日本初の当事者によるLGBTQ+ウェディングサービス開始! 「keuzes wedding by HAKU」田中史緒里×柴田奈々子インタビュー

やりたいこととできることが合致した『keuzes』と『HAKU』

この記事は約7分で読めます by 遠山彩里

2021年4月より、女性の体型に合うメンズパターンのオーダースーツを提供するアパレルブランド「keuzes(クーゼス)」と、数々のオリジナルウェディングを手がける「HAKU」の共同展開による、日本初の当事者によるLGBTQ+ウェディングサービス「keuzes wedding by HAKU」がスタートしました。そこで、FtX(女性性として生まれるが性自認が未定であること)であり「クーゼス」を運営する田中史緒里さんと、「HAKU」のプロデューサーであり、本サービスでもプロデューサーを務める柴田奈々子さんに本サービスやLGBTQ+ウェディングについて語ってもらいました。
今回は、「keuzes wedding by HAKU」が誕生したきっかけや、立ち上げた時の苦労した点をうかがいます。

田中 史緒里(たなか しおり)
1994年、福岡県北九州市生まれ。親の転勤で住む街を転々とし、茨城県の高校に入学。高校中退後18歳で上京。2018年3月にenter合同会社を設立し、2019年12月に、女性の体に合うメンズライクなスーツブランド「keuzes(クーゼス)」をスタート。2020年11月には合同会社から株式会社に変更。

柴田奈々子(しばた ななこ)
HAKUブランドマネージャー2015年より3年間、ゲストハウスウェディングにてプランナーとして合計70組以上の結婚式を担当し、多くの幸せな瞬間に立ち会う。「もっと自由に、もっとおふたりに寄り添ったオリジナルな結婚式をつくりたい」 という思いに突き動かされ、オリジナルウェディングHAKUを運営する株式会社スペサンに入社。提案から結婚式当日まで、完全オリジナルな結婚式を手がけ、2020年よりブランドマネージャーに就任。ゲストに想いを伝え、心から喜びあえる結婚式を提供するべく、結婚式プロデュースからブランディングまで幅広く手がけている。

きっかけは、知り合いだった両社の経営者

田中さんは2回目の303 BOOKSのインタビューということで、改めてよろしくお願いします。

遠山

よろしくお願いします。

田中

柴田さんは、オリジナルウェディングを手がけるHAKUのブランドマネージャー兼プロデューサーであり、「keuzes wedding by HAKU」でもプロデューサーをしているとのことでお越しいただきました。本日はよろしくお願いいたします。

遠山

よろしくお願いします

柴田

さっそくなんですけど、今回新しくスタートした「keuzes wedding by HAKU」がどのようなサービスなのかを教えていただけますか?

遠山

LGBTQ+の方向けのウエディングサービスなんですけれども、法で結婚が認められてない方に向けて、結婚式とかフォトウェディングを提供するサービスになります。

田中

フォトウェディングだけじゃなく、結婚式も全て行うんですか?

遠山

そうですね。当日のパーティーとかも全て含まれてます。

柴田

サービスを思いついたきっかけは何だったんですか?

遠山

思いついたというか、keuzesの経営者がHAKUを運営する株式会社スペサンの経営者と知り合いだったんです。そこで、keuzesがスペサンに「アニバーサリーをやりたい」と相談したところ「アニバーサリーもありだけど、HAKUっていうオリジナルウェディングのサービスでLGBTQ+の方の結婚式も手がけたことあるから、結婚式の方がいいんじゃない?」と提案があって、じゃあ一回両社で話してみようという流れで。

田中

それからすぐ動き出したんですか?

遠山

いや実は、最初に結婚式の提案をされた時は、個人的に「結婚」ってあまり考えたことがなくて、イメージができてなかったんです。でも、HAKUが行っている過去の取り組みやLGBTQ+の結婚式の映像を見て、結婚式は結婚した人が式をやるためだけのものではなくて、例えばプロポーズする場であったり、改めて愛を誓い合ったりする場でもいいということを知って、結婚式のイメージが大きく変わったんです。そこからはとんとん拍子で話が進んで、共同でサービスつくろうってなったのがきっかけです。

田中

なるほど。柴田さんも、LGBTQ+の方向けのウエディングの企画っていうのは頭にあったんですか?

遠山

私は元々式場に勤めてたんですけど、LGBTQ+の方がご来館された時って、本当に個別対応と言うか、腫れ物に触るみたいな感じになってしまって、ちょっと違和感があったんです。HAKUは決まった結婚式場を使うのではなく、すべてをお客さまの考えに合わせて、オリジナルウェデイングを作り上げます。今までも、実際にLGBTQ+の方のカップルをプロデュースしたこともありました。HAKUのオリジナルウェディングでは、場所も時間の使い方も選べるので、そこが様々な背景を持っているLGBTQ+の方のウェデイングにマッチするなと思いました。でも、実際に何を言われたら嫌なのか、どういうふうな対応をされたら気になるのかということに関する知識が足りなかったんです。でも、田中さんと出会って、一緒にウェデイングをつくりあげることで、結婚するふたりをストレスフリーにできると思いました。

柴田

HAKUとkeuzesで、ちょうどやりたいこととできることが合致したんですね。タイミングも良かったんですかね?

遠山

そうですね。コロナ禍で、結婚式の実施自体が落ち着いてしまった時期でしたので、改めて私たちが世の中に提供できる結婚式ってなんだろうねって話していたんです。もともとHAKUではオンラインウェディングもやっていたので、この世の中で結婚したい人で私たちがお役に立てる人を、この機会にもっと広げることができないのかと考え、その中にLGBTQ+の方たちも含まれていたんです。

柴田

0から作り上げる自由さと、大変さ

「keuzes wedding by HAKU」でも、今後オンラインウェディングを検討していく方針はあるんですか?

遠山

「keuzes wedding by HAKU」はあまり実施枠を設けてなくて。例えばお客様によって、わざわざ他の県から集まるのが難しいのであれば、HAKUのオンラインウェディングのノウハウを使った結婚式を行うのも、もちろん可能かなと思います。

柴田

HAKUは企画など含めて全て0から結婚式を作り上げるんですもんね。

遠山

そうですね。なので普通は1日で行う結婚式が多いと思うんですけれども、2泊3日に渡ってキャンプ場で結婚式を挙げるということもあります。コロナ禍だとなかなか家族を東京に呼ぶのが難しい方もいるので、ふたりの生まれた土地を巡って結婚式をしてみたりとか。結婚式場にしばられていないので、自由にできると思いますね。

柴田

LGBTQ+の方たちにも、もちろんですけど、結婚式としての形がめちゃめちゃ魅力的ですね。逆に「keuzes wedding by HAKU」を立ち上げるにあたって苦労した部分はありますか?

遠山

そもそもさまざまな発注をする際のアンケートフォームも男女で分かれてることが多いんです。私たちがどれだけお客さまの窓口を整えたとしても、衣装店やお花屋さん、引き出物って全部ご新郎様ご新婦様に分かれているので、そこに関してはアンケートフォームから田中さんに見てもらって、こういう聞かれ方をしたら嫌かなとかっていう部分を擦り合わせていきました。大変でもありましたが、より深く理解できました。

柴田

なるほど。もともと決められている型を一回崩していかなきゃいけないことが多かったんですね。

遠山

そうですね。私たちだけではなんともならなくて、もしかしたら男性がドレスを着たいかもしれないし、女性がタキシードを着たいかもしれないから、そういったものは提携している衣装店さんにも理解を深めてもらう必要があったと思います。

柴田

今後はドレスの展開も……?

衣装はすべてkeuzesが請け負っているわけじゃないんですね。

遠山

じゃないんですよね。あわよくばつくるよ、みたいな感じです。そこはHAKUのネットワークの中からでもよくて、規模に合わせてって感じですね。

田中

ドレスが大変だよね。作る?(笑)

柴田

やれ……ると思うんだよね、本気出したら(笑)

田中

LGBTQ+の方向けのウエディング衣装店もないですから、こちらの方でいくつかセレクトしたものをっていう感じなんですけど。できたらいいよね、ドレスもね。

柴田

まあ今後視野に入れていきます。

田中

楽しみにしてます(笑)次回は、実際の結婚式当日までの流れなど「keuzes wedding by HAKU」の詳しい内容を聞いていきます!

遠山
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フリーのライター兼プランナー。フードスタイリストやウイスキー検定の資格を持つ。趣味は料理やお酒。一人でどんなお店にでも入れるため、取材も積極的に行う28歳。人との繋がりとコミュニケーションを大切に、遊びも仕事も全力で取り組みます!
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。
撮影
某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。