VSコロナ コロンビア編

マイナンバーで外出規制!?

この記事は約4分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

コロナウイルスと戦う世界の様子を伝えるこの緊急企画「VSコロナ」。第3回はコロンビアがマイナンバーを使って、ロックダウンを維持しているという話です。日本では、まだあまりメリットが生み出せていないマイナンバー制度ですが、意外にもコロンビアでは、広く普及し、上手に活用していました。笹島佑介が現地からお伝えします。

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175人でロックダウン

※トップの画像は、ユースケのマイナンバーカード(外国人用)この人相のおかげもあって、安全に暮らせるそうです。

前稿の終わりで、外出禁止でずっと家にいるとストレスが溜まる → 外出禁止中でも食料品や医薬品を購入する場合などであれば外出できるなら毎日食料品を買いに外に出ればいいじゃない → それはできない ということに触れました。

そもそも、外出禁止命令はウイルス感染拡大を防ぐための手段です。家に籠もってるとつらいからと食料品購入を口実に毎日外出していたら何の意味もありません。なるべく外出しないのが何よりも肝要です。わたしの場合、1週間以上は外出しなくていいよう1回の買い物で大量に買い込みます。

しかし、そこは人間の性、家にずっといるのが嫌だから毎日食料品買いに行っちゃおうとか、外出禁止の要点を忘れてついつい買い物してしまう人もいるでしょう。

他の国での例ですが、3月中旬ごろ、すでに外出禁止令が出ていたスペインの状況を知りたくて国営ラジオを聞いていました。そのとき、首都マドリッドの市長が出演していて、「スーパーに行ったとき、レジ係の人が “市長、感染者が増えて危険な状況なのに、いまだに1点、2点ぐらいの食料品を買って帰る人がいます! なんとか言ってください!”と言われました。何度も外出することがないよう、市民のみなさんこういうことはやめてください!」ということを語っていました。

どの国でもこういうケースが出てくると思いますが、ではコロンビアではこうしたことを防ぐために何をしているのか。それが前稿でお話した「Pico y Cédula(ピコ イ セデュラ)」という規制です。

すべての国民は、成人になるとCédula(セデュラ)という身分証明書が発行されます。この身分証明書には番号がふられており、この番号がそ個人番号、いわゆるマイナンバーです。「Pico y Cédula(ピコ イ セデュラ)」という規制では、このマイナンバーの末尾の数字で、食料品や必需品の買い物で外出できる日を決めています。たとえば、

買い物で外出できる曜日 マイナンバーの末尾の数字
月曜日 1・2・3の人
火曜日 4・5・6の人
水曜日 7・8・9の人
木曜日 0・1・2の人
金曜日 3・4・5の人
土曜日 6・7・8の人
日曜日 9・0の人

という具合です。マイナンバーの末尾が1の人は、食料品を買ったり、銀行手続きしたりするために外出できるのは月曜日と木曜日だけです。こうした規制で毎日外出しないようコントロールしています。なお、この規制はコロンビア全土で行われているものではなく、実施状況は各県によって異なります。

ところで、コロンビアはマイナンバー社会です。銀行手続き、図書館利用手続き、携帯電話を買う時、部外者として大学を訪問するとき、スーパーでポイントを貯めるとき…、さまざまな場面でこの身分証の提示、つまりマイナンバーの提示が求められます。日本で身分証といえば運転免許証ですが、コロンビアでは絶対的にこのCédula(セデュラ)とよばれる身分証です。このCédula(セデュラ)の歴史を少し調べてみますと、まずは選挙での投票システムとして誕生し、後に個人の身分証と発展していったようです。

日本はなにかと運転免許証が身分証として求められますが、免許を取る必要のない人もたくさんいるので不便のように思います。選挙権が得られる年齢になったらこうした身分証を発行すれば、[運転免許なし・実家住み]というステータスによって、携帯電話を契約する際に「保険証は身分証として弱い」「公共料金領収書に本人の名前がないからダメ」とはねつけられ、自己の存在を証明するために数日も各所を奔走するハメになった303BOOKS営業担当の野田さんみたいな事例も無くなるでしょう。

少し話が逸れましたが、とにかくこうしたマイナンバーを使って外出禁止の中でも制限をしてるわけです。余談ですが、コロンビアでは「Pico y Placa(ピコ イ プラカ)」という交通規制もあります。都市部では普段から自動車の排ガスによる大気汚染や交通渋滞が問題になっていて、こうした問題を緩和すべく、自動車ナンバー(Placa[プラカ])の末尾の数字によって公道を走る車の数を制限しています。この規制はロックダウン前から実施されているもので、外出禁止中の措置ではありません。イタリアなどロックダウンしている都市では空気がキレイになっていっているようですが、私がくらすメデジンも例外ではありません。

次回は、ロックダウンによって経済的に苦しい状況に追い込まれている人々、そうした人たちへの支援について紹介したいと思います。

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執筆・編集・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。