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稲垣さんに初めてお会いしたのは、『まるでお店!なほめられ♡レシピ』(講談社)でご一緒したときでした。主婦層をターゲットにした雑誌『サンキュ!』(Beneese)の読者モデル「サンキュ! フレンド」を卒業して、フリーランスとしての道を歩み始めたというタイミング。当時、「人間にやれないことはない」と仰っていたことが忘れられません。あれから7年で今やテレビに引っ張りだこ。どうやってここまで辿り着いたのでしょうか。
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料理研究家、再現料理研究家、フルート奏者。『驚安の殿堂 ドン・キホーテ』と『シャトレーゼ(Châteraisé)』のマニアで、他にも 100 円ショップや『パシオス』などで購入したプチプラアイテムのレポート記事が人気を呼んでいる。『ウワサのお客さま』(フジテレビ)、『サタプラ』(毎日放送)、『23 時の密着テレビ レベチな人、見つけた』(テレビ東京)、『家事ヤロウ』(テレビ朝日)、『ヒルナンデス』(日本テレビ)など多くのテレビに出演する他、様々なメディア媒体で活躍している。
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7 年前レシピ本を作っていた頃、稲垣さんとはお互いの子どもの学年が同じだったこともあって、いろんなことを話しましたよね。あの時から熱量がすごかったですが、さらに活躍の場を広げていかれてすごいなと思いました。今日は稲垣さんのここまでの道のりを教えて頂きたいと思っています。
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あの時は38才の時だったかなあ……。
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娘さんはまだ保育園に行ってましたよね。徐々にお仕事が増えてきていた時期だったと記憶しています。
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フリーランスになって2年目の頃だったと思います。1年目はずっと種まきをしていて、長女を保育園に送って家に帰ってきたら営業の電話をしていましたね。
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今はコロナ禍だから違和感ないですが、当時は家で仕事をしている人って少なかったですよね。
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そうですね。あんまりそんな人いなかったですね。「いってらっしゃい!」と保育園の先生に言われるけど、「いや家に帰るけど……」という感じでしたね(笑)。
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稲垣さんを語る上で外せないのが、『サンキュ!』でトップブロガーをやっていたことですよね。そもそもなぜ『サンキュ!』だったんですか?
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私、節約がすっごく好きだったんです。子どもの時から家が貧乏だったので、節約せざるを得なかったから。
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貧乏っていう言葉は最近なかなか聞かないですが(笑)。貧乏だったら貧乏が嫌だから節約したくなくなりそうですが、そうじゃなかったんですね?
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貧乏だと節約しないと生きていけないじゃない?
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そうか〜、それが“楽しい”になるのがすごい。
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そうね、あと料理が好きだったことが大きいかもしれませんね。うちは弟が障がいを持っていて、母がすごく忙しかったから、家の手伝いをしないければならなかったんです。買い物に行ったり、料理を作ったりということは普通にしていました。小学校3年生でカレーとかシチューなんかは1人で作ってましたから。
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小学3年生で?
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そう。火も普通に使っていましたね。自分の娘に火なんて絶対触らせませんけど(笑)。昔のお風呂は沸かす時に種に火を付けないといけなかったんですが、それもやっていましたね。
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やばいですね。
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今考えると危ないよね。その頃から母が弟のリハビリで遠くの病院に行っていたので、その日は母たちが帰ってきたらすぐに入れるように、お水をためて沸かして混ぜて、シチュー作ってご飯を炊いて……。
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嫌だとは思いませんでしたか?
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全然思わなかったです。料理はうまく作れるようになりたかったから、いつも母が作っているを横から見たり、聞いたりしていました。
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当時から興味があったんですね。
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ありましたね。小学校3年生で初めて友達とケーキを作ったんです。でもうちにはオーブントースターしかなかった。けどトースターがあればカップケーキぐらいなら焼けるんですよ。ただ温度が高くてこげやすいから、あまり厚みのない銀のカップで作っていました。
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マドレーヌみたいなやつですか?
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そうそうマドレーヌみたいなやつ。あれにケーキのスポンジ生地を入れて作りました。そこでお菓子作りの楽しさを知って、ボロボロのオーブントースターでクッキーとか色々なお菓子を作りました。
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へぇ~! ボロボロのトースターが魔法のようですね。
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それからお菓子の道具にも興味を持ちはじめて、誕生日プレゼントと言えばハンドミキサーとか、料理やお菓子の本をお願いしていました。小学6年生の時はレンジ機能のない250度くらいまで温度設定ができる天板付きのオーブンを買ってもらったんですよ。1万2800円でした。
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値段まで覚えているんですね。
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このぐらいの値段なら買ってもらえるかなと思ったんです。当時はそうやって、トースターだけで作れるものを編み出したり、道具がなくてもできることをよく考えたりしていました。お金がなくても諦めなかったですね。家がボロくても、せめてキレイにしようと思って、めっちゃ掃除してました。
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すごい!
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今の自分なら「DIY」を思いつくけど、小学生で知識も何もないから、とりあえず広くキレイに見えるように片付けたり掃除したり。だから今やっている再現レシピをはじめとした“工夫をする”ことは、あのときお金があったら身に付いていなかったと思うし、今の私はないと思いますね。
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禍転じて福となる? 諦めない姿勢がすばらしい。そこで節約が好きになるところもポジティブですよね。
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父の給与明細も見せてもらっていたから家の経済状況もよく分かっていたんですよ。限られたお金を、どうやったら最大限に生かせるのか考えたら節約だったんでしょうね。だから土日に朝市に行ったり、近所のスーパーに行ったりして、ちょっとでも安く買うことに喜びを感じていました。
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もう主婦ですね。
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主婦ですね。高校生くらいには底値帳作ってたし、「ここのスーパーは何曜日にこれが安い」なんかも把握してました。だから楽しみはチラシを見ること(笑)。
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アハハ。
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高校生になると、クラスメイトたちに「飛鳥に聞いたら安いところ教えてくれる」って思われていて、「どっかの新商品どっかで出てる?」とよく聞かれていましたね。食べることもすごく好きだったので、なんとか安く手に入れる方法を探していました。
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情報を集める素地がここで培われていますね。
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そうですね。「情報集めがすごくうまい」って小学校6年生の時の寄せ書きに書かれていたことがあります(笑)。将来マスコミ関係で働くといいんじゃないかって。いろんな人と喋るのが平気だったし、いろんな人から話を聞き出すことが得意でした。
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今につながる話ですね。
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「ジャスコにチェックのバーバリー風のマフラーが先着1500円だから絶対買わな!」ていう情報とかね。
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その当時からご飯だけじゃなくてオシャレも興味があったんですね。
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興味ありましたね。
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安くてもおしゃれする方法を当時から…今とおんなじ? もしかして似てる?
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ほんとですね。今も全然お金かけないから。
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さっきお会いした時に、すてきな服を着てたので「すてきですね」と言ったら、「これ6900円なんやで。高いやろ?」って返されましたけど、たぶんそこまで高くないですよ(笑)。普通テレビに出てる方たちってもっと高い服を着てると思うんですけど。
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いやいや、パシオスでいいパシオスで。
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高いものが欲しいとはあまり思わないですか?
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全く思わないです。今は昔に比べていっぱい安くてオシャレなものがあるから。
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オシャレも工夫ですね……。そういえば大学時代に結構な額を貯金した話を前に聞きました。
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そう。大学時代は1ヵ月に1万1000円の下宿に住んで、仕送りは3万円でした。奨学金を4万4000円もらっていたので、さらにアルバイト代を1年間で積み立てして60万貯めました。
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計算してみるとどうやって暮らしていたんだろうと思ってしまいます。しかも学生が60万円って大金ですよ。よく貯められましたよね。
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そのお金で母をアメリカに連れて行きました。
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すごーい! アメリカのどこですか?
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ロサンゼルスです。一緒に「ユニバーサルスタジオ」とか、「チャイニーズシアター」なんかに行きましたね。
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めちゃくちゃ親孝行じゃないですか……。自分の境遇をプラスに変えていくマインドがすごいですよね。普通ならひねくれてそうです。今こうして自分の得意なことや、やりたいことで成功しているのは、そういうところが関係しているんでしょうか。
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そうかな。「こうなりたい」って目標が決まっていれば逆算していけばいいと思うんです。ここに行くために何をすればいいか分かれば、それに向かって努力するだけだから。
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