ラフスケッチのようなマウスマンが動き出し、乾いた笑いを届けてくれるガレージ・アニメ『マウスマン』や、人形を使ったコマ撮りの短編アニメーションなどを手掛けるアートアニメーション作家の佐藤亮さん。現在、303 BOOKSで出版する絵本『そらごとの月』『ほんとうの星』のPVを制作中です。今回は、仕事場でもある自宅にお邪魔して、佐藤さんの世界を覗いてみましょう。
「アートアニメーション」ってなに?
まず、「アートアニメーション」ってなんでしょう?
あまりはっきりとした定義はありません。作家さんの中にはこの言葉を使うのを嫌がる人もいますね。
なるほど。個人的には少し難解な短編アニメーションがそう呼ばれるイメージがありました。
僕としては、「TVで放送されるアニメーション以外」というとらえ方をしています。なんでも動けばアニメーションですから。
日本ではアニメ産業が盛んで、みんなTVアニメに親しみがあると思います。どうしてTVアニメじゃなく、アートアニメーションを目指したのでしょうか?
実は、僕はTVアニメにはほとんど影響を受けていないんですよ。
え? じゃあ僕の好きな『太陽の牙ダグラム』※とか、『蒼き流星SPTレイズナー』※とかも通ってないんですね・・・。
※『太陽の牙ダグラム』=1981年~1983年までテレビ東京で放送されたロボットアニメ。監督は『装甲騎兵ボトムズ』で有名な高橋良輔。
※『蒼き流星SPTレイズナー』=同じく高橋良輔が監督したロボットアニメ。初めは王道のSF路線だったが、当時大人気だった『北斗の拳』に影響を受け、とんでもない路線変更をした。
原点としては、やっぱりディズニーです。
『ファンタジア』などでしょうか?
個人的には、もっと古い白黒のものが好みです。たとえば、『Plane Crazy』※とか。
※『Plane Crazy』=1929年公開。今や世界的キャラクターになったミッキーマウスの最初期の作品。前年に大西洋を単独で横断飛行したチャールズ・リンドバーグから着想を得て制作された。
従兄弟の家にディズニーのLDがあって、それをVHSにダビングしたものを家で見ていました。
確かに、佐藤さんの作品を観ると、いい意味で日本人らしくないというか、海外でウケそうなセンスを感じます。
日本のアニメにはあまり興味がなくて、実はジブリの主要作品もまだ観ていないんです。
アニメーション制作の道へ
でも、アニメが好きでも、作るとなると別物だと思います。アニメーションを作り始めたのはいつごろなんでしょうか?
昔から絵を描くのは好きで、キャラクターなどは作っていました。でも、どうやってアニメーションを作るかは学生のころはわかっていなかったですね。
確かに、機材や手法など、すぐにできるものではないですよね。
アニメーションを作りたいという思いはぼんやりとありました。そんなときに、つちもちしんじさんに「こんなところもあるよ」って学校を教えてもらったんです。
それは、『代アニ』のようなアニメの専門学校ですか?
いえ、TVアニメ制作を目指す学校ではなく、アートアニメーション専門の学校です。名前もそのまま「アート・アニメーションのちいさな学校※」 。
※アート・アニメーションのちいさな学校=東京都阿佐ヶ谷にある、アートアニメーションの専門学校。平面アニメーションのほか、日本では唯一人形アニメーションを学ぶことのできる学校。
こんな学校があるんですね!
TVアニメの学校よりは入りやすそうだし、やってみようということで、平面アニメーションのコースに申し込みました。26歳のころですね。
こうしてアニメーション制作の道へと入っていったんですね。次はアニメーションの学校時代のお話や、代表作『マウスマン』シリーズについてもお聞きしたいと思います。