前回は、近藤さんが「絵描き」の道に進んだきっかけについてお話をうかがいました。第2回では、それからどのようにしてライブペインティングのスタイルを確立したのか、いよいよ迫りたいと思います。
ライブペインティングパフォーマー・近藤康平「キャンバスに生まれた物語」
物語の始まり
ライブペインティングへの挑戦
はじめてライブペインティングをしたのはいつですか?
2009年、33歳のときかな。「トレモロイド」※というバンドでボーカルをやっている小林陽介くんに声をかけてもらって。
※トレモロイド:2005年、小林陽介(Vo,Gt)と小林郁太(Key)の小林兄弟を中心に結成されたロックバンド。“空想の中の日常”をテーマにした歌詞を、ロックやフォークミュージックを織り交ぜたサウンドで届ける。
ライブペインティングパフォーマンスを一緒にしてほしいと?
はい。小林くんは、前から他のライブペインティングアーティストと共演していて。だけど、絵と音楽とのつながりが感じられなくて、満足できるものではなかったと言っていたんです。
なるほど。そこで、近藤さんと一緒に理想のスタイルを目指そうとしたわけですね。
そうです。小林くんの音楽に合わせて、ライブの時間内(40〜50分)で描き上げることが目標となりました。
その時点で、近藤さんはライブペインティングという手法は、知っていたのですか?
あまり知らなかったです。だから、やるためにどういう準備をしたらいいのかもわからなくって。とりあえず、自分なりに考えて必要だと思うものをそろえてライブにのぞみました。
初ライブで見えたもの
初ライブのときから手を使って描いたんですか?
準備の段階では手を使うことは考えていなくて、筆や色えんぴつを用意していました。
あれ!? 筆や色えんぴつの予定だったんですね?
手で描き始めたのは、初ライブの最中ですね。大きな紙に描くので、筆や色えんぴつだと、どうしても描くのに時間がかかってしまって。そのとき、手で直接描いたほうが早いなって思いました
なんとライブ中!?
そうです。手で描くと、ただ速く描けるというだけでなく、体全体を使って描くことになるので、パフォーマンス性が高いんです。だから自分がやりかったことにすごく合っていると感じました。
初ライブにして自分のスタイルが見つかったのですね。それでも、40分ほどで大きなキャンバスに曲に合わせてなんども塗り替えていくのは大変ではないですか?
もともと、素早く絵の構図を決めて描くこと、その場で絵のストーリーをつくれることが自分の強みだったんです。なので、ライブ前に、共演するミュージシャンの楽曲を聴き込んで構成や歌詞を覚えたり、きっちりリハーサルをすることもあまりないですね。
かなり衝撃的です(笑) 本当にその場で作品をつくっているのですね。
最近ではA4くらいの紙に絵を描く様子をプロジェクターに映すという、ライブペインティングの新たな手法も取り入れています。
大きなキャンバスに描くのとは、また違いますね! 見てみると。
そうですね。この手法だと一曲の中で展開をより忠実に追いやすいので、大きな展開がある楽曲や、物語性がある歌詞との相性がいいんです。プロジェクターに映すことで、映画館のような雰囲気を出せるのもポイントです。
では、第3回では初ライブから広がっていった新たな活動についてお聞きしたいと思います。
※NIKIIE:2010年12月、シングル「春夏秋冬」でメジャーデビュー。2016年より『(K)NoW_NAME(ノウネイム)』にボーカリストとして参加。2017年からは「REIS」として『DADARAY』に加入。『TRANSFER』『Pianism』『Equal』などのアルバムがある。おもにピアノ弾き語りのスタイルでライブを行う。
代田橋駅北口の路地にあるギャラリーカフェ。町工場を改装してつくられた店内は広く、ゆったりとした空間でアートが楽しめる。定期的に、さまざまなアーティストによる個展やLIVEイベントが開催される。
今回取材させていただいたライブのフードは、笹塚にお店を構えるイタリアンバル「スケッチ」によるもの。木目調のアットホームな店内で、オーナーが手間をかけてつくる本場のイタリア料理がお手頃な値段で楽しめる。