『Japanese City Pop 100,Selected by Night Tempo』 Night Tempo インタビュー
303BOOKSから著書「Japanese City Pop 100, Selected by Night Tempo」を出した韓国のDJ/プロデューサーNight Tempoさん。3年ぶりとなる来日時のエピソードや、本の制作秘話、カメラやファッションへのこだわりなど、ここでしか聞けないエピソードの数々をお楽しみに!(このインタビューは2022年7月22日に行われました。)
Arrival in Japan
ー久しぶりの来日ですね。
2020年の2月に最後に来て、その後ずっと来れなかったので、3年ぶりだと思います。
ー今回日本にきて、最初に何を食べましたか?
初日の夜は、坦々麺を食べました。ホテルの近くに坦々麺が美味しいお店があるって聞いて、着いてから一度寝て、起きてから坦々麺を食べました。その後喫茶店にも行きました。
ー辛いものは好きですか?
いえ、逆に辛いものをあんまり食べないんですけど。でも辛いものを食べても、やはりみなさんの思う通り、韓国人だから全然大丈夫です。カレー10辛とかでも全然、これで10辛?っていう感じ。
ーええ、すごいですね!
辛さは痛みとか、ストレス発散のためではなくて、辛くても、辛くなくても楽しめます。舌が辛さに慣れてるから。だから、辛さよりは味です。
ー改めて、Night Tempoさんにとっても、日本のファンにとっても、待望の来日となりましたね。
今回来るのは結構大変でしたよ。やはり人って、何回も何回もキャンセルされたら、意地でも来たいって気持ちになるじゃないですか。去年の末にツアーが決まって、よし行こうっていうところでコロナが広がって、キャンセル。で今年の頭にリベンジしましょうってことになったけど、今年頭にも、またイベントが延期になってしまって。そしてやっと、日本に来ることができました。
ー本当に嬉しいですね。
人って3回トライして1回勝ったら勝ちっていう話あるじゃないですか。やっと勝ったっていう。コロナに勝った。
ー勝ちましたね。『ザ・昭和グルーヴ』の楽曲はもちろん、『Ladies In The City』の曲を生で聴けること、みんなめちゃめちゃ楽しみにしていたと思います。
すごいと思います。
ー2019年、2020年も日本にはNight Tempoさんのファンはたくさんいたと思うんですけど、この2年間で、Night Tempoさんの日本での人気がより大きくなった気がします。ご自身でなにか感じます?
逆に、日本に行けないから、意地でもお仕事をしました。人って鞭で叩かれたら、色んな試練があったらもっとこう…頑張ることができます。結構ぼくは、ワーカーホリックなタイプだから、休む期間でも、休むよりはもっと仕事しようっていう気持ちになって、もっと色々曲を作ったり。するとありがたく、お仕事の提案とか、色々いただいたりできました。
ーピンチをチャンスに変えたのですね。
はい。そこからまた希望っていうか、エナジーをもらって、もっと、自分らしくやろうと思ってやっていたら、どんどん良い話がやって来て。結構、運が良かったと思います。でも今まで生きてる間ずっと運が良かったので、ぼく自身、あんまり苦労したことはないです。
ーNight Tempoさんは日本の歌手の方とたくさんお仕事をされてきたと思うのですが、楽曲の打ち合わせやレコーディングのときも、ずっとオンラインで?
はい。僕は元々日本に引越そうと思っていたんですが、色々心配事があったり、あとネットがもうちょっとでも速くなることを待ちながら、今も引越しのタイミングをみています。で、方法がないから、お仕事はオンラインで。
ー大変でしたね。
でも逆に、オンラインで良かったこともあります。ほんとに大御所の方でも、目の前にいるわけではないから、逆に気持ちが楽でした。でもぼくは元々、人になにかを言うのに、迷いがあんまりないタイプです。
ーへえ!
言うのはタダっていうマインドの持ち主です。例えば、野宮真貴さんに自分の口からコラボしたいですって素直に話したら、ちょうど声をかけようとしていたっていう話も頂いたり。結局自分から話して、全部叶えました。今回このディスクガイド本も、こういう本を作りたいとお話したら、303BOOKSさんと作りましょうっていう話になったから。
Japanese City Pop 100,Selected by Night Tempo
ー書籍で紹介している100曲のリストは、Night Tempoさんがもともと作っていたものなんですよね。
リストは元々ありました。実はもうそういったリストは、非公開のものが何個かあります。その中で最初のリストが、この本で紹介した100曲です。元々はネットで皆さんに紹介しようと思っていたんですけど、時間がなくて。それで、303BOOKSさんとミーティングすることになって、本を作っている会社だから、その時に「じゃあこれ元々本とかガイドにしたかったから話してみよう」って思って話してみたら、やりましょうっていうことに。
ーありがとうございます。この本ができあがって、読んでみて、お気に入りのポイントはどこですか?
読みやすいところ(即答)。この本は専門家の目線じゃありません。今のシティポップの本って「シティポップのお手本」というような、本が多いですよね。「これはシティポップの基準」だと言われても、基準って誰が決めたの?っていうのもあるじゃないですか。でも、ここに紹介している曲は、自分が好きな曲を載せているだけなんです。
ー 「この本はシティポップをあなたに紹介する友だちです」というキャッチコピーも、素敵ですよね。
はい。幅広く、色んなアイドルも、ジャンルでわけずに、ただ自分が好きな曲を選んでいるだけ。これは上から目線じゃなくて、もう友達に曲を紹介してあげるっていうことなので、みなさんも読んで、学ぶんじゃなくて、知って自分で調べて聴くっていう。プレイリストもあるし。
ーお友達に、お気に入りの100曲を教えてくれたんですよね。
僕は誰かを教えてあげるようなレベルでもないし、専門家でもないから。ただ自分が好きな曲100曲を選んで、一緒に聞いて、オタクを増やしたいんです。
ーNight Tempoさんの登場で、日本のシティポップが変わっちゃったような気がします。良い意味です。
偏見があるかどうかだと思います。僕は外国人だから。多分僕も、韓国の音楽だったら多少偏見があったと思います。外国人からは、そういうルールとかってどうでもいいことだから。知らなかったって言っていいし。
ー(笑)
海外の人たちは、自由に音楽を楽しんで、結構幅広いジャンルにいる人たちと一緒に活動をするじゃないですか。そういうのもいいなと思っていて。せっかくDJとかもやっているし、ちょっと好きな曲を紹介しようかなって。
Camera
ーご自身でカセットのコレクションの写真を撮影していただきましたが、とても上手ですよね。
自分が出したい色味とか、自分が出したい画があっても、他の方にお願いしたら、体は楽だけど心が楽じゃない時って、あるじゃないですか。自分が撮影できるようになれば、撮影をした方の意見を無視しなくてもいいんじゃないって思って、勉強したら、ある程度真似はできるようになって、心が楽になったっていうのはあります。実はライブ映像も、自分で撮っています。
ーえ!ご自分で!?
はい。GoPro MAXは、買って一番良かったと思うアクションカメラです。360度映るやつで、水平を保ってくれるし、1時間半ぐらいもつので、ライブの時に助かります。でもテレビ番組に動画を提供したときに、画質があんまり良くないって言われて、今はSonyのa6600で撮ったものを提出しています。あれはバッテリー1回で、3時間ぐらい、4Kで撮れるんですよ。
ーすごいですね、ご自分でセットされているんだ。
先にセットをして、リモコンをポケットに入れといて、ライブ入るところでリモコンをピュッと押して、はい。
Vision
ーNight Tempoさんの「ザ・昭和グルーヴ」シリーズはこれからも続くと思うのですが、言える範囲でいいんですけど、一緒に仕事をしてみたい方はいらっしゃいますか?
この本に載ってる方全員とやりたいんですけどね。あとは、頑張ったら仕事できるんじゃないかなと、最近は思います。飯島真理さんともコラボできました。あとは、竹内まりやさんに、声をかけてみたいです。あと、中山美穂さんは、昭和グルーヴを出しましたが、コラボもしたいです。
ー「Ladies in the City」 の続編も、期待して良いのでしょうか。
はい。今進んでいるプロジェクトとして、矢川葵さんとのユニット「FANCYLABO」もありますし、いろいろな方に、楽曲提供とかもしたり。 「Ladies in the City」のコンセプトとは別に、地下アイドルを掘り出して、フィーチャリングという形で、若者向けのダンスアルバムとかも出そうかなと考えています。
ーアイドルのプロデュースも!
はい。みんな元気だから、ちょっと大変です。
ー(笑)
元々アイドルプロデュースをやりたかったので、勉強としてアイドル歌謡曲も聞いています。
Fashion
ー本日のファッションポイントはありますか?
はい。今日着ている服は、ワイシャツは新しいものですが、ズボンは当時のものです。日本の、おじいちゃんがやっているような古いテーラーショップをまわりながら、シャター街のマネキンが着ていたものを、買ったりもします。売れ残りとか色々出しているところがあったら、そこでも買ったりします。
ー掘り出し物を見つけるのが上手なんですね。
今回は夏だから持ってこなかったんですけど、ジャケットもあって、大きめの肩パッドが入っています。でもスボンは夏用なので涼しいです。この洋服がつくられた当時は、すでに日本の洋服を作る技術ってレベルが高かったと思います。むしろ今より、その時の方が高い。丁寧でいい生地で作ってたから今着ても長持ちする、すごく良いものだと思います。
ーそうなんですね。
それと、デザインもやはりかわいい。今のスーツってこう、着たらちょっとスリムになりすぎて、ちょっと…遊んでる人みたいに見えるじゃないですか。
ー(笑)
ラフな服は、着心地がいいです。このシャツはすごく乾くし、オーバーサイズ。ネクタイも当時のものです。多分あまり高いものではないと思うんですけどね、中古サイトで買いました。
ー ネクタイにもこだわりがあるのですね。
はい。ネクタイも何十本と買いました。ぼくもカセットのコレクションと一緒に、部屋の中に飾ったらかわいいと思って。その日の服装に合わせて、今日はこれ、今日はこれって選べる楽しみもあって、すごくいいです。
ー ライブ衣装へのこだわりもありますか?
はい。たとえば、フジロックの2daysともスーツを着てパフォーマンスをするのはあまりおもしろくないと思って、『ザ・昭和グルーヴ』セットをするときはジャンプしたりもするので、Tシャツに、下は運動服みたいな衣装にしました。
ー自分に似合う洋服を選ぶのが苦手な人に、アドバイスをいただけますか。
自分のコンセプトを一つ決めて、そこからは、服を選ぶことってあんまり難しくないと思います。自分が着たい服のコンセプトが決まっていたら、こういうものばかり着て、自分に一番似合うものを探して、そればかり着ても全然、キャラクターがあっていいとぼくは思いますよ。
ー音楽のスタイルにも通じているような気がしますね。
82、 83年頃から93、94年くらいまでの世界観の中で、多分これからもやっていきます。ちょっとおしゃれな曲を作るときは最新の音とかも使うと思うんですけど。基本は多分そんな感じじゃないかなと思います。
Japanese City Pop 100, selected by Night Tempo
Japanese City Pop 100, selected by Night Tempo (English Edition)
待望のメジャーオリジナルアルバムが発売! Night Tempoインタビュー 「シティポップの向こうへ描く世界」
2020年代に現れた80年代キュレーター Night Tempo 夜韻 インタビュー
『集中CONCENTRATION 』
写真提供:Night Tempo
Photos by Masanori Naruse