夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―

日本語を愛する学生 ケリー・オカンポ(4話)

この記事は約6分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

コロンビアで暮らす元303社員、ユースケ“丹波”ササジマが現地に暮らす市井の人々にインタビューしていく連載企画。今回はケリーちゃんさんのインタビュー最終話。初めて日本にいって実際に日本文化に触れた感想や将来の夢などを語っていただきました。

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夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―

ユースケは何しにコロンビアに?

ゆーすけたんばささじま
ユースケ“丹波”ササジマ

株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。

夢だった日本への旅

日本への旅行はどうでしたか?

笹島

最高でした! 夢でしたからね。

ケリー

大阪に行ったんだよね?

笹島

そうですね。前にも言ったように弁論大会の優勝者が参加できる研修旅行で訪日したんですけど、各国の日本語弁論大会の優勝者と一緒に国際交流基金の関西国際センターっていうところに2週間ほど滞在しました。1日だけ「ホームビジット」という日があって、その日は日本のホストファミリーの家に泊まらせてもらいましたね。

ケリー

なるほど、ほかの国からもスピーチコンテスト優勝者が来てたんだ。ずっと大阪にいたの?

笹島

関西国際センターで日本文化について勉強したり大阪を散策したりしたんですが、自由行動できる日が何日かあったので、京都、広島、宮島、名古屋にも行きました!

ケリー

いろいろ周ったんだ。関西国際センターでの勉強ってどんなことをしたの?

笹島

大阪について学んだり関西弁について勉強したり、あとは文化体験っていう授業があって浴衣を着たりしました。

ケリー

大阪の印象はどうだった?

笹島

大阪の人は気さくに話しかけてくださる方が多くて、パイサの人と似てるなって思いました。日本にいるのに自分のふるさとを感じましたね(笑)。

ケリー

たしかに大阪の人は比較的オープンで、パイサの人と似てるよね。日本のサービスはどうだった? コロンビアとちょっと違うよね。

笹島

すごいよかったです! レストランとかでも座ったらすぐに対応してくれるし、濡れてるおしぼり出してくれるし、基本的に笑顔で接客してくれるし。日本文化のそういう部分もすごい気に入りました。

ケリー

日本の接客は基本的に丁寧だね。僕はコロンビアの良くも悪くも素直な接客も好きだよ。こっちはスマホいじりながらめんどくさそうに接客してる人をわりと見かけるけど、その自由な感じがいいよね(笑)。もちろん、丁寧に接客してくれる人もたくさんいるけど。

笹島

日本の接客で不思議だなと思ったのが、店員さんが声を変えることですね。「いらっしゃいませぇ~~」とか「ごらんくださいませぇ~~」とかって声を変えていうじゃないですか。私にとってはすごい不思議ですごい面白かったです(笑)。

ケリー

あれは日本独特の文化なのかなたぶん。店とか業種とかでそれぞれあるんだよね、接客の「型」が。食べ物はどうだった?

笹島

めちゃくちゃおいしかったです! 大阪の食べ物に限らずですけど、食べたもの全部美味しかったです。 納豆もすごい気に入りましたよ! 豆腐は苦手でしたけど・・・。

ケリー

納豆は食べれるのに豆腐はダメって不思議だな・・・。日本で食べたもので一番好きなものってなに?

笹島

ホストファミリーとかメデジンで知り合った日本人の家でごちそうになった家庭料理です! いろいろ食べさせてもらったけど、ほんとに美味しかったです。

ケリー

愛情たっぷりの家庭料理に勝るものはないね! とにかく日本滞在はかなり楽しめたようで、嬉しいです。

笹島

空港で入国スタンプを押されたときは「とうとう日本に来た!」ってすごいテンションがあがりました。反対に帰国するときに出国スタンプを押されたときは「まだ帰りたくないのに…」って泣きそうになってました(笑)。

ケリー
右手を掲げるケリーさん
日本で本場のラーメンを食べて以来メデジンのラーメンは食べられなくなったんだとか。

日本とコロンビアの架け橋を目指して

今は英語とスペイン語、日本語を勉強してるけど、将来は何をしたいとかって決めてる?

笹島

そうですね。正直英語は今の時代には不可欠だから勉強してるって感じで、本当に好きなのはスペイン語と日本語なんですけど、その両方を教える先生になりたいですね。

ケリー

なるほど、スペイン語を日本人に、日本語をスペイン語話者に教える先生ってことか。それは、大学とかそういう場所で働くっていうイメージなの?

笹島

はい、大学とか専門学校とか、日本語センターとかで働きたいなって。あとは大使館職員になるのも興味ありますね。

ケリー

大使館か、それはコロンビアにある日本大使館? それとも日本にあるコロンビア大使館?

笹島

まあ、どっちでもいいんですけど、日本にあるコロンビア大使館ですかね。

ケリー

やっぱり日本で働きたい?

笹島

もちろんです! ただ、日本では家族と過ごす時間もないくらいたくさん働くらしいので、そうなった少し悲しいですね・・・。しょうがないですけど。

ケリー

大使館での労働時間はそんなに長くないと思うけど、そういう職場はあるね。そこは日本の良くないところだよね。やっぱり仕事は日本と関連する仕事をしたいって感じなのかな。

笹島

教師でも大使館職員でも形はどうあれ、日本とコロンビアの架け橋になりたいと思っています。

ケリー

なるほど。それほど日本に思い入れがあるんだね。

笹島

そうですね。起きてから寝るまでずっと日本のことを考えています(笑)。

ケリー

おはようからおやすみまで日本を見つめてくれてるんだ(笑)。でも、それはなにか特別な理由があるの? 単純に日本文化が好きってだけではそうならないと思うんだけど。

笹島

もちろん日本文化が好きっていうのもありますけど、日本語は私にとって自分を変えてくれた特別なものなんです。

ケリー

そういえば前々回のインタビューでちらっと話してたね。それは具体的にどういうこと?

笹島

日本語を学ぶなかで、いろいろな人と話したり人前で劇をしたり、内気だった昔の自分ができなかったことをできるようになりました。弁論大会で優勝して日本に行ったときに、世界各国から来た人とも友達になることができたんですよ。だから、日本語のおかげで成長できたし、日本語のおかげで自分の世界も広がったと思ってます。

ケリー

日本語との出会いがなければ今のケリーちゃんはなかったんだ。

笹島

はい。日本とコロンビアは、それぞれ違う文化をもってるけど、お互いのよいところを吸収してそれぞれがよりよい文化を創れると思うんですね。だから、自分を変えてくれた日本語を通して、両者がそういう関係を築くための架け橋になりたいです! すごいざっくりしてますけど(笑)。

ケリー

いや、いいよ。これから具体的に何をするか、何ができるかを決めていけばいいんだから! あと、日本語はただのきっかけで自分を変えたのはケリーちゃん本人の力だから! 長々とありがとう!

笹島
ポーズをとる2人
イケイケなパイサの人たちの間で見られるポーズ。二人ともそういうタイプじゃないので少しぎこちない。
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夕立のアンティオキア ―パイサの生き方―

明るく元気なインダストリアルデザイナー ミチェル・カルバハル(1話)

CREDIT

クレジット

撮影・聞き手・執筆
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。