは多分お母さんが子どもに勉強しなさいって言うのと同じで、なかなか手に取ってもらえないんですよね。

いしい

おっしゃるとおりですね、勉強に例えるとわかりやすいです。

野田

だから、そうじゃないアプローチで、気づいたら本が楽しかったとか、気づいたら本の世界に足を突っ込んでたみたいな体験ができるようなことを、どんどん広げていきたいと考えています。まず、体験していただく。体験って共有できるから、家族で楽しめるんですよね。そういうのを、どんどん広げられたらと思っています。

いしい
楽しくすそ野を広げたい、と語るいしいさん。

そのためにイベントなどで、音楽とかお酒とか、ほかのことや物に馴染みがある方たちに絵本を知ってもらう、ということですね。

野田

そうなんです。絵本とコーヒーにした場合、絵本に興味がなくても、コーヒーに興味がある人だったら刺さるじゃないですか。今はやってないんですけれど、朝ごはんを食べながら絵本を読む、朝ごはんと絵本の会というイベントをずっとやってたんです。そういうイベントには、仕事に行く前の人が参加してくださっていたりしました。

いしい

へえ、そうなんですか。

野田

そうなんです。「絵本の会には行きにくいけど、これなら参加できそうと思って来ました」「今度子どもが生まれます」っていうお父さんが来たりしていました。だから、そんなふうにゆるーく色々やりたいなと思っています。がちがちの本の会だと、本が好きな人しか来なくなっちゃうので、そうじゃない人たちが気楽に来てもらえるようなことを、やっていきたいです。そこが絶対、絵本との出会いの場になるので。

いしい

そうですね、読んでもらえないと未来もなにもないですからね。

野田

そうなんですよ、だからまず手に取ってもらえる機会を増やしていきたいです。

いしい

そのために、ニジノ絵本屋さんも、そういうスペースとしてあり続ける、ということですね。

野田

そうですね。あり続ける、だけど待ってるだけじゃ広がらないから自分たちからも出ていきます。

いしい
長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

CREDIT

クレジット

執筆
東京生まれ。ブルーベリーを育てる事と動物が好きなナイスガイ。世界ネコ歩きは毎週欠かさず見ている。プログラマーをしていたはずが、なぜか47にして営業に。
    構成
    丑年生まれの編集者。3人の子どもが全員学齢期となり子育てが格段にラクになってきたので、自分の人生を取り戻すべく、楽器演奏の趣味を復活させようと助走をつけている。最近「Official髭男dism」を熱烈に応援するという新たな趣味も加わった。
      撮影
      千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。
      撮影
      某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。