絵本作家・長田真作×俳優・松坂桃李『そらごとの月』『ほんとうの星』刊行記念対談

呉市で撮影された映画、『孤狼の血』

この記事は約5分で読めます by 常松心平

2016年のデビュー以来、30冊を超える絵本を世に送り出してきた長田真作さん。
このたび、新作絵本『そらごとの月』『ほんとうの星』が、303BOOKSより2冊同時刊行となります!
その発売を祝し、作者の長田さんと俳優の松坂桃李さんによるスペシャル対談が実現しました!
第三回目は、松坂さんの代表作のひとつであり、長田さんの地元・呉市で撮影された『孤狼の血』についてのお話です!

長田真作(ながたしんさく)
広島県出身。2016年に『あおいカエル』(文・石井裕也/リトル・モア)で絵本作家としてデビュー。『きみょうなこうしん』『みずがあった』『もうひとつのせかい』(以上、現代企画室)、『風のよりどころ』(国書刊行会)、『すてきなロウソク』(共和国)、『とじてひらいて』(高陵社書店)、『いっしょにいこうよ』(交通新聞社)など多数の作品を手がける。
松坂桃李(まつざかとおり)
1988年生まれ、神奈川県出身。2008年に男性ファッション誌の専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、モデルとしてデビュー。2009年、『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。それ以降、数々のドラマや映画に出演。映画『新聞記者』(2019年)で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。公開待機作として映画『あの頃。 』、 『空白』、 『耳をすませば』を控える。

骨太の名作! 『孤狼の血』

僕、桃李くんの活躍は特に映画で拝見してるんですけども。 重厚な作品に、たくさん出てるよね。

長田

ありがとうございます、とんでもない。

松坂

2年前ぐらいかな? 『孤狼の血※』という作品、あったじゃない?

長田
柚月裕子による長編小説を、白石和彌監督、役所広司主演で映画化。暴力団体対策法成立前である昭和63年を舞台に、広島県の架空都市・呉原で刑事、やくざ、そして女が、それぞれの正義と誇りを胸に、戦うさまを描いた。2018年公開。

『孤狼の血』ね。あれは真作くん、すっごい感想をくれたよね。

松坂

あの映画、舞台が広島県の呉市でしょ? 呉市って、僕の出身地だからね!
18年間過ごした街だから。

長田

そうだよね。

松坂

「まさかあの桃李くんが呉市に!?」って、びっくりしたよ。呉市にスポットが当たって嬉しかったよ。

長田

うんうん。

松坂

それで、たまたま用事もあったし、フラッと広島に帰省してね。街に『呉ポポロ』という、小さいけど立派な映画館があって、そこで観たのよ。

長田

『孤狼の血』で撮影をした映画館だよね?

松坂

そう。映画館には主役の役所広司さんの色紙もあったよ。

長田

うんうん。

松坂

桃李くんが演じた新米刑事日岡という男が、「あなた結局どっちよ?」と思わせるような、ちょっとしまらないところと、すごくがむしゃらなところと両方あるなあと。 若者特有の粗っぽさ、っていうのかな。

長田

はいはい。

松坂

そんな安定しない青年日岡くんの存在は大きかったね。作中を生きる人物としてとんでもないヤクザの方々と奮闘し、臆し、ゆらいでいる姿が、すごくリアリティがあった。日岡の内面の動きってのが、激しいアクションやドンパチに負けないくらい作品に映えていたなと思った。それにしても、すごく挑戦が多い役だったんじゃない?

長田

そうだね。東映さんも監督も、古き良き時代の任侠映画を受け継いだ作品にしたいという思いがあったしね。

松坂

感想を伝えてみたら、ななめ上をいく反応が……。

とっても良かったから、観終わったあとに「衝撃だった」と感想を送ったら、桃李くんからLINEで「絵で感想を送ってくれないか?」と。

長田

そうそう、それで描いてくれたんだよね。

松坂

いや、「この人は変わった事を言うな~」と思って。でも面白そうだなぁと思ったから描いてみた笑。

長田

笑。

松坂

桃李くんが喜んでくれたからよかったかなと思うけど。何かあの返答のしかたに、桃李くんの異常性みたいなものがしっかり現れていたよね笑。
ま、それは置いておいて。とにかくあの役、あの映画は素晴らしかったです。

長田

いやいや、ありがとうございます。あの絵、白石和彌監督にも「これなんです」って見せたら、すっごい喜んでたよ!

松坂
『孤狼の血』を鑑賞後、長田さんが松坂さんに贈った作品。

よかった! 絵ってビジュアルだし、伝わりやすいものがあるからかなあ。

長田

現場の空気に馴染むことで、役柄ができていく

それにしても、桃李くんってかなりいろいろな役を同時期にやったりすると思うんだけど、混乱ってしないの?

長田

うーん、混乱はしない……、しないね。

松坂

しない?

長田

しない。やっぱりね、現場で監督とか共演者の方の存在がすごく助けになるので。だから自分から「よいしょ」としなくても、その場の空気に馴染んでいくことで、役柄の方向へ連れて行ってくれるというのがあるかな。

松坂

どの作品でも、自分のテンションのもって行きかたというか……、そういうのもは同じなの?

長田

わりとフラットかもしれないね。現場においてのテンションって、本当に監督によって全然変わってくるから。

松坂

そうなんだ、なるほどなあ。

長田

監督中心にブワーッと現場の空気が広がっていく感じだから。だからなるべくそこへ入れるような心持ちというか、そういう体勢でいるというか。

松坂

自分をフラットな状態にキープしておくんだね。流れに身をまかせられるように。大切なことだろうけど、相当難しそうだな・・・。

長田

次回は、最終回。おふたりのルーツについて、語っていただきます。小さなころなりたかったもの、今も忘れないおじいさんからの言葉……などなどもりだくさんです!

構成:常松心平、中根会美、撮影:土屋貴章、水落直紀

幼少期の原風景。そして絵本を描き続ける理由

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編集部
303 BOOKS(株式会社オフィス303)代表取締役。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。