おいしいものを、もうひとつ

豊島屋の鳩サブレーじゃないほう

この記事は約7分で読めます by 笠原桃華

こんにちは、笠原です。

2022年の大河ドラマ、『鎌倉殿の13人』。 ご覧になっていますか?
三谷幸喜さんが脚本を手がけていることも話題になっていましたね。

この大河ドラマを記念して、鶴岡八幡宮の境内では「大河ドラマ館」なるものも開館しており、舞台となっている鎌倉は今観光客で賑わっているようです。

そんな大河に沸く鎌倉ですが、海あり山ありの自然豊かな別荘地としても知られており、憧れの場所として発展してきました。

観光地といえば、名物を食べずにはいられません!
鎌倉の名物と言えば…?

おいしいものを、もうひとつ…。
今回は「豊島屋」です!

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おいしいものを、もうひとつ

レオニダスのチョコじゃないほう

豊島屋 概要

鳩サブレー」という商品知名度に対し、その製造元である豊島屋が実は和菓子屋であるということをご存知ない方も多いのではないでしょうか。

豊島屋は和菓子屋として鎌倉の地に明治27年に創業。
130年近い歴史を持つ老舗の和菓子屋なのです。

創業当時の主力商品は瓦煎餅だったそうですが、現在は「鳩サブレー」がメイン商品です。

「豊島屋の鳩サブレー」と言うべきなのか「鳩サブレーの豊島屋」と言うべきなのか悩んでしまうところ…。

そんな看板商品「鳩サブレー」ができたのは創業から約3年後のことでした。

当時の豊島屋の店主は、ある時近くに滞在していた外国人からある焼き菓子をもらい、その焼き菓子の味を気に入って舌だけを頼りに再現を試みたのだそう。

店主はまだその頃めずらしかったバターを用いて試作品を完成させます。
そして後日、たまたまその試作品を食べたある日本人船長が「これはフランスで食べたサブレーというお菓子に似ている!」と言ったことから、初めて自分の作ったものが「どうやらサブレーというお菓子らしいぞ」と知ることに。

この時耳にした“サブレー”という言葉の響き。
これが日本で言う“三郎“に似ていたことから親しみやすさを覚え、商品名に採用することとなりました。

鶴岡八幡宮の八の字もよく見ると鳩のデザインになっている。

さて、“鳩”はどこからきたのか…?

豊島屋は創業当初より鶴岡八幡宮の参道にお店を構えており、店主も八幡様を大事していました。

そこで、八幡様の掲額に描かれた“鳩”をいただき、最終的に今商品を「鳩サブレー」と名付けたそうです。

鶴岡八幡宮とは切っても切れない関係にある和菓子屋、それが豊島屋です。

鎌倉豊島屋 本店

鎌倉の観光では欠かせないスポットの一つ、豊島屋の本店。
鎌倉駅からは大体徒歩3分。

他に、鎌倉周辺にもう2店舗あります。
昔は和菓子と洋菓子を本店で同じように販売していたようですが、「洋の暦と和の暦は異なる」ということで店舗を分けて展開するようになったそうです。
それぞれ雰囲気が異なっているので、チェックしてみてくださいね。【詳細はこちら

和菓子をメインに扱う本店は真っ白な入り口がモダンでありながら、老舗和菓子屋らしさも醸し出しています。

入って正面側のショーケースには「鳩サブレー」、奥の方には和菓子がディスプレイされています。

さらに入って左手の一角にはグッズコーナーが!

豊島屋のグッズは「芸が細かい!」と好評で、メディアでもよく紹介されています。
【詳しくはこちら

グッズは文房具好きの社長がお一人で企画・実行されているそうで、出来上がるまで社員には内緒なのだとか…。

それから…。
このグッズコーナー、何か気が付きませんか…?

実は、上から見ると鳩サブレーの形になっているのです(笑)
芸の細かさはグッズにとどまらず、ディスプレイにまで!
なんとも遊び心に溢れていますね。

鳩をモチーフにしたグッズ。

ちなみに、「本店に来ていただきたい!」という社長の願いから、グッズは鎌倉店の限定販売だそうです。
写真のもの以外にもストラップからポーチまで幅広い商品ラインナップ。

ぜひ本店に足を運んでみてくださいね!

今回買ったもの…

やはり店内は豊島屋の看板商品である「鳩サブレー」が目立ちます。

サイズが豊富な「鳩サブレー」。

ポップな黄色いパッケージに柔和な鳩のフォルムが印象的なこのお菓子は、神奈川県指定銘菓にも認定されており、贈答品やお土産など幅広く利用されています。

しかし豊島屋は元々和菓子屋
実は、鳩サブレー以外の商品も豊富に用意されているのです。

「もののふ」、12枚入り1,296円(税込)。

例えば、こちらが冒頭でふれた「もののふ」。
鳩サブレーができる前に看板商品だったという瓦煎餅です。

創業当時の鎌倉は、武家屋敷が多かったことから武家の紋様が入った古瓦が多く出土したそうで、その瓦をかたどったお煎餅を販売して人気を博したのだそう。

武家屋敷の瓦って、こんなふうに模様が入っていたのですね…。

「鳩サブレー」の爆発的な人気によって全国に知られることとなった豊島屋ですが、お店のルーツである「鎌倉」の地を大切にしており、お菓子ひとつひとつにストーリーが感じられます。

和菓子も取り上げ出したらキリがなくなってしまうほど用意されています。
中には期間限定の商品も。

「こちらは大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にちなんだ商品。 

定番の「鳩サブレー」は数量限定で〈大河缶〉が販売されています。(現在この缶は販売を終了しています。)
他にも、北条氏の紋所である“みつうろこ”をかたどった落雁などがありました。

これ以外にも豊島屋が扱っている和菓子はたくさんあり、季節商品も合わせると年間約100種類にも及ぶのだとか!

そして実際私が色々と購入してみて気がついたのが、豊島屋の和菓子は逸品だらけだということ。

左から3番目の商品が「鎌倉五山」。

中でも今回私が紹介したいのは、通年で取り扱いのある「鎌倉五山」という商品。
これが美味しくて楽しくて、今年一番のめっけものだったと思っています。

「鳩サブレー」じゃないほう、食べてみた

「鎌倉五山」、1,944円(税込)。

昭和46年に誕生した「鎌倉五山」は、いんげん豆と水飴を主原料とした松露のようなお菓子。

鎌倉にある五寺の鐘をモチーフに、玄米茶、黒豆茶、煎茶、ほうじ茶、抹茶、五種の餡を使用しています。 各4個、合計20個入り。

3年ほど前までは柿、梅、黒糖、白味噌、黒胡麻だったそうですが、リニューアル後は全て「お茶」の味に。
さまざまなお茶の香りを楽しむことができる一箱へと生まれ変わりました。

箱に入っているとわかりにくいのですが、出して光に当ててみるとそれぞれのお茶の深みが見て取れます。

右下から時計回りに、玄米茶、黒豆茶、煎茶、抹茶、ほうじ茶のお味になっています。

中身はこんな感じ。 重ための餡です。
細かい茶葉が見えるものもありますね。

シャリッとする薄い糖衣に包まれており、中の餡は柔らかすぎず硬すぎないテクスチャ。
舌の上でゆっくり溶けるので、たっぷりお味と香りを楽しむことができますよ。

それぞれ食べてみた感想はこんな感じ…。

  • 玄米茶:この中では最も甘味が強く、それによって柔らかな香りが引き立つように感じられます。
  • 黒豆茶:豆を炒った香ばしさが感じられ、とってもコクがある。
  • 煎茶:少し苦みもありつつ青っぽい華のある香りが縦に広がり、そこに糖衣の甘さが加わってバランス◎。
  • 抹茶:密度の高い苦みが舌の上に広がっていくにつれてすっきりとクリアになっておもしろい。
  • ほうじ茶:噛むとスモーキーさが広がりますが、食べた後にふんわり甘い香りが残ります。なんとなくダンディ。

購入する前までは「名所とお茶を組み合わせた面白い商品だな〜」くらいに思っていたのですが、実際に食べてみると、どの味も一つ一つのお茶のいいところが大変よく引き出されている超実力派和菓子。

「日本茶好きの方にプレゼントしたらどんな感想を返してくれるだろうか」と、まだ誰にもあげてもいないにもかかわらず嬉しい気持ちになってしまいます(笑)

ちょっと贅沢に5種類のお茶を実際に淹れて、飲むお茶と「鎌倉五山」の味を揃えて食べてみるというのも良いかもしれませんね。

おわりに

豊島屋の「鳩サブレー」といえば「おみやげのご当地お菓子知名度ランキング」で関東首位に立ち、認知度73.2%という驚異的な数字を誇っています。

しかし「豊島屋の和菓子」はまだまだ知名度の低いものが多く、もどかしく感じています。

今回はまったり舌を楽しませてくれる「鎌倉五山」を特集しましたが、豊島屋の和菓子についてはまだまだ紹介したりません!

豊島屋の和菓子はほとんどが鎌倉にゆかりあるものであるがゆえ、ただの「美味しいもの」だけにとどまらず、そのお菓子の歴史的な背景を掘り下げるという楽しみまでついてきます。

2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ではそれぞれの登場人物の心の動きが綿密に描かれ、「ヒト」にスポットライトが当てられた「鎌倉」が描かれています。
さて次は豊島屋の和菓子で「名所」や「武士文化」といった角度から、美味しく「鎌倉」を捉えてみてはいかがでしょうか。

おいしいものを、もうひとつ。

【取材協力】

鎌倉豊島屋 本店

住所:神奈川県鎌倉市小町2-11-19
TEL:0467-25-0810
営業時間: 9時~19時
定休日: 水曜不定休(祝日は営業)

CREDIT

クレジット

執筆・編集
長野で野山を駆け回り、果物をもりもり食べ、育つ。お腹が空くと電池切れ。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。