獣神サンダー・ライガー 過去・今・そして未来のプロレスへ

プロレスは今、「かっこいい」

この記事は約8分で読めます by 三橋太央

「プロレス」に対するイメージは人それぞれ。もしかしたら、プロレスファンではない人は「乱暴」「恐い」「男くさい」・・・そんな風に思うかもしれない。しかし、現代の新日本プロレスは、そんなイメージをぶっこわすほど、ただただ「すごい」「かっこいい」があふれています。男性も女性もファミリーも、幅広い人気を獲得し、観客数が増加し続けている新日本プロレス。そのひみつを、新日本プロレスに所属する、ジュニアヘビー級のレジェンドである獣神サンダー・ライガー選手に聞きました。

獣神サンダー・ライガー選手プロフィール用画像
獣神サンダー・ライガー
1989年4月24日、東京ドームで獣神ライガーとしてデビュー。同年5月に第9代IWGP Jr.ヘビー級王座に輝き、その後も数々のタイトルを手にした。2020年1月4日、5日『WRESTLE KINGDOM 14 in 東京ドーム』で引退記念試合が行われる。身長170cm、体重95kg。得意技は「ライガーボム」「ロメロ・スペシャル」「掌底」。
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プロレスのイメージを変えたひとりの漢「棚橋弘至」

はじめまして! 今日はよろしくお願いします。あの、インタビューに際して、はじめに言っておきたいことがあるんですが・・・

ライガー

はじめまして! こちらこそ、よろしくお願いします。
(言っておきたいことって、いったいなんだろう・・・)

三橋

ライガーには「NGの質問」とかないからっ! どんな質問もOK!
だから今日はもうな〜んでも、聞いてください。

ライガー

(よかった)ありがとうございます! では早速、僕はじつは、2018年の夏頃から新日本プロレスを観戦しはじめた、いわゆる新参ファンです。こうした新規のファンが増えている要因はなんでしょうか。

三橋

それを語るには、まず今と昔のレスラーの違いから話そうかな。僕はよく「昔の選手はプロレスラー、今の選手はアスリート」と言うんです。例えば、昔のレスラーって身長が高い、とにかく飯食う、体を分厚くする・・・それで正面からぶつかり合う感じの試合が多い。

ライガー

「プロレスラー」と聞くと、昔ながらのイメージで「ごつごつした、いかつい人たち」と思う人も多いかもしれません。

三橋

そう、体でぶつかりあって勝負する世界。そこに猪木さんやドリー・ファンク・ジュニアさんとか、技術でも勝負できるレスラーが現れて、時代はどんどん変わっていきました。

ライガー

新日本プロレスという団体を立ち上げた「燃える闘魂」アントニオ猪木さんですね。

三橋

※日本には数多くのプロレス団体がある。昭和から続いている代表的なプロレス団体には、ジャイアント馬場が立ち上げた「全日本プロレス」や、アントニオ猪木が立ち上げた「新日本プロレス」などがある。

猪木さんは「ストロング・スタイル」という「戦うことはどういうことだ? 怒りだよ。怒りを持たなきゃ戦えないだろう」ということを大切にしていました。猪木さんは眼力(がんりき)というか、眼力(めぢから)というか・・・すごいものがあったし。とにかく「戦う」「怒り」それを全身で表現していた。

ライガー

まさに「闘魂」そのものですね・・・。

三橋

そして今・・・プロレスの世界を大きく変えたのは、僕は棚橋弘至選手だと思うんですね。

ライガー

僕が新日本プロレスを観ようと思ったきっかけのひとつは、棚橋選手でした。

三橋
右手を掲げる棚橋弘至選手
※棚橋弘至は「100年に一人の逸材」と呼ばれる、新日本プロレス所属の人気プロレスラー。1976年生まれ。僕は、裸エプロンを着た棚橋選手を見かけて「どんなやり方でもプロレスを広める!」というパワーを感じて、そういう人がどんな試合をするのか、観たくなりました。僕の持っていた古いプロレスラー像がいい意味でぶっこわれたのです。(撮影:三橋)

棚橋選手は試合が終わった後に「愛してま〜す」って言うでしょ? あれ正直、僕は嫌だったんです。愛してますって何? 何だそれ? 試合と全然関係ないやん! って。僕の中で違和感もあったしね。

ライガー

今ではそれを言わないでリングから帰ろうとしたら、棚橋コールが起こりますよね。「忘れてるよー!」って。

三橋

そう。それを言わないと、1日の興行が締まらなくなった。ファンのみなさんも、棚橋選手の「愛してま〜す」を望んでいるんですよ。それは、彼のパワーだよね。よくそこまでもっていったなと。昔から新日本プロレスを観てくれている人とか、昔の関係者とかレスラーは「あんなこと言って・・・」とか否定的に言うこともありました。

ライガー

ライガーさんも「はじめは嫌だった」とおっしゃっていましたが、そういう声もあったんですね。

三橋

最初はブーイングさえ起こっていたんですよ。でも、あの一貫した意志の強さというか、プロレス界を変える、やり抜く、貫く、その気の強さ。それにみんなが惹かれたんじゃないですか。変化を嫌がる雰囲気があったり、一部のファンの人から反感を買ったりしても、それでも自分を信じて、ファンサービスを貫き通すことができた。それは本当にかっこいい生き様だなと思います。

ライガー

実際にファンにも支持されて、観に来てくれているお客さんが増えていますしね。

三橋

おもしろくなきゃ、お客さんは二度と来ないでしょ。でも、おもしろかったら「また来るわー」って来てくれる。で、口コミでも広まって、どんどん増えていく。

ライガー

そういう下地をつくったのは棚橋選手なんですね。

三橋

新日本プロレスは低迷期があって、団体が消え去っていたかもしれない。それをここまで持ってこられたのは、もちろん会社やレスラーみんなの努力もあります。でも、棚橋選手が新日本プロレスの「闘魂」という根底にある精神を残しつつ、「その上に流れているもの」を変えたから、今があるのかなと思います。

ライガー

昔と変わったというと、今は女性のプロレスファンもとても多いですよね。

三橋

昔は女の子って会場にいても、ほんの一握りというか。いる? 女の子、この中で。っていうぐらいだったんですけどね。
今の後輩たちは、みんな体もバリバリだしね。ぶっちゃけ後楽園ホールなんて、6: 4とか、5: 5くらいで女性:男性って感じです。

ライガー

家族連れとか、中学生くらいの子どもだけで観戦してる姿なんかも見かけますね。

三橋

中学高校くらいの子は、上村選手とか辻選手とか、ヤングライオンと呼ばれる若くて自分の年齢に近い選手に「いけー!」って言ってますね。あとは、棚橋選手は体バリバリだし、飯伏選手とかも、女性ファンがキャッキャ言っていますよ。

ライガー
ポストに登る飯伏幸太選手
※飯伏幸太は「ゴールデン☆スター」と呼ばれる、新日本プロレス所属の人気プロレスラー。1982年生まれ。彫刻のように均整の取れた肉体美、甘いマスク、躍動感のある動きで、多くのファンを魅了している。(撮影:三橋)

女性ファンが本当に多いし、熱心だというのは感じますね!
私の妻もプロレスにはまっています。

三橋

女性ファンというのは1回観に来ておもしろかったら、口コミで広めたりとか、友だちを連れて来たりとかもしてくださるじゃないですか。プロレス観たけど、おもしろかったよーとか。あと会場に1人で来て、ファン同士で知り合って、連絡を取り合って、プロレスを観に来たりもしているんでしょうね。

ライガー

プロレスを楽しむために、知識はいらない

ライガー選手は解説に呼ばれたとき、よく「すげー! かっけー!」と叫んでいますよね。
あらためて、プロレスラーってどういうところがかっこいいのでしょうか。

三橋

さっき話に出た棚橋選手なんかは観ていて色気も感じるし。100年に一人の逸材と言うだけあるなと思う。体もすごいし、かっけーし、色気があるし。

ライガー

棚橋選手大好きですね!
そのほかにも、かっこいいと思う選手はいますか?

三橋

カズチカがかっこいいよね。

ライガー

現IWGPチャンピオンのオカダ・カズチカ選手ですね。
確かにオカダ選手の入場はテンション上がります。

三橋
両手を広げるオカダカズチカ選手
※オカダ・カズチカは「レインメーカー」と呼ばれる、新日本プロレス所属の人気プロレスラー。1987年生まれ。身長191cmの恵まれた体格と、抜群の身体能力から繰り出されるドロップキックが有名。24歳の若さで新日本プロレスのトップ選手の証である「IWGPヘビー級王座」に輝いた。前述の飯伏幸太と、2020年1月4日『WRESTLE KINGDOM 14 in 東京ドーム』にて「IWGPヘビー級王座」をかけて争う。(撮影:三橋)

棚橋選手はかっこいいんだけど、衣装の羽がよく落ちてるのよ(笑) そっちに目がいっちゃうんですよ。いつか羽なくなるんじゃね? みたいな。
カズチカ選手はきらびやかで雰囲気あってさ、彼も色気あるよねー!

ライガー
衣装を着る棚橋康弘至選手
※棚橋選手の入場コスチューム姿。確かに、この衣装の羽(左肩)が、よく落ちています。(撮影:三橋)

そうですね! 2019年の1.4東京ドームで観戦したときに、リングまですごく遠かったんですけど、それでもオカダ選手の入場はすごくかっこいいなって、印象に残ってます。

三橋

いいよね! キラキラ感があってねー。いや~、これじゃファンの座談会だね(笑)

ライガー

今日はほとんどそういう、ちょっと居酒屋ぐらいのテンションで(笑)

三橋

ね! そのノリでいこうか! オッケーオッケー(笑)

ライガー

ライガーさんはそういう純粋な目線でプロレスを楽しんでいるんですね。

三橋

体が全然違うのに真正面からぶつかっていく選手、棚橋選手みたいな生き様を感じる選手、みんなかっこいいよね。感じたままなんですよ。かっこいいとか、すげーとかって、どうして? って言われると、1番簡単な答えは「かっこいいから」「すげーから」そのままですよ(笑)

ライガー

見たまま、すごいぞ、ということですね。

三橋

そう! だから僕の「解説」って言っていただいて、すごくうれしかったんですよ。
解説じゃないからね。感想だから!

ライガー

(笑) でも、感想だからこそ、1番分かりやすく伝わってきますね。

三橋

僕も中学校から、ずっとプロレスが好きで観ていて。今でもファンだから。
だって考えてごらん? 1番いい席、1番真ん前の席でさ、プロレスが観られてるのよ。

ライガー

解説席は確かに、もっともいい観戦席でもありますね。

三橋

そうなのよ。それで、ギャラまでいただいてさ、解説するからって。
お金もらってプロレスを観て、わーわー騒げるんだよ。最高だよね! 本当に。

ライガー

最高ですね! まずは難しいことを考えないでいい、プロレスは本当に見たままを楽しめばいい、ということですね。

三橋

そういうことです!

ライガー

次は「かっけー」「すげー」という流れで、プロレスの技についてとか、ライガーさんの個人的趣味とか、そういうところをぜひお訊きしたいなと思います!

三橋

ほいな!

ライガー
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クレジット

執筆・編集
303BOOKS所属、本の編集者。新日本プロレス、アメフト、プロ野球、ツール・ド・フランス、劇団唐組…これらを見ていると1年が終わります。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。