私たちは、絵本をつくる絵本屋です。ニジノ絵本屋#1

予備知識ゼロ。1.5坪からのスタート

この記事は約5分で読めます by 野田浩樹

“私たちは絵本屋ですが、作家さんと絵本を作ったりします。
お店は東京にあるのですが、国内から海外までいろいろな場所でイベントをしています。
今日も絵本のおもしろさを少しでも届けられたらうれしいです。”


‥‥ニジノ絵本屋のウェブサイトには、こんな紹介文があります。
いったい、どんな絵本屋さんなのでしょうか?
代表のいしいあやさんにお話をうかがいました。

いしいあや
絵本専門店「ニジノ絵本屋」代表。2011年に「ニジノ絵本屋」をオープン。2012年より出版事業をはじめる。絵本にまつわるLIVEパフォーマンスやワークショップなどのイベントを国内外で開催している。
秘密の洞窟の入り口みたいな、お店の外観。東急東横線・都立大学駅から徒歩3分、商店街を抜け住宅地に入ったあたり、通りから奥まったビルの1階にありました。

お店は、いつからスタートしたのですか?

野田

今のこの場所では、今年の4月28日で4周年になります。それまでは、ここから歩いて4、5分のところにある雑居ビルの3階で、6年くらい営業していました。1.5坪の広さだったんですよ。今年で10年になります。

いしい

絵本だけで、10年間やっていらっしゃるのですか?

野田

絵本がある状態を軸に、そこからずらさず、10年ですね。屋号は2010年の12月にはついていたのですが、グランドオープンしたのは2011年1月で、翌年に出版も始めています。

いしい

2011年と言いますと、東日本大震災があった年ですね。

野田

そうです、ちょうど初めての原画展を店内でやっている最中に地震がきたんです。でも、幸いなことに、本が落ちることもなくて、被害はありませんでした。
狭いところだと、揺れの影響が少ないのかもしれません。とてもコンパクトなお店で、広さが1.5坪しかなかったので。

いしい
お店の棚。震災時もこのように絵本を壁に立てかけていたが、本は落ちなかったそう。

お店を始めたきっかけを教えてください。

野田

1.5坪のスペースで何かできないか、という話をいただいたのがきっかけです。絵本を選んだ理由は、隣が小児科で下の階が英会話幼児教室、上の階に学習塾があったりと、お子様がいらっしゃるビルだったことが大きいですね。

いしい

その場所に合わせて、絵本を選んだということですね。

野田

そうです。環境に合わせてどうしたらいいかなを考えて、絵本を選んだんですけど、じゃあ新しい本ってどうやって仕入れるんだろうってところから、お店をスタートさせたんです。

いしい

仕入れなどについては、特にご存じなかったのですか?

野田

そのとおりです、もう全然知らなくて。前職は、医療機関の会社の総務と人事の仕事だったのですが、そのつながりで、その空いてるスペース、医療フロアでなにかできないかなというのがきっかけだったんです。ですので、本屋のしくみはまるっきり、知りませんでした。

いしい
お店に飾られたたくさんの原画にかこまれて答えてくださるいしいさん。

絵本以外に、候補はなかったんですか?

野田

最初は、コーヒースタンドやジュースバーなどを考えてみましたが保健所の許可や水道がないことなどがネックになりまして。雑貨屋も候補にありましたが雑貨類は、委託販売とかじゃなくて買い切りなんです。結構な在庫量になるなと思って、計算してみたら、いやー無理、もうちょっと何かないかしら、と思って、絵本にしました。

いしい

リスクがあるとの判断でしょうか。それで、本だと取次※がいるのでリスクが少ない、ということだったのですか?

野田

※出版社と書店の間にいる流通業者。卸だけでなく、書店から出版社への本の返品も取り扱う。日本では通常、本は委託販売の形をとる。

いえ、取次という言葉すら知りませんでした。本をどうやって仕入れるんだろうって調べたら、本は神保町って出てきたんですよね。だから神保町に行ってみたんですが、見通しが立たなくて。たまたま、知り合いに絵本を作っている人がいたので、その人から直接仕入れました。そんな感じで、自費出版の本を数タイトル、扱っていました。

いしい

なるほど。直接取り引きから始まったというわけですね。

野田

「この絵本を売ってください」っていう持ち込みも多かったんです。その時に持ち込まれた方と、いまでも付き合いがあったりします。当時からのご縁で今があるっていうのは、感じています。

いしい
壁にこんなカードが。手作りの味です。

こちらにうかがった時、手作り感が素敵だなと感じたのですけれど、ご縁にめぐまれてのお仕事ということにあったのかも知れないですね。

野田

自分たちのつながりで仕事を広げていっているので、いわゆる本屋をやるから、取次に口座開設を、みたいなことはしていないんです。

いしい

取次の会社には、相談しなかったんですか?

野田

今でこそ、小規模な独立系の本屋さんに対する卸は広がってきていますけれど、10年前にはほとんどなかったんです。小規模書店向けのサポートをしてくれる会社を紹介していただいたんですが、その担当者の方に、1.5坪では在庫がほとんど置けないから、どんなにお金に余裕があって最初の契約金があったとしても、取引できないって言われました。すごく応援したいけど、難しいと。

いしい

その状況で、よく本屋さんを始めようとしましたね。

野田

絵本屋をやると決めた手前、とにかくやってみようという感じだったので困惑しながらも突っ走っていました。
あー、困ったな、って思いながらやっていました。

いしい

意外です。絵本に対する思いが強くて…とか、そういう理由を予想してました。

野田

そうなんです、みなさんそういう予想をされるんです。ずっと絵本屋さんやりたかった人みたいに思われるのですが、全然そうじゃないです。

いしい

#2 人と人のつながりで広がるお店

CREDIT

クレジット

執筆
東京生まれ。ブルーベリーを育てる事と動物が好きなナイスガイ。世界ネコ歩きは毎週欠かさず見ている。プログラマーをしていたはずが、なぜか47にして営業に。
    構成
    丑年生まれの編集者。3人の子どもが全員学齢期となり子育てが格段にラクになってきたので、自分の人生を取り戻すべく、楽器演奏の趣味を復活させようと助走をつけている。最近「Official髭男dism」を熱烈に応援するという新たな趣味も加わった。
      撮影
      千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。
      撮影
      某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。