303 BOOKSのリモートワーク・ミュージック

東京

この記事は約5分で読めます by 常松心平

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生まれたのが実は東京。大学も、職場もずっと東京の心平です。でも千葉に暮らし、スティング風に言えば、いまだに、チバニヤン・イン・トーキョーの気分が抜けません。そんな近くて遠い「東京」を描いた曲を紹介します。

つねまつしんぺい
常松心平

編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。

山下達郎 – 新・東京ラプソディー

1989年の曲。今世界的な達郎ブームだけど。このイントロとか、ほんとカッコイイ。ありえなーい! 

この曲が生まれたのはバブルの頃で、トレンディドラマでは、サラリーマンがらせん階段のついた豪邸に住んで、ボディコン女子と眠らない夜を過ごしていた。

そんな時代に「一番好きな緑色の自転車と君がいるから、心の中はいつもミリオネア」って歌い出しは、批評性があると今ならわかる。ちなみに達郎は『TOKYO’S A LONELY TOWN』っていう名曲もある。

ブライアン・フェリー – Tokyo Joe

1977年の曲で、東京感が微妙で、なんかシンセが中国っぽいというか。アジアっぽいというか。結果、ゴダイゴみたいな曲になっている。でもカッコイイ。

曲はソウルフル、歌唱はビミョーという僕好みの仕上がり。実はこの曲、当時は世界各国で発売されたのに、日本ではシングルカットされなかった。

1997年に、木村拓哉のドラマ『ギフト』の主題歌になり再注目。けど残念ながらドラマが、今のコンプラでは、再放送できないらしい。あの自転車乗って、バタフライナイフ持ち歩くやつ。

KOIZUMIX PRODUCTION – 東京ディスコナイト

1992年の曲。この曲がリリースされたとき、東京は「渋谷系」という音楽が流行っていた。ソウルやジャズ、フレンチポップなどをミックスしたスイートなポップスで、これでもかと押し寄せる「東京感」だった。

KOIZUMIX PRODUCTIONっていうのは、小泉今日子の別名で。この『東京ディスコナイト』が収録された『Bambinater』は、フリッパーズ・ギターだった小山田圭吾、ピチカート・ファイヴの小西康陽、オリジナル・ラブの田島貴男といった渋谷系の主要アーティストを集結させてつくったアルバムだった。

『東京ディスコナイト』はスクーターズという80年代の伝説のバンドのカバーで、小西康陽がプロデュースしている。この曲はモータウンのビート。あのみんな大好き『MajiでKoiする5秒前』のドンドンドンズンズンズンってやつ。

脊髄反射的に好きになっちゃう音楽。結局、あの頃の東京の一番イキがいいミュージシャンを総結集させたキョンキョンが、僕にとっての東京の一番ヤバいクリエーターだったのだ。

マニック・ストリート・プリーチャーズ – Motorcycle Emptiness(享楽都市の孤独)


1992年の曲。ファーストアルバムを出したら世界中で1位を取り即引退するとウソぶいていたマニック・ストリート・プリーチャーズ(もちろん引退しなかった)。そのいわくつきのファーストアルバムに収録された一曲。PVはバブル崩壊直後の渋谷にポツンと佇むメンバーを映し出している。

サビでは「Under neon loneliness motorcycle emptiness」(ネオンに照らされる孤独、オートバイの空虚)とミッシェル・ガン・エレファントみたいな歌詞が繰りかえされる。

ものすごく過激なアティテュードのバンドだったのに、曲はメロウで、歌詞はとてもリリカル。鈴木雅之と菊池桃子の『渋谷で5時』や『東京ディスコナイト』と同じ時代の作品だが、こちらの方が当時の渋谷を見ていた僕の感覚には近いかも。僕の居場所は、今も昔も渋谷にはないんだな。残念ながら。

荒井由実 – 中央フリーウェイ


1976年の曲。僕の世代でも、車の免許取って、中央高速走って、最初にやることと言ったら、東京競馬場を探すことだった。ユーミンはレペゼン・八王子なんだよね。だから中央高速ラバーなの。「この道はまるで滑走路 夜空に続く」ってラインが好き。夜、高速道路を車で走るとそんな高揚感がいつだって訪れる。今も確実に。

関係ないけど、僕のベスト・オブ・首都高は、1号羽田線のモノレールと並走するところ。あの近未来感がたまらない。しかしこの曲、ユーミンも超天才なんだけど、アレンジャーの松任谷正隆先生がすごすぎる。天才と天才が70年代に上り詰めて、夜空の果てまで行っちゃってる!

Hermann H.&The Pacemakers – 東京湾

2001年の曲。東京がテーマじゃなくて「東京湾」がテーマ。織田裕二が「レインボーブリッジが封鎖できません」とボヤく少し前にリリースされた。

このバンドの歌詞は、文学的というか、カッコイイけど、何言ってんだかイマイチわからない。「届かぬ言葉を吐きあっては解るふりして泣けるモンスター さあ海に棄てようぜ 眠るふりして夜は続くはず」のように。

ただ、とにかく「ベイ・オブ・トーキョー! ベイ・オブ・トーキョー!」というサビが超キャッチー。京葉線で毎日「ベイ・オブ・トーキョー」の海外線に沿って東京に向かう僕には、東京湾こそ東京のイメージなんだよね。僕の住む街は幕張ベイタウンだし。買い物するのは「ららぽーとTOKYO-BAY」だし。聴いてるラジオは「ベイFM」。千葉人は、とにかく東京湾が大好き!

「東京ソング」はまだまだたくさんあって、紹介しきれないんだけど、東京はやっぱり、非東京人や外国人には幻想をかきたてられる街。東京に毎日通って20年以上経つけど、その都市としての過剰さに、いまだに感動したり、ドン引きしたりを繰り返している。コロナ禍を乗り越え、またいろんな意味でクソ熱い東京の夏がカムバックしてほしいと願う今日この頃の僕です。

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執筆・編集
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
イラスト
1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。