『そらのうえ うみのそこ』大復活プロジェクト#2

絵本作家・大橋慶子2

この記事は約5分で読めます by 常松心平

2013年にオフィス303企画制作で、TOブックスから発行された科学絵本『そらのうえ うみのそこ』。縦型の絵本で、上から読んでも下から読んでも読むことができる絵本です。しかし、あえなく絶版。そこで303 BOOKSでリメイクして、2020年に再発することにしました。このサイトで、その進捗を報告していきます。さて今回は、絵を担当した大橋慶子さんのインタビュー第2回。『そらのうえ うみのそこ』以降、作家として大活躍する、現在の活動についてうかがいました。

大橋慶子(おおはしけいこ)
岐阜県大垣市出身。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒業。イラストレーター、絵本作家として活動。東京都在住。主な絵本に『もりのなかのあなのなか』(福音館書店)、『にんじゃタクシー』(フレーベル館)、『そらのうえうみのそこ』など。挿絵に『ひとりでできるかな?はじめての家事』(全5巻、大月書店)、『月のひみつシリーズ』(全3巻、ほるぷ出版)など。
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科学絵本作家としての活動

今回は、まず最近のご著作について、うかがいたいです。

心平

2016年に福音館書店「かがくのともシリーズ」の『もりのなかのあなのなか』っていう本をつくりました。

大橋
『もりのなかのあなのなか』かがくのとも/福音館書店

これは「作・大橋慶子」ってなってますけど、絵のほかに原稿も大橋さんが執筆されたんですか?

心平

そうですね。冬の森には誰もいないと思ったら、すべての穴の中に生き物がいるっていうお話なんです。実際に軽井沢の森に行ってそこで自然を研究してる人に「こういう穴にはこういうのがいて」みたいなのを教わって執筆しました。

大橋

すごくいいコンセプトですよね。絵もすごく緻密で、王道の科学絵本って感じがしていいですね〜。

心平

わりと動物の絵を描くことが多くて、ちょっとゆるいタッチから緻密なものまでいろいろなスタイルで描くんですけど、この本の絵はいちばん細密で、私が関わった科学絵本のなかでいちばん硬派なつくりになってます。

大橋

ゆるいタッチっていうと、どういうのがあるんですか?

心平

フレーベル館の「おはなしえほん」っというシリーズの『かいじゅうのしいくいん』っていう本ですね。これは、あわしまマリンパークっていう静岡にある水族館の飼育員の方に取材して描いたものなんですけど、絵のタッチがゆるいというか、表現が絵本っぽくないんですよ。

大橋
かいじゅうの しいくいんキンダーおはなしえほん/フレーベル館

なるほど、カットを割ってマンガ風に表現されてますね。

心平

そうなんです。そういうのもけっこう好きで。

大橋

『そらのうえ うみのそこ』でも思ったんですけど、大橋さんの絵ってマンガっぽい使い方をしてもチープにならないですよね。マンガ的な見せ方すると、絵本的な質感が失われちゃうこともあるじゃないですか。でも、大橋さんの絵は、それがない。

心平

そうだと嬉しいです。レイモンド・ブリッグズ※とかコマ割って絵本を描いてるじゃないですか。あういうのが好きで、ゆくゆくはブリッグズみたいな絵本を描いてみたいですね。

大橋

※レイモンド・ブリッグズ= イギリスの国民的絵本作家。代表的な作品に『スノーマン』がある。

カタツムリで絵本作家デビュー

科学系の著作をうかがってきましたけど、科学系じゃないものでいうとどういう作品がありますか?

心平

たとえば、2017年に発売されたフレーベル館の『にんじゃタクシー』ですね。たまたま出会ったタクシーが忍者で、いろいろな忍術を使って目的地を目指すっていう話です。

大橋
『にんじゃタクシー』キンダーメルヘン/フレーベル館

おもしろそう! 男子にはたまらないですね。

心平

そうなんですよ、男の子人気がすごくて。まだなにも決まってないですけど、今第2弾をつくってます。

大橋

『にんじゃタクシー2』……、映画『タクシー2』みたいですね(笑)

心平

映画みたいにランエボ※は出てこないですけど(笑)

大橋

※ランエボ = 三菱自動車が過去に生産・販売していたスポーツカー、ランサーエボリューションの通称。

最近出されたのも物語絵本ですよね?

心平

そうですね。去年の8月に出た教育画劇の『きょだいなガチャガチャ』っていうのもあって、これも物語絵本ですね。主人公の男の子が山を登ったら、鬼がたくさんいてガチャガチャをして遊んでるんですけど、ガチャガチャの中身が雷とか雨とかで、鬼がガチャガチャを出すたびに自然現象が起きるっていう話です。

大橋
『きょだいなガチャガチャ』教育画劇

すごい! そんなおもしろいアイデアよく思いつきましたね。

心平

編集の方とアイデアを出し合ってって感じで。

大橋

物語の絵本の著作についてうかがいましたけど、絵本作家としての初めての仕事は科学系か物語系かどっちだったんですか?

心平

最初は科学系の絵本でしたね。昔、福音館書店の『おおきなポケット』っていう月刊誌があったんですよ。それの『みんな7さい!』っていう話を描かせてもらったのがたぶん最初かなと。

大橋

これか〜!

心平

一見するとほのぼのした感じなんですよ。でも、はじめにカタツムリが出てきて「ぼくのカラを見たら何歳か分かるよ」っていう、じつはすごくハードコアな科学絵本(笑) そのあともタイが出てきて「ウロコでわかるよ」、カモシカが出てきて「ツノでわかるよ」、最後にはクジラが出てきて「耳あかでわかるよ」っていう具合に。

大橋

でも、科学本っていっても科学だけじゃなくて物語もある感じですね。大橋さんの好みでいうと、科学系と物語系だったらどっちがお好きなんですか?

心平

どっちも好きですけど、得意なのは科学系ですね。生き物だったり建物だったり、なにかを観察しながら描くのが好きですね。反対に、0から空想的なものを描くのは得意じゃないです。最近は物語系の絵本も描かせていただくことが多いし、空想的なものも描けるようになりたいので、今は写実的なものから始めて空想的なものを描き出すっていう感じでやってます。

大橋

なるほど〜。次回は、大橋さんのルーツを探ってみましょう。現在につながる意外なお話が飛び出します!

心平

#3 絵本作家・大橋慶子3

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クレジット

聞き手
編集プロダクション 株式会社オフィス303の代表取締役 兼 303 BOOKSのプロジェクトリーダー。千葉県千葉市の埋めたて地出身。バイク雑誌、パズル雑誌を経て、児童書の編集者になる。本は読むものではなく、つくるものだと思っている。
撮影
千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。
構成
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。