『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』 刊行記念トークイベント

レポート#1

この記事は約7分で読めます by 小熊雅子

2019年11月12日に 行った『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の刊行記念トークイベントの模様を全4回でご紹介します。
絵本の文を担当された林木林さん、絵を担当されたこがしわかおりさん、そして、内田麟太郎さんをゲストにお迎えして、お話をうかがいました。
場所は、 神保町で唯一の新刊のこどもの本(絵本・児童書)専門店 Book House Caféさん、こどもの本を愛する人たちがたくさん集まるお店です。
(上の写真は右から、内田麟太郎さん、こがしわかおりさん、林木林さん、小熊。)

作家プロフィール(ページ下部へ移動します。)

作家があこがれる作家

林さんとこがしわさんから、 内田さんに絵本を献本させていただいた際に、丁寧なお手紙をいただいて、すごく励みになったという話をうかがいました。今回、刊行記念のトークイベントで、どなたかをゲストにという話になったときに、ぜひ内田麟太郎さんにお願いしたいと思いました。

小熊

私は以前、内田さんから応援していただいたことがあり、この絵本ができた時に、今回はぜひ見ていただきたいと思ってお送りしました。

内田さんとは、とてもとても長い歴史があり、というか大変お世話になっていて。私がフリーの編集者になった頃、縁あって内田さんの生原稿を拝見して、すぐに夢中になって担当させていただきました。それが内田さんとの出会いでした。以来、本ができると送りつけて(笑)。見ていただきたいと思って。

こがしわ

絵本「おれたち、ともだち!」シリーズですね。

小熊

絵を描き始める前に、内田さんの顔が浮かぶときがあるんですよね。内田さんが本を開いて、「ハハハ!」とか「やられた!」とかいってくれるようなものになったらいいなって。描き始めると、絵に集中しちゃいますけど。

こがしわ

誰でも明日から絵描きになろうと思えばなれるんだけど、持って生まれた資質みたいなものが、やはりあると思うんですよね。こがしわさんの絵は軽やかで、余白の多い日本の伝統みたいなものが入っている。今回の絵本には、余白がないっていうか密度が濃いね。ただ、筆の軽やかさっていうのは、やはりあるんですよね。

内田

内田さんに本をお送りした時、「よくこんなに、精一杯描いたね。ばかじゃないの」っていわれて、「ああ、ばかかもな」って、ちょっと思ったんですけど(笑)。普通の人が描く絵と私の絵。楽しんで描いているっていうことが同じだとすると、他の人よりしつこく楽しめるっていうのが、私の特徴であるのかもしれないと思いました。

こがしわ

内田さんは、ご自身のブログ※でも『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の感想を書いてくださっています。ここでご紹介させていただきます。

小熊

詩人の林木林さんのだじゃれが、機関銃のように途切れることなくばらまかれています。

じいさまはこれを追っかけるだけでへとへとになりましたが、好奇心と元気がいっぱいの子どもたちは、これが〈たまらない〉快感かもしれません。

絵は、こがしわかおりさん。「おれたち、ともだち!」シリーズの編集者でもあります。ご覧のように明るくかぁ~るい画風が目を悦ばせてくれます。また、これでもかとばらまかれているだじゃれを、ひとつひとつ描き分けてありますから、子どもたちには宝探しに似た悦びがあることでしょう。こがしわさん、よくぞここまで。お疲れ様でした。

詩人・絵詞作家・内田麟太郎オフィシャルブログ「広告する日記」

半分は、おべんちゃらですよ(笑)。こがしわさんは 「おれたち、ともだち!」シリーズでお世話になっていて、降矢ななさんと出会わせてくれた方なんですね。つまり、恩人なわけですよ。林木林さんの場合はちょっと怖いんでね。怯えながらほめたというか(笑)。

内田

林さんが怖いとは? 見た目は優しい雰囲気ですが(笑)。

小熊

いや、怖いっていうか、林さんは「詩のボクシング」で優勝したんだって話を聞いて、おおっ!というか。私は、講演など営業以外で詩の朗読というのをしたことがないんですよ。チャレンジとして詩を読む人に会ったのは初めてで、朗読の話を聞いているだけで、わー、怖いっていうのがありまして。

内田

「詩のボクシング」とは、リングの上で自作の詩を朗読して、どちらがより聴衆の心に届いたかを対戦形式で競うイベントですね。林木林さんは第4回の全国大会(2004年)で優勝されました。

小熊

林木林さんは、何度か私の絵本の作り方の講座に来られて。でも、生徒さんというより、何で私のところに来たんだろうっていうぐらい活躍されていたんですけど。
はっきりいって、私と絵本の作り方がぜんぜん違うわけですよ。逆に、こういう作り方もありなんだなあと思うと、楽になることがある。

内田

絵本の文章とは

林さんは、『ひだまり』や『あかり』(共に光村教育図書発行)など、童話に近い絵本のテキストも執筆されていますね。

小熊

私は長新太※さんと出会って、「絵本を童話の言葉で書くな」といわれ、それをずっと自分の中に入れて生きてきたわけだけど、そういう縛りがないとこで林さんは自由に書いている。それが逆にうらやましい。私もこれから林さんに見習って、もうちょっといい加減になりたいと思ってます(笑)。

内田

※長新太:1927年東京生まれ。漫画家・絵本作家。絵本の作品に「おしゃべりなたまごやき」(文藝春秋漫画賞)、『はるですよふくろうおばさん』(講談社出版文化賞)、 『キャベツくん』(絵本にっぽん賞大賞)など多数。絵本、漫画のほか、挿絵、装丁、イラストレーションエッセイなど幅広い分野で活躍。2005年没。

あの…いい加減なんでしょうか。

違うの?(笑)。

内田

一生懸命書いているつもりなんですけど……。前に内田さんのご著書に、「絵と文が一体となって画面が完成するから、中途半端な文を書くようにしている」というようなことが書いてあって。ちょっと言葉は違うかもしれないのですが。絵があって初めて成立する文を書くようにしているという内容で。まさに職人さんだ!と、大変感銘を受けました。ですが、私は往生際が悪くて、そこまで割り切れないなって思って。

往生際が悪いとは?

小熊

詩を書いている身としては、 美しい言葉を1つでも2つでも残そうとするんですよ。でも編集さんに、ちょっと長いから削りましょう、これ絵で表現してもらえればいいから取りましょうって、その美しい言葉がすぐ狙われて餌食になっちゃうんです。でも、どうにかして残したくてもがく。逆に、そこが潔い内田さんは、すごいなと思っている次第です。

長新太さんが亡くなられたあと、ちひろ美術館の長新太展で「絵本の絵は、絵だけで1人立ちしてはいけない。言葉と一緒になって、立ち上がるような絵を描かなければいけない」という長さんの言葉が展示されました。これを逆に言うと、「絵本の言葉は言葉だけで1人立ちしちゃいけない。絵と一緒になって絵本として立ち上がらなきゃいけない」となる。

内田

内田さんは、「絵本の文章は、文学であってはならない」と、ご自分を絵本の文章を書く、絵詞作家と名乗っていらっしゃいますね。

小熊

絵詞作家っていうのは、絵本の歴史の中で、ある1つの幅の中での動きだったと思うんですよ。日本で、「絵本」という言葉、「絵本」というものを確立しなきゃいかんなあっていう感じがあったので、自分から「絵詞作家」と名乗って、それを選択した。それもその時代が終わって、様々な形の絵本が出版されるようになって。でも、それはそれでいいんじゃないか。これはダメ、これはいいっていったって始まらないって気がしますね。いろんなタイプの人がいたらいいと思うんです。

内田

私は、内田さんの自由でおおらかな作風が、うらやましいなと思っていました。私は、そういう企画を書いても出版社に通してもらえないだろうなと。言葉をてんこもりにしてくださいという依頼が多いし。あ、それは言葉遊びの絵本に関してですよ。

林さんがね、面白いのは幅が広いこと。揺れ幅がね。日常からちょっと弾んだ状態に持っていったときにダジャレが浮かびますね。で、ちょっと心を静めた状態で『ひだまり』や『あかり』などを書かれると思うんです。大抵の人は片方だけだけど、すごくおもしろいと思いますね。

内田

レポート#2


作家プロフィール

はやしきりん
林木林

山口県生まれ。詩、絵本、童話、作詞などで幅広く活躍中。詩のボクシング全国大会優勝。『ひだまり』で産経児童出版文化賞産経新聞社賞受賞。詩集に『植星鉢(ぷらねたぷらんた)』、絵本に『おちゃわんかぞく』、『こもれび』、翻訳絵本に「ぜったい あけちゃダメッ! 」シリーズ、『でんごんでーす』、童話に『二番目の悪者』などがある。

    こがしわかおり

    1968年埼玉県生まれ。イラスト、デザインの分野で活躍中。装画・さし絵に『ちいさなおはなしやさんのおはなし』、『料理しなんしょ』、『ぼくたちはなく』、『魔女のレッスンはじめます』、『だれも知らない葉の下のこと』など多数。作・絵に『ツツミマスさんと3つのおくりもの』、『おうちずきん』などがある。

      うちだりんたろう
      内田麟太郎

      1941年福岡県生まれ。詩人、絵詞(えことば)作家。『さかさまライオン』で絵本にっぽん賞、『うそつきのつき』で小学館児童出版文化賞、『がたごとがたごと』で日本絵本賞、詩集『ぼくたちはなく』で三越左千夫少年詩賞を受賞。他に「おれたち、ともだち!」シリーズなどがある。

        取材協力
        Book House Café
        東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F
        「神保町」駅より徒歩1分
        神保町で唯一の新刊の子どもの本(絵本・児童書)専門店。約11,000冊を揃え、子ども連れに嬉しいカフェスペースやキッズスペースがある。ギャラリーでの展示やイベントも多く開催している。

        CREDIT

        クレジット

        執筆・編集
        『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の担当編集者。好きなものは、絵本・紙芝居・銭湯・目玉焼き。最近ジョギングに目覚め、10kmマラソンに参加することが夢に。
          撮影
          千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。
          撮影
          某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。