「Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ・ツアー 2022」レポート

この記事は約5分で読めます by 笠原桃華

Night Tempoにとって3年ぶりとなる今回の来日ツアー。
7月のフジロックフェスティバルへの出演を皮切りに、札幌から福岡まで合計7都市をまわり、2週間でなんと9公演というハードスケジュールをこなした。うち8公演は「昭和グルーヴ」DJセットで、各地でチケットソールドアウトとなり大盛況!
前回の来日公演からさらにパワーアップした「Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ・ツアー 2022」をレポート。

Night Tempo/夜韻
80年代のジャパニーズ・シティポップ、昭和歌謡や和モノ・ディスコ・チューンを再構築したフューチャー・ファンクの人気アーティストである韓国人プロデューサー/DJ。アメリカと日本を中心に活動する。

激しいのください!

Night Tempoは日本だけでなく、世界のフロアを昭和歌謡で揺らしてきた人物だ。
しかしNight Tempo自身が言うように、彼は生来インドア派であり、いわゆる「パリピ」ではない。

MCも独特で、意外なほど観客とたっぷり対話する。

この夜も、
「みなさん、徐々にアゲていくのと最初から激しいのどちらがいいですか?」
というNight Tempoの呼びかけに、
「最初から激しいのがいい!」
という会場からの反応。

Night Tempoにとってこの反応は予想外だったようだ。

彼のプランでは「徐々にアゲていく」ほうだったようで、その場でアップテンポなセットリストに組み替えるというNight Tempoのお茶目な姿は会場の笑いを誘った。

そして選ばれた1曲目はWinkの『愛が止まらない ~Turn It Into Love~』。

『愛が止まらない ~Turn It Into Love~ (Night Tempo Showa Groove Mix)』(Wink)

会場からは、
「フォォ〜〜〜〜!」
と賞賛の雄叫びが。

電気ケトルより速く、Night Tempoは一瞬で会場を沸点に到達させてしまう。

いわゆる「シティポップ」のイメージがあるNight Tempoだが、この夜は『ギャランドゥ』(西城秀樹/1983年)や『セーラー服と機関銃』(薬師丸ひろ子/1981年)など、昭和歌謡の名曲を次から次へとたたみかけていった。

選曲センスだけでなく、緩急の使い分けも巧みだ。

Night Tempoは『君たちキウイパパイヤマンゴだね』(中原めいこ/1984年)の終盤で〈♪チクタク〉とメトロノームのような音で一瞬会場を戸惑わせ、ドンッと昭和エクスタシー・『聖母たちのララバイ』(岩崎宏美/1982年)を投下。
「タメ」を使ったポップな曲からバラードへの切り替えに唸らされる。

渋谷で昭和にタイムスリップ

会場についてだが、「Spotify O-EAST」は最大キャパシティ1300人の大箱である。
この会場が、「昭和グルーヴ」を求める人で鮨詰めになる。

松田聖子の『青い珊瑚礁』が流れたときには、会場が一体となって手拍子を送る場面も。
この空間だけ80年代にタイムスリップしたかのよう!

今回の「ザ・昭和グルーヴ・ツアー 2022」は、来場者全員が楽しめるようなヒットソングを中心としたものだったが、Night Tempoリミックスの魔法にかけられた懐メロの数々を耳にすると、それらが実は踊れる曲ばかりだったのだと気が付く。

「ザ・昭和グルーヴ」シリーズで公式リエディットしている曲『真夜中のドア〜stay with me〜』(松原みき/1979年)や『艶姿ナミダ娘』(小泉今日子/1983年)などの盛り上がりも凄まじい。 会場が一つになったように揺れ、フロアユースな曲としての完成度の高さを感じさせられる。

映像がつくりだすNight Tempoの世界

Night Tempoは、音楽以外の映像や、アートワークへのこだわりも強い。

「ザ・昭和グルーヴ」のカバーアートでイラストレーターのtree13を起用し、新しい「80年代感」を示してみせたように、ライブでもVJ(Video Jockey)や照明を駆使して昭和歌謡の魅力を1000%引き出す工夫が見受けられた。

会場では、Night TempoのDJに合わせてMIKURU YAMASHITAによる映像が次々とくり出され、それらにさらなる一体感を持たせるような表現力溢れる照明が空間いっぱいに注がれた。

例えば、男女の掛け合いがおもしろい『3年目の浮気』(ヒロシ&キーボー/1982年)では、男性パートと女性パートの切り替えに合わせて背景や照明の色が変わる…というように。

「遊び心」と言って片付けてしまうには惜しいほどの「昭和歌謡愛」を感じさせられる。

VJのMIKURU YAMASHITAとNight Tempo

コロナの影響で何度も来日が延期されてきたNight Tempoにとって、今回の「Night Tempo presents ザ・昭和グルーヴ・ツアー 2022」はこれまで以上に気合の入ったものだっただろう。

フジロックからの全国ツアー。
この圧倒的なO-EASTのステージで、日本を沸かし、踊らせてきたNight Tempo。
次は、武道館のステージにたちたいという。
歴代のアーティスト、アイドルがわかせてきた殿堂で、昭和グルーヴが鳴り響く日も近いかもしれない。

Photos by Masanori Naruse

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執筆・編集
長野で野山を駆け回り、果物をもりもり食べ、育つ。好奇心旺盛で、何でも「とりあえず…」と始めてしまうため、広く浅いタイプの多趣味。普段はフリーで翻訳などをしている。敬愛するのは松本隆、田辺聖子、ロアルド・ダール。お腹が空くと電池切れ。