「A Night with Ladies In The City」ライブレポート  

この記事は約7分で読めます by 笠原桃華

抜群の選曲センスと昭和ポップスへの深い造詣により、3年ぶりの来日全国ツアーで大成功をおさめたNight Tempo。
最終日の8月16日の公演は、ツアーのファイナルとして昨年末にリリースしたアルバム『Ladies In The City』にちなんだスペシャルなライブが用意されていた。
豪華なLadiesが登場した最終日の「A Night with Ladies In The City」をレポート。

Night Tempo/夜韻
80年代のジャパニーズ・シティポップ、昭和歌謡や和モノ・ディスコ・チューンを再構築したフューチャー・ファンクの人気アーティストである韓国人プロデューサー/DJ。アメリカと日本を中心に活動する。

初のメジャー・オリジナル・アルバム『Ladies In The City』

2021年12月1日にリリースされたアルバム『Ladies In The City』はNight Tempo初のメジャー・オリジナル・アルバム。
「社会進出を果たした都会に暮らす女性達の物語」をコンセプトに、10名の女性アーティストがヴォーカルとしてゲスト参加した。
舞台は「80年代後半から90年代の日本」に設定されており、令和の今になって再解釈される当時の女性像が興味深い。

〈アルバム『Ladies In The City』参加ゲスト一覧〉
BONNIE PINK、上坂すみれ、刀根麻理子、山本彩、野宮真貴、道重さゆみ、Crystal Tea、竹内美宥、十束おとは(フィロソフィーのダンス)、国分友里恵。

駆けつけた Ladies

LIQUIDROOMで開催された「A Night with Ladies In The City」にはアルバムに参加したアーティストのうち、BONNIE PINK、野宮真貴、竹内美宥、十束おとはが参加した。

「Night TempoはMCの中で、『Ladies In The City』制作にあたり楽器としての「歌い手の声」のユニークさを強く意識していたと明かしたが、特にこの夜トップバッターとして登場した十束おとは(アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」)はその特徴的な「声」によって指名されたという。

『House Music』では、グループ内での十束のキャッチコピー「インドアアイドル」がモロに歌世界に反映されている。 彼女の唯一無二なヴォーカルと相まって、まるでゲームの世界から出てきたかのようだ。」

次に登場したのが、元AKB48で現在ソロ活動中の竹内美宥。
竹内は2021年まで韓国で活動しており、その当時からNight Tempoと交流があったそうだ。

「歌がとにかくうまい!」とNight Tempoにに太鼓判をおされる竹内は、伸びのいい透き通るような声でしっとり『Sentimental』を歌い上げた。

『Sentimental (Neon Mix) feat. Miyu Takeuchi [Official Music Video]』(Night Tempo)

同曲のMVはNight Tempoが初めて監督、撮影、編集の全てを担当。

このMVは、80年代末から90年代初頭にかけてみられた女性アイドルによる大人の本格シンガー転向を狙いとしたMVへのオマージュが感じられ、まるで竹内のシンガーとしての今後を示唆しているかのよう。

3人目はBONNIE PINK。

彼女の登場により、しっとりバラードな雰囲気も一転! ステージに現れるやいなや瞬時に会場を巻き込むBONNIE PINKの存在感には「さすが!」の一言しかない。ここ数年音楽活動のペースを抑えていたが、単独公演も再開し、再び活発に活動していくとのこと。
もちろんパワフルな歌唱力は健在だ。

『Wonderland (feat. BONNIE PINK) [Official Music Video]』(Night Tempo)

『Wonderland』では、「叶わなかった恋の記憶」をクールで迷宮感のあるディープ・ハウスのアプローチで表現したメロディーに落とし込むことで、「東京」の生活を“Alice in Wonderland”の世界にリンクさせている。

そしてトリを飾るのは、渋谷系おしゃれクイーン・野宮真貴。 還暦を迎えたとは思えないその佇まいに、聴いているこちらの姿勢まで伸びてしまう。

『Tokyo Rouge』では、愛する彼の電話を待ちくたびれた女性が主人公だ。

『Tokyo Rouge (feat. Maki Nomiya) [Official Music Video]』(Night Tempo)

他にもPIZZICATO FIVEの名曲、『東京は夜の七時』(1993年)のパフォーマンスも。

この曲は『Ladies In The City』には収録されていないが、2021年にNight Tempoによって公式リミックスされている。

『東京は夜の七時 (feat. Night Tempo)』(野宮真貴)

野宮によれば『東京は夜の七時』(1993年)と『Tokyo Rouge』(2021年)、この2曲は姉妹関係にあるという。

実際に歌詞を見てみると、純真だった「待たせる女」から、どうやら成熟した「待たされる女性」へと変化したと読み取ることができる。
音楽と共に年齢を重ねてきたからこそ出すことのできる深みある世界だ。

昭和の余韻とこれからの夜韻(Night Tempo)

新プロジェクト「Fancylabo(ファンシーラボ)」のお披露目もこの日行われた。 Night Tempoと矢川葵による新ユニットだ。
Night Tempoが作詞・作曲ともに担当。 また、これまで楽曲制作にあたってはサウンドクリエイターに徹していたNight Tempoが自身もヴォーカルとして参加することが発表された。

この夜、3曲先行してかけられたが、注目すべきはNight Tempo自身による「90年代っぽいラップ」。
「Fancylabo」の活動については続報を待ちたい。

またさらに驚くのが、Night Tempoが日本滞在中に多忙なスケジュールをこなしつつ、移動時間などに10曲書いたということだ。 次々と大物アーティストたちとのコラボを果たしているNight Tempoだが、この10曲は一体誰とコラボするのだろうか。

次の来日予定もすでに決まっているそうで、今後もNight Tempoから目が離せない。

「A Night with Ladies In The City」セットリスト

Night Tempo – A Night with Ladies In The City
2022/8/16 @ LIQUIDROOM 
Set List


DJ set:
『You & Me (Night Tempo Melting Groove Mix) 』− 佐藤ミキ
『Baby』 − Night Tempo
『Can It Be Love?』 − Night Tempo
『Love Is A Two Way Street (Night Tempo Showa Groove Mix)』 − 杏里
『艶姿ナミダ娘 (Night Tempo Showa Groove Mix)」 − 小泉今日子
『黄昏のBay City (Night Tempo Showa Groove Mix)』 − 八神順子
『Dress Down (Night Tempo Showa Groove Mix)』 − 秋元薫
『Endless Mirage (feat. 刀根麻理子)』 − Night Tempo
『Night Light (feat. 道重さゆみ)』 − Night Tempo
『One Way My Love (feat. 上坂すみれ)』 − Night Tempo
『テレフォニズム (Night Tempo Melting Groove Mix)』 − フィロソフィーのダンス
『Night City』 − Night Tempo

Live:
『House Music (feat. 十束おとは)』 − Night Tempo
『Sentimental (feat. 竹内美宥)』 − Night Tempo
『Wonderland (feat. BONNIE PINK)』 − Night Tempo

『純愛』 − Fancylabo
『ドキドキ電話』 − Fancylabo『Flash Light』 − Fancylabo
『Tokyo Rouge (feat. 野宮真貴)』 − Night Tempo
『東京は夜の七時 feat. Night Tempo』 − 野宮真貴

Encore:
『淋しい熱帯魚 (Night Tempo Showa Groove Mix)』 − Wink
『君は1000% (Night Tempo Showa Groove Mix)』 − 1986オメガトライブ

Photos by Masanori Naruse

CREDIT

クレジット

執筆・編集
長野で野山を駆け回り、果物をもりもり食べ、育つ。好奇心旺盛で、何でも「とりあえず…」と始めてしまうため、広く浅いタイプの多趣味。普段はフリーで翻訳などをしている。敬愛するのは松本隆、田辺聖子、ロアルド・ダール。お腹が空くと電池切れ。