『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』と、こがしわかおり

ダジャレーヌちゃんの世界をつくる

この記事は約5分で読めます by 小熊雅子

2019年4月に、303 BOOKS第一弾として絵本 『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』が刊行となりました。絵を担当された画家のこがしわかおりさんに、神楽坂の街を散歩しながら、担当編集の小熊が作品の世界や作家としての活動についてお話をうかがいました。

世界の街を妄想する!?

神楽坂の古い街並が好きなんです。車が入ってこない路地もあっていいですよね。喫茶「トンボロ」、一度来てみたかったんです。

こがしわ

木のぬくもりが感じられて、ランプなどの飾りも素敵ですね。

小熊
こがしわかおりさん
こがしわかおり
出版社勤務後フリーとなり、おもに子ども向けの本のイラスト、ブックデザイン、編集を手がけている。装画・さし絵に『料理しなんしょ』(偕成社)、『ちいさなおはなしやさんのおはなし』(小峰書店)、『わらうきいろオニ』(講談社)、『魔女のレッスンはじめます』(出版ワークス)など多数。作・絵に『おうちずきん』(文研出版)などがある。
Pagoda-House
喫茶「トンボロ」のテーブルに座るこがしわかおりさん
神楽坂裏通りの喫茶「トンボロ」。建築家でもある店主が手がけた風情ある店内に、珈琲の良い香りが漂う。「トンボロ」とは、フランスの世界遺産「モン=サン=ミシェル」のように、干潮時に海底が現れて陸地と島がつながる現象。

早速ですが、303 BOOKS第一弾として『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』を依頼させていただいたとき、どのように思われたかを聞かせてください。私としては、ダジャレーヌちゃんを魅力的に描いてくれる画家さんにお願いしたいと思って、こがしわさんにご連絡させていただきました。

基本的に、絵を頼んでくれる人は私にとって「天使」なので。わぁ、絵が描ける! と喜んで引き受けたのですが、すぐに恐れの方が大きくなりましたね。世界のいろいろな街を描いたり、何百人も人を描いたりなんて、無理! 出来ない!と。

こがしわ

確かに全部で14か国ですからね。それぞれの国の名物、名所、建物、動物……。描いていただくものがたくさんありました。私、白い天使だったのに、すぐブラック・エンジェルに変わってしまったんですね(笑)。

知識絵本って、ちゃんと描かないといけないのかなと思って。私は、アカデミックに美術や建築を勉強したわけでもないし、やっぱり無理だと。でも小熊さんが、きっちり正しく描こうとしなくていい、こがしわさんの街でいいって言ってくれたので。それなら、私なりの妄想で描けるかもと、思えるようになりました。

こがしわ

それぞれの国の雰囲気を知って妄想をふくらませるために、海外の映画をかなり観てくださったんですよね。アジアの絵からは湿った空気、南米の絵からはカラッとした暑さを感じました。

映画は、街の雰囲気や細かいディテールがわかるので。特に南米には足を踏み入れたこともありません。メキシコは、フリーダ・カーロを描いた『フリーダ』を観ました。画家としても尊敬する人です。フリーダの時代は、ヨーロッパの感覚が街に取り入れられた時代で、今でもその建物が残っているんです。そして新しいものとあいまって、今のエキゾチックな感じの街になっている。色合いもおしゃれでアーティスティックだなと、思いましたね。

こがしわ

絵本のメキシコのページにいますね、フリーダ・カーロ。左右の眉毛がつながっている女性ですよね。

フリーダ・カーロ
※左 / 映画『フリーダ』:メキシコの女性画家フリーダ・カーロの波乱に満ちた生涯を描いた作品。右 / こがしわさんが描いたフリーダ・カーロ。

そうそう。それと、エジプトの絵が描けるのはうれしかったです。子どもの頃から、ツタンカーメンを発掘したハワード・カーターが大好きで。探検家になろうと思ったくらい。大学でも、その頃エジプト研究のはしりだった吉村作治先生に教わっているんですよ。

こがしわ

※ハワード・カーター:エジプト考古学者。イギリスで生まれ、写生画家としてエジプトへ渡るが、後に王家の谷にあるツタンカーメン王の墓を発掘する。

それぞれの国が、すみずみまで楽しめる画面になっていますよね。こがしわさん自身が、本当に旅をしているように描いていただきました。砂漠で砂遊びをしている子どもがいたり、きれいな布を楽しそうに選んでいる親子がいたり。そんな風景をダジャレーヌちゃんが見てきたんだなと思わせるような。

林木林さんが書かれたダジャレーヌちゃんって、どっぷり街の中に溶け込んでしまうんじゃなくて、あくまで旅人で、ちょっと離れたところでみんなの喧騒を見ている。ときどきダジャレでつながって、またちょっと離れて。そんな人との距離感がとってもいいなと思いました。

こがしわ
絵本を見つめる二人
『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』のエジプトの画面 。

おだんごヘアーのダジャレーヌちゃん誕生

ダジャレーヌちゃんのキャラクターづくりについてはどうでしょう。だじゃれとおしゃれが好きで、元気のいい女の子ということで。

服装は、すぐ思いつきました。動きやすいように、ふわっとしたポンチョのようなワンピースにレギンスをはかせて。そして、どこでも歩けるようにブーツにしました。

こがしわ

国ごとで服が変わるので、ヘアースタイルは特徴のあるものに、とお願いしました。読者がダジャレーヌちゃんを探せないと困るので。

ヘアースタイルは、いろいろ悩みました。三つ編みだと大人っぽいし、個性に欠けるかなと。ダジャレーヌちゃんって、さりげないけど、自分にしかないアピールを考える子なんじゃないかなと思ったんです。それで、『だんご3兄弟』みたいな形のシニヨンにしてみようかと。実際にやってみたら、意外と簡単にできました。

こがしわ

※『だんご3兄弟』:NHK教育テレビの『おかあさんといっしょ』でつくられた串団子の兄弟の歌、およびそのキャラクター。
シニヨン:たばねた髪をサイドや後頭部でまとめた髪型。

こがしわさんのおだんごヘアー、見てみたかったです(笑)。素敵なダジャレーヌちゃんにしてくださって、ありがとうございます。私は、前からこがしわさんの人物や風景の絵が大好きだったので、本当にうれしいです。

何年か前に、一度ご連絡いただいたこと、ありましたね。

こがしわ

ええ。その時は、諸事情から結果的にお仕事がお願いできなかったのですが、こがしわさんが自作のカレンダーを送ってくださって。それがすごく素敵で、いつか絵をご依頼したいと思っていました。

それから、年賀状をいただいたりしていたので、お名前は覚えていましたよ。

こがしわ

ずっと作品も拝見しておりました。こがしわさんの絵の魅了は、どこからくるのか興味があります。その辺のお話もうかがわせてください。

カレンダー
こがしわかおり作、2009年カレンダー。
取材協力
喫茶「トンボロ」の外観
喫茶「トンボロ」
東京都新宿区神楽坂6-16
03-3267-4538
単行本
ダジャレーヌちゃん 世界のたび
文=林木林 / 絵=こがしわかおり
1,650円(税込)

画家こがしわかおりの魅力

CREDIT

クレジット

執筆・編集
『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の担当編集者。好きなものは、絵本・紙芝居・銭湯・目玉焼き。最近ジョギングに目覚め、10kmマラソンに参加することが夢に。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。