アレッサンドロさんの日本への移住のきっかけをつくったのは、絵本の製作だったそうです。第3回は、絵本製作と作品に込めた想いについてうかがいました。
『なぞなぞショッピングモール』と、ビオレッティ・アレッサンドロ
子どもの頃からの2つの夢
※2019年夏のインタビュー記事です。予定より大幅に遅れてしまいましたが、2022年9月に「なぞなぞショッピングモールでおかいもの」の発売が決まりました。
イタリアで描いた絵本を日本で出版
最初に出版された『みつけてアレくん! せかいのたび』(小学館)の絵本は、どういう経緯で製作することになったのですか?
日本で知り合った編集者が、探し絵の絵本をつくりたいんだけど、やってみない? と声をかけてくれたんです。
いきなり1冊をまかされるとは、すごいです。絵本は絵の魅力が大切ですから、その編集の方に、アレッサンドロさんの絵がビビッときたのでしょう。
ぼくにできるかなと思ったのですが、細かい絵を描いてみたくて。それに、これをきっかけに日本に住むことができるかもという期待もあって。
製作は、イタリアでされたのですよね。
イタリアの日本食レストランで働きながら、2年かけてつくりました。世界の国々には、それぞれ本当にたくさんのちがいがあります。それを感じ取ってもらえたらと思いました。
主人公のアレくんは、アレッサンドロさんご自身ですか?
ぼくがこの絵本をつくる10年くらい前につくったオリジナルキャラクターなんです。
絵本では、イタリアからスタートして日本にも行っていますよ。
パスタのはしごがのびて世界を巡るという発想がユニークですね。「ジャックと豆の木」みたい。日本では、あとさき塾※にも通って絵本の勉強されていたとか。
※あとさき塾: 土井章史氏と小野明氏、二人の編集者が主催する、絵本作家養成ワークショップ。荒井良二さん、酒井駒子さん、島田ゆかさんなど、第一線で活躍する絵本作家を数多く輩出している。トムズボックス
ストーリー性のある絵本がつくりたくて。でも、デザイン会社に入ってからは、忙しくなってなかなか行けなくなってしまったのですが。
最近、企業から絵本を出されたそうですね。
傘ブランドを運営する(株)シューズセレクションから、プラスチックゴミの削減と環境問題を描いた『ビニール傘と海の生きもの』という絵本を出したんです。8月頭に無料配布されました。
SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、折りたたみ傘の携帯習慣を子どもたちに促すもの、とありましたが。
そういうふうにいうと難しく感じますが、捨てられたビニール傘はどこへ行くのだろう? という内容で、絵本で楽しみながらしぜんと環境への意識を育てるものなんです。
なるほど。折りたたみ傘のように、広げたりたたんだりできる、楽しいしかけ絵本ですね。
なぞなぞ絵本へ込めた想い
303BOOKSで、製作していただいている、なぞなぞの絵本についてもお話うかがわせてください。企画を考えていた時に、たまたま社内で『みつけてアレくん! せかいのたび』を見せてくれた人がいて。とても魅力的で楽しい絵だなと思って、この方に絵をお願いしたいと思ったんです。
金田恭子さんですね。出会いが広がってうれしかったです。
「ショッピングモールを舞台にしたなぞなぞの絵本」と聞いて、どのように思われましたか?
なぞなぞの本だけど、宇宙人がショッピングモールにやってくるという設定だったので、ストーリーを沿わせることができるなと、興味を持ちました。マンガも描いていたので、ストーリー性のある作品をつくってみたかったんです。
ありがとうございます。なぞなぞに関しては、パズル作家の方にご協力いただきましたね。
そうそう、なぞなぞをつくってくれた杉本幸生さん、パズル作家という職業の人には初めて会いました。
オフィス303(インタビュー当時の社名 / 現 303BOOKS株式会社)は、パズルの編集も得意としているんです。それで、303BOOKSを立ち上げる時も言葉遊びの絵本、だじゃれとなぞなぞからスタートしようということに。
そうなんですか。なぞなぞやクイズは好きですね。
宇宙人のキャラクターについては、いかがでしょう。
やんちゃで、いたずらが大好きな男の子で、初めて地球に来てワクワクしている感じを出したいと思いました。
主人公の名前はルナくんにされました。名前の由来をうかがえますか?
「ルナ」は、イタリア語で「月」という意味です。人間にとって、月は太陽と同じくらい大切だし、作者のぼくがイタリア人なのでイタリアの要素も少し入れたいなと。
地球で出会う女の子は、ニナちゃんですよね。
宇宙人に会っても、それほど驚かずに仲良くしてくれるような、意志の強い子です。女の子だからといってかわいいだけでなく、気持ちの強さを絵でも表現できればと。ほかのキャラクターもかなり何度も描いて、宇宙のこともかなり調べて、イメージをつくりあげていきました。
できあがりが待ち遠しいです。来年春頃刊行できるようにがんばりましょう!
連載の最後は、今後の作品についてお話をうかがいます。第4回もお楽しみに。