VSコロナ コロンビア編

命を救う”赤い布作戦”

この記事は約4分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

コロナウイルスと戦う世界の様子を伝えるこの緊急企画「VSコロナ」。第4回はコロンビアの支援政策を紹介します。日本でも支援策が発表されましたが、いきなり議論沸騰ですね。コロンビアの物価はだいたい日本の4分の1ぐらいです。それを踏まえて、比べてみてください。意外に手厚い生活支援策がわかりました。笹島佑介が現地からお伝えします。

所得格差が激しいコロンビアでは、貧しい暮らしを強いられている人がたくさんいます。2020年1月時点でのコロンビアの失業率は13%と、仕事にさえありつけない人も少なくありません。さらに、貧困層ではなくても、新型コロナウイルス問題で職を失ったり、契約が中断されたりして収入が無くなり暮らし向きが苦しくなる人もいます。先日、コロンビアはロックダウンを14日間延長することを発表しました。感染拡大を防ぐためにロックダウンを続けるにしても、こうした経済的に厳しい立場に置かれている人をしっかりと支えていかなければなりません。本稿では、ロックダウン中のコロンビアにおいて、こうした弱い立場にある人々をどのように支援しているかをその一部を紹介します。

・補助金
Las Cajas de Compensación Familiar(ラス・カハス・デ・コンペンサシオン・ファミリアール)という社会保険システムの加入者に対して、ロックダウン中に職や収入を失った場合に補助金(最低月収×2 ≒ 55,000円)を交付。ちなみに、この社会保険システムには全国民の約半数が加入しており、その大半が低収入層。こうした社会保険に入っていない人、70歳以上で年金を受けていない高齢者のための補助金もある。首都ボゴタでは、35万の貧困世帯に対して233,000ペソ(約6,500円)、15万の貧困一歩手前の世帯に160,000ペソ(約4,500円)相当の食料を配布。※ロックダウン延長中の23日間に1回

・賃上げ、立ち退きの禁止
ロックダウン中の家賃の値上げ、家賃滞納による借家人の立ち退きを禁止。

・消費税収の一部還元
消費税による税収の一部を困窮している100万の家庭に75,000ペソ(約2,100円)を還元。還元を受けれるか受けられないかはマイナンバーですぐに調べることができる。なお、現在のコロンビアの消費税は19%。

・食料品の提供
上記でも紹介した首都のボゴタのように、食料を提供をしている自治体もある。ボゴタでは、政府の支援の他に、地元の大学生やコロンビア赤十字などが協力し、一般家庭から寄付してもらった日持ちするもの(油やパスタ、豆など)を、食べ物に困る家庭に届ける活動を始めた。筆者が住むアンティオキア県では、中央政府から直接的な援助をうけられない100を超える地方自治体の住民に対し、穀物や乳製品、肉などが入った食料パックを配布しており、これまでに約1万8000世帯に届けている。こうした動きのなかで、印象的なのが、筆者が勝手に「赤い布作戦」と読んでいる地域支援活動である。食料が不足している家庭は玄関や窓に赤い布をかかげ、それを見た近所の人が訪れて食料を分け与える。この支援活動は首都ボゴタやその郊外で見られるもので、今では当局もその支援の輪に加わり食料を供給している。

これが実際の赤い布。
(出典 : https://www.eltiempo.com/bogota/la-historia-detras-de-los-trapos-rojos-con-los-que-piden-auxilio-481806)

・寄付
コロンビアでトップ、世界では153位の大富豪(Forbes2019による。なお、日本1位の柳井正[ファーストリテイリング] が41位、日本5位の三木谷浩史 [楽天]が383位)、Luis Carlos Sarmiento Angulo(ルイス・カルロス・サルミエント・アングロ)が800億ペソ(約22億円)の寄付を表明。寄付金は検査キットや呼吸器などの医療器具、貧しい人のための食料の購入に使われるとのこと。また、オラヤ市という小さな街の市長やメデジン市の市長などコロナウイルス問題が収束するまで、給料を困窮している人々のために寄付すると表明している政治家もいる。一般の人も寄付しており、こうした寄付が補助金や配給される食料の一部になっている。

などなど、ロックダウンによって特に経済的な打撃を受けている人々に対してさまざまな支援が行われています。すべての支援がうまく機能しているかどうか分かりませんし、助けを必要としているすべての人に支援が行き渡っているとは思いませんが、コロナウイルス危機を乗り越えるために、上記で紹介した以外にも大小種々の対策が行われています。

医療崩壊や経済停止を避けるべく、爆発的な感染拡大防止のために次々と手を打って対処していますが、こうした支援は同時にコロンビア経済を圧迫しています。巨大資本も経済も持っていないコロンビアは、新型コロナウイルス感染症の被害を最小限に抑えつつ経済を再活性化していくための道を模索しています。

次稿では、コロンビアの医療現場の動向についてリポートいたします。

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執筆・編集・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。