料理研究家・稲垣飛鳥さんに聞く夢をかなえる方法論

努力は裏切らない

この記事は約11分で読めます by 宗我部香

稲垣さんに初めてお会いしたのは、「まるでお店!なほめられ♡レシピ」(講談社)でご一緒したときでした。主婦層をターゲットにした雑誌「サンキュ!」(Beneese)の読者モデル「サンキュ! フレンド」を卒業して、フリーランスとしての道を歩み始めたというタイミング。当時、「人間にやれないことはない」と仰っていたことが忘れられません。あれから7年で今やテレビに引っ張りだこ。どうやってここまで辿り着いたのでしょうか。

稲垣 飛鳥(いながき あすか)
料理研究家、再現料理研究家、フルート奏者。『驚安の殿堂 ドン・キホーテ』と『シャトレーゼ(Châteraisé)』のマニアで、他にも 100 円ショップや『パシオス』などで購入したプチプラアイテムのレポート記事が人気を呼んでいる。『ウワサのお客さま』(フジテレビ)、『サタプラ』(毎日放送)、『23 時の密着テレビ レベチな人、見つけた』(テレビ東京)、『家事ヤロウ』(テレビ朝日)、『ヒルナンデス』(日本テレビ)など多くのテレビに出演する他、様々なメディア媒体で活躍している。
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前回、目標があれば逆算して考えたらいいという話がありました。言葉で言うのは簡単ですが、それを実行してさらに続けることは難しいことです。稲垣さんは目標のために、日々どのような努力をしているのでしょうか。

例えばゴールに向けてどんなことをするのでしょうか。

宗我部

「サンキュ!」の読者モデルになりたいと思って応募した例が分かりやすいかもしれません。丁度結婚した当時に「サンキュ!」を初めて買って……。

稲垣

私も「サンキュ!」好きだったなー。節約大好きだから。

宗我部

あの時代すごい流行ってたよね。

稲垣

流行ってたし「サンキュ!」買って節約した気になってましたね。

宗我部

「サンキュ!」を読んだら、節約のことだけかと思っていたら、育児、家事、ファッションなどいろんなことが載っていて「なんて素晴らしい雑誌や!」と思いました。そこに出てる読者モデルさんは子どもがいて、一緒に出演もしていたから、「子どもができたら絶対これになろう」って既に思ってました。

稲垣

おー! 子どもが生まれる前から狙いを定めていたんですか。

宗我部

「サンキュ!フレンド」の募集が5月発売の号で始まるっていうのもインプットしてました。応募総数が何千人とかでなれるのが5~6人です。

稲垣

そこをどう突破したのか気になります。稲垣さんはかわいいけど、かわいい子って多分いっぱい応募してきてるはずですよね。

宗我部

そう。私は自己PRで自分は喋れると思っていたから、とりあえず書類が通ったら受かるって思い込んでました。「私に絶対会いたくなるような書類を作ろう」と思って、5月の募集に向けて2月ぐらいからもう準備し始めてましたね。

稲垣

出ました。ここが違うところですよ。

宗我部

写真を2枚用意するって募集要項に書いてたけど、2枚どころかめっちゃ入れましたね。しかも裏に「これはこういう写真です、これはこういう写真です」って書き込みました。

稲垣

え、写真を2枚?

宗我部

本当はバストアップと全身の写真を2枚という指定なんです。もちろんそれは入れて、それ以外にも「私はこういうことが得意です」と、料理の写真やラッピングの写真を入れて、工夫したポイントを書いて、確か10数枚ぐらい入れました。自己PRは細かく書いて、とにかく私に絶対会いたくなるような内容を心がけました。

稲垣

すごいー!

宗我部

そしたら「2次面接来てください」ってなって。でもそれはもう当たり前だと思ってました。それで絶対落ちるわけがないと思って面接に行ったら私みたいな人がいっぱいいた(笑)。

稲垣

みんな自信満々で来てる感じですか?

宗我部

そう! みんな自信満々で私よりキレイな人ばっかり。元モデルとか……。

稲垣

現実は厳しいですね。

宗我部

地味そうな人なんていなかった。しかもグループ面接で1番だったから、全部私から答えないといけないんですよ。

稲垣

一番って結構不利じゃないです?

宗我部

そうそう! 一番最初は自己紹介だったから、普通にさらっと流してみたら、次の人からみんな喋りが上手で……。私1番だったから「あーしまった!それ言えばよかった」みたいなことを後の人が言っていたり。あんまりガツガツいかずに最初に答えたらもうそれで終わりで、完全に落ちたと思いました。

稲垣

そうなんですか。

宗我部

みんな喋りが上手いし特技も持ってるし、かわいいしキレイだし……。落ちたなって思ってたら、2~3週間後に受かったって電話がかかってきた時はびっくりしましたね。

稲垣

今思えば他の人と何が違ったと思います? 

宗我部

その募集で選ばれたのが結局5人で、ジャンルで分かれてたんですよ。

稲垣

料理とか?

宗我部

私料理だった。ふたをあけてみたら、派手な感じの人は誰1人受かってなかったです。

稲垣

へぇ~! じゃあそこは求めてなかったってこと…かな? より目線が主婦に近い人が良かったんでしょうね。

宗我部

そうですね、割と主婦業をきっちりこなしてるような人が多かった気がします。

稲垣

なるほど、そこがポイントだったのですね。

宗我部

面接にきてたキレイな人たちはファッションが得意とかだったんですけど、しきりに「もう一度輝きたい」って言ってたのが印象的でした。

稲垣

確かに一回輝いたことがあって、もう一度輝きたい人を出しても主婦層には受けそうもないですね。ただ、やりたいと思ってそこに行くための準備が人と全然違う。自分の適性を明確に見抜いて適正な媒体選んでいるのも勝因ですよね。
その後は「サンキュ!」の読者モデルとして活躍して、独立をされました。さっきも保育園に娘さんを預けて営業の電話をかけていた話がありましたけど。

宗我部

とにかくフリーになってからは仕事がないからいろんなところに電話で営業しましたね。

稲垣

「サンキュ!」をやめて、自分で仕事を獲得していくために計画を立てたりしてました?

宗我部

そんなに計画はしてはなかったかもしれません。「サンキュ!」ブログでは100万アクセスを突破して結果も出していたから。その実績もあったので、個人でアメブロをやろうと思いました。初めて「ヒルナンデス!」に出た後、「本を出しませんか?」と外部からも声がかかるようになったんです。

稲垣

それは独立のきっかけに?

宗我部

めちゃめちゃなりました。当時、フルートのライブでお客さんに「飛鳥さんこないだ100万アクセスあったから、めっちゃ儲かったでしょ」って言われたんですよ。「だってブログのアクセス100万だったら普通に1アクセス1円って考えたら100万円入りますよね?」て聞いて、初めてブログでお金が入ることを知ったんですよ。それも個人でブログやろうと思ったきっかけです。 

稲垣

なるほど。「サンキュ!」ブログがアクセス数稼いでも飛鳥さんの懐には入ってこないですから。

宗我部

でもやっぱり怖かった。アメブロでやっても「稲垣飛鳥って誰?」ってなるから。ベネッセの「サンキュ!」の中で稲垣飛鳥なら分かるけど、それもごく一部。だから独立して仕事がなかったらどうしようという不安はありました。

稲垣

ちなみに営業の電話ってどこにするんですか?

宗我部

えーっとね、まず市役所にしました。地元の高松市役所。

稲垣

え? 市役所?

宗我部

地元からはフルートでちょいちょい仕事をもらってたんです。地元だと仕事もしやすいかなと思って、香川の新聞社とか雑誌社とか広報誌に片っ端から電話して、再現レシピっていう武器があったから、「連載させて頂けないですか?」って電話してました。

稲垣

その当時は再現レシピでの提案だったんですね。

宗我部

そう、それしかなかったから。再現レシピで「ヒルナンデス!」に出たのをきっかけに「ZIP!」とか色んな媒体に出してもらって、アメブロも立ち上げたら広告案件が来たり。その頃に電機メーカーの記事を初めて書いてギャラをもらいました。

稲垣

すごい!

宗我部

そしたら、全然ギャラが違っててビックリしました……。

稲垣

個人で受けた方が高かったというわけですね。

宗我部

そう。やっぱり主婦代表という肩書きと、フリーとして仕事でやるのでは金額が全然違うと知ることができたのは大きかったですね。

稲垣

でもやっぱり1人でやるってできない人の方が多いから。

宗我部

うん。やっぱ怖いよね。

稲垣

そこが、もしかしたら大きな違いなのかもしれません。

宗我部

あと、だめだったらすぐ次に行くっていう切り替えもあるかもしれません。例えば「サンキュ!」が仮に落ちても、「ESSE」とか「Mart」にチャレンジしていたと思います。

稲垣

落ち込んだりはしないですか? 何か失敗しましたとなって、私にはもう能力がないんだみたいな感じにはならない?

宗我部

ならないです。「私の良いところを、よう見つけられへんかってんな」という感じですね。

稲垣

はは。そのマインドうらやましいです。

宗我部

縁がなかったって思う。

稲垣

あーなるほど。

宗我部

昔色々なオーディションを受けてたけど、ボロボロやったのに受かることもあったんですよ。「サンキュ!」は受かると思ってなくて受かったし。
(※割愛しましたが大学卒業後に稲垣さんはしばらく関西で芸能活動をしていました)

稲垣

へぇ~!

宗我部

絶対だめだと思ったのに受かったりするのは、やっぱり縁かなと。もうバッチリでできたって思って落ちる時もあるから。

稲垣

そこの経験があるから、別に落とされても自分が悪いわけじゃないっていうのを知ってたわけですね。

宗我部

全く気にならないし、「次!次!」みたいな。

稲垣

なるほど、切り替えが早いんですね。でもそれなりに準備してるわけじゃないですか?

宗我部

そうですね、ただ、自分が正しいと思ってした発言で仕事がこなくなった、という経験はあります。でも自分ができることをやるしかないから、当時は「今自分ができること=ブログを一生懸命書く」だったから、それを続けていったことで最後は評価してもらえました。

稲垣

続けるっていうのはね、すごく大事なことですよね。

宗我部

最近だとインスタが一番分かりやすいかもしれません。私あんまりインスタのこと知らなかったんです。気が向いたら投稿するぐらいで……。友達で結構インスタやってる子に「こんなんじゃダメ」って言われて……。その時フォロワーが4000人ぐらいだった。

稲垣

まぁそれでも多いですけど。

宗我部

それからめっちゃYouTubeで研究しました。

稲垣

インスタグラムを増やす方法みたいな?

宗我部

そう! 冬休み中にめっちゃ勉強したんですよ。

稲垣

インスタにも戦略があるってことなんですか。

宗我部

やっぱりテーマを絞るのがすごく大事で、結局インスタグラムって芸能人なら「この人が好きだから見る」って感じですけど、主婦が見るインスタグラムって、誰がやってても相手にとっては関係ないんです。欲しいのは「情報」で、私の個人的な趣味ではない。私なら「Châteraisé」や「ドンキホーテ」といった、節約ネタをアップしているけれど、私がどうとかじゃなくて、“その商品がいかに素晴らしいか”という投稿が大事なんです。あと文章をみんな読まなくなってきてるから、写真を加工します。

稲垣

あーみんな文章読まないのか~。

宗我部

そう、結構ね。だって、文章にちゃんと書いてあっても質問が来ますから。文章を読まずに写真だけ見てるから。

稲垣

だから写真に文字を入れてるんですか?

宗我部
稲垣飛鳥さんのInstagramにポストされた「Châteraisé」の記事

写真に加工をしますね。だからすーごく時間がかかるんです。文字を入れたりそれを丸くしたり。

稲垣

超時間かかりますよ。もう編集者じゃないですか。

宗我部

笑。めっちゃかかるよ写真を撮って文字を入れて、文章書いて……。ハッシュタグも入れますからね。

稲垣

これスマホでポチポチやるんですか? 

宗我部

ポチポチやってる。だからもう今は電車で移動する時間が編集時間ですよね。

稲垣

なるほどね、例えばこの「ホームランバー」のインスタの記事は、そこの企業から書いてって言われたわけじゃないですよね。

宗我部

普通に買い物行って見つけてこれバズりそうと思って書きました。何かの投稿で「1万4700いいね!」もらったことありますね。

稲垣

これっていいねがついてもお金にならないですよね。

宗我部

1円も入ってこないです。

稲垣

それなのにしっかり書いててすごい! 今フォロワーって何人ですか?

宗我部

2万1000人。(※取材時)

稲垣

1年で1万7000人フォロワーが増えたってことですか?

宗我部

まずは5000人を目標にしたんですね。そしたら1ヶ月経たないうちに5000人になりました。

稲垣

すごい。

宗我部

インスタグラムってAIが管理してるみたいで、Châteraiséのことを書いたら興味ある人に表示されるみたい。だから「発見」ってとこに出てきたりするみたいですよ。そこで新規のお客さんが来てくれたり、あとはリールをやりました。

稲垣

どうやってやるのか分かんないんです。

宗我部

それも一からまた勉強して、編集の仕方を全部YouTubeで勉強して。それで4月の終わりに1万を超えました。

稲垣

その努力は見習いたいですね。そういえば稲垣さんの「Châteraisé」の記事は興味深いです。

宗我部

3年前ぐらいに「ヨムーノ」の編集長に、「飛鳥ちゃんChâteraiséとかどうかな?」って言われたんですよ。その頃は「Châteraisé」があまり知られてなかったですが、たまたま近所にお店もあって、記事を書き始めたんです。そこから「Châteraisé」と言えば稲垣飛鳥のようになりました。誰も書いてなかったから、「Châteraisé」関係で雑誌やテレビのオファーが来るようになって……。

稲垣

努力は裏切らない

CREDIT

クレジット

執筆・編集
最近は303BOOKSの動画を担当していることが多い一応編集者。私立中学に通う長女に作るお弁当をインスタにアップすることを日課としている。中学2年生と小学5年生の女の子の母。故郷・高知を世界の中心と思っている。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。世間のブームにのりたい48歳。パンダが好き。