2021年4月より、女性の体型に合うメンズパターンのオーダースーツを提供するアパレルブランド「keuzes(クーゼス)」と、数々のオリジナルウェディングを手がける「HAKU」の共同展開による、日本初の当事者によるLGBTQ+ウェディングサービス「keuzes wedding by HAKU」がスタートしました。そこで、FtX(女性性として生まれるが性自認が未定であること)であり「クーゼス」を運営する田中史緒里さんと、「HAKU」のプロデューサーであり、本サービスでもプロデューサーを務める柴田奈々子さんに本サービスやLGBTQ+ウェディングについて語ってもらいました。
最終回である今回は、「keuzes wedding by HAKU」の強みや日本の法律について、LGBTQ+のカップルの方たちへのメッセージを聞いていきます。
日本初の当事者によるLGBTQ+ウェディングサービス開始! 「keuzes wedding by HAKU」田中史緒里×柴田奈々子インタビュー
やりたいこととできることが合致した『keuzes』と『HAKU』
強みは、出席者全員が愛情を受け取りあえること
最近では他でもLGBTQ+のウェディングサービスをやっていますが、「keuzes wedding by HAKU」から見てサービス内容に違和感を感じることってありますか?
接客の際にオープンスペースではなく個室に案内されたり、プランナーに特別扱いされ過ぎるというのは違和感を感じるところですね。
なるほど。
あとは、だいたいの式場のカメラマン、ビデオマン、司会者って、当日に初めて新郎新婦と会うことが多いんですよ。ただこの「keuzes wedding by HAKU」では、1ヶ月前の事前ミーティングで実際にカメラマンなどがふたりに会うことで、ふたりがどういう人なのか、どういうところに気をつけてほしいかを確認できるんです。例えばお父さんには理解してもらってるけど、お母さんにまだ理解できてもらってないというのも、知ってるのと知らないのでは当日語る言葉やおさえる写真も変わってくるかなと思うので、そこに関してはきちんとそのふたりの背景を知った上で結婚式が作れるっていうのはすごい心強いなと思っていて。
確かに、ふたりや家族と、カメラマンや司会者の温度差があるとすごく気まずいですもんね。
そうなんですよ。カメラマンの中でも、当日までにおふたりの生い立ちや馴れ初めなどの大切な情報がしっかりとインプットされておらず、時間が制限されている中で、ご希望通りのお写真を撮影できていなかったりすることもあるというお話をお伺いしたこともありますし、映像においては事前に何度もすり合わせを行い、おふたりが結婚式を迎える背景に沿って撮影方法や構成もきちんと組み込んで当日に臨んでいるので、そこが「keuzes wedding by HAKU」の強みかと思います。
その少しの気遣いで、ふたりの自然な表情なども引き出せそうですもんね。
はい。実際に、フォトウェディングの時に「もし結婚式ができたら柴田さんに担当してほしい」とか「同じカメラマンさんに撮ってほしい」という風に言っていただけているので、作り手のメンバーがちゃんとおふたりのことを理解した上で結婚式に携わっているというのはすごい大きなところかなと思います。
田中さんは何か違和感を感じることはありますか?
自分は他のLGBTQ+のウェディングを全然知らないんですよ。でも今回フォトウェディングをやってて思ったのは、ふたりがカメラマンや柴田さんや自分とか、スタッフの仕事ぶりにすごく感動してくれて。しかもそれをSNSとかで「〇〇さんありがとうございました」ってちゃんと発信してくれてたのを見た時は、やっぱり我々って思いが強いのかな、と思いましたね。
一緒になって作り上げるっていうのが、他のウェディングよりも強い気がしますね。ではkeuzesとHAKUが組んだからこその強みというのはどんなところだと思いますか?
結婚式当日って、当事者だけが気持ちよくできたらいいのかっていうとそうじゃなくて、今まで見守ってくれた家族とか、理解してくれる友達もふたりに愛情を伝えたい場だと思うんです。それを考えた時に、田中さんは当事者だからふたりの気持ちがわかるだろうし、私は今までそういう価値観に触れたことがなかったので、理解できなかった親御さんたちの気持ちがわかると思います。その両者が組むことで、ふたりと親御さん、友達などがお互いに愛情を受け取れたり送れたりするのが「keuzes wedding by HAKU」の良さかな、と思います。
柴田さんの考え方、とても素敵ですね。感動しちゃいました(拍手)
さすがです(拍手)
ありがとうございます(笑)
まずは、こういうサービスがあるって知ってほしい
では違和感より少しスケールを大きくして、今の日本の法律や制度での改善してほしい点はありますか?
自分自身が当事者として不満を抱えながら生きてるわけではないので、あまり法について考えたことはないんですけど。唯一言うなら、やっぱり同性婚が認められるようになるべきだというのは思ってますね。
海外だとすでに30カ国以上は同性婚やパートナーシップ制度が制定されてますよね。東京でも世田谷区と渋谷でパートナーシップ制度が認められましたね。
パートナーシップ制度もあった方がいいとは思いつつ、1回取って引っ越すと破棄になったりするので、それによって住むところを決めなきゃいけないっていうのもあったりして。今は結構LGBTQ+に対して都知事が頑張ってくれてますけど、でもそれって全国でそうあるべきで、少し偏りを感じるというか。
法律の話って、当事者の方だけじゃなくて日本に住む当事者以外の人の理解や配慮も必要になってくると思うんですが、LGBTQ+のテーマに関心をもっていない人に何かメッセージはありますか?
正直、すごい関心を持ってLGBTQ+の当事者に気を使ってくださいね、とは思ってないし、本当に普通だということを知ってもらえたら。でもその中でも、じゃあなにを言われたら気まずいんだろうとか、そこら辺は関心ない人でもなんとなく知ってくれるようになっていけたらいいのかなとは思うので。ウェディングとかも、LGBTQ+のサービスってあるんだなって知ってくれたらいいなと思いますね。
私はLGBTQ+の方たちを理解してるつもりだったんです。でも田中さんや、田中さんの紹介でたくさんの人に出会ってより深く知ることができ、また価値観が変わってきて。このサービスを始める前の私は、人を傷つけたくないとか、私の一言で嫌な気持ちにさせたらどうしようってビクビクしてたんですけど、いろいろな人に会ってからは、そもそもLGBTQ+っていう考え方ってそれぞれ個性があるんだなと思って、私自身も成長することができたんですよね。
何も知らないと身構えちゃうところはありますよね。
そうなんですよね。 LGBTQ+のことって、もしかしたら自分の大事な家族や友達、将来産む子供が、制度が整っていなかったり、社会が理解していないとつらい思いをするもしれないと考えれば、すごく身近に感じられるようになるはずなんですよね。そう考える人たちが増えたらいいなと思うし、日本の中でできるだけ早い段階からそういう価値観を身につけて子供が大人になってくれると、もっと住みやすくなるのかなって思います。
では最後に、LGBTQ+のカップルの方たちに「keuzes wedding by HAKU」のおふたりからメッセージをお願いします。
リアルに結婚を考えてるカップルって、結婚のために性別を変えることもあるんですよ。でも結婚式って、誓いの場だったり、ふたりの区切りであったり、そのカップルの想いで意味は変わってくると思うので、結婚を考えているカップルの人たちには、そういう風に考えていいものなんだよっていうのを伝えられたらなと思います。
私たちが思う結婚式は、おふたりの想いを伝える日です。ご両親に感謝を伝えるための日でも、プロポーズしたい日でもなんでもよくて、だから今までの結婚式っていう枠にとらわれずに、おふたりが共に生きていくことを誓える場を一緒に考えて、それをおふたりの結婚式にできたらいいなと思っています。なんでもお気軽にご相談ください。
田中さんと柴田さんになら、不安があっても安心して相談できそうですね! 今後の「keuzes wedding by HAKU」の展開にも目が離せません。田中さん、柴田さんありがとうございました!