おいしいものを、もうひとつ#6

八幡屋礒五郎の七味じゃないほう

この記事は約13分で読めます by 笠原桃華

こんにちは、笠原です。

オリンピック・パラリンピックも終え、すっかり風は秋色。肌寒くなってきましたね。

この夏の楽しみと言ったら読書と食べることくらいだったのですが、ひとつ嬉しかったことと言えば人生初の「お中元」をいただいたこと。「私にお中元が届く日が来るなんて…」などと感慨深く思いながら、気がつけば1人で1箱分のゼリーを平らげてしまったのでした。

贈答品といわれて思い浮かぶのは〈お菓子〉がやはり多いでしょうか。フルーツゼリーやちょっとリッチなジュース、お素麺やお酒など…色々と思い浮かびますが、私の地元長野県では「七味唐辛子」も有力候補として挙げられます。

それもそのはず、日本三大七味の一つが長野県にはあるのです。
しかも!その歴史長い老舗「七味屋」がなんとスパイスを使ったスイーツも開発しているとのこと。

おいしいものを、もうひとつ…。
今回は「根元 八幡屋礒五郎」です!

根元 八幡屋礒五郎 概要

七味唐辛子、みなさんきっと一度は目にしたことがありますよね。お蕎麦屋さんやうどん屋さんなどにはきっと置いてあるはず…。

七味唐辛子は日本独特の香辛料で、これを構成する七つの素材はどれも滋養高い生薬。そのルーツは漢方にあります。ただ七つの素材に厳密な定義はなく、お店ごとに採用する香辛料が異なっています。また、素材の産地、粒子の細かさ、製造方法などもそれぞれお店ごとに工夫があるようです。

そんな〈七味唐辛子〉ですが、いつの頃からか「三大七味」と呼ばれる三軒の暖簾を生みました。

東京・浅草【やげん堀】:二段階の辛味が合わせてあるのが特徴。

京都・清水【七味家本舗】:七つの香辛料の中で、香り高い香辛料の割合が多いのが特徴。

信州・善光寺【八幡屋礒五郎】:こちらは香りと辛味の調和に重きを置いた、バランス型。

今回取り上げるのは「根元 八幡屋礒五郎」

初代室賀勘右衛門が江戸中期の1736年に善光寺の堂庭(境内)で商いを始めて以来、その歴史は何と今年で285年!自社農場で世界中の唐辛子を育てることに始まり、既存の商品に安住しない数々の新商品の発表…。スパイスへの好奇心・情熱は今でも途絶えることなく続いています。

室賀家は歌舞伎のように襲名制をとっており、2020年より室賀豊社長が九代目室賀栄助を襲名したそうです。現在も七味唐辛子の門戸を広げるべく邁進されています。

根元 八幡屋礒五郎 本店

創建以来約1400年、広く深い信仰を得てきた〈信州 善光寺〉の表参道の一角に本店を構えているのが「根元 八幡屋礒五郎」。元々善光寺の境内で商っていた歴史がありますが、後に「善光寺門前(善光寺表参道)」に移転。

先に述べたように江戸中期からという折り紙付きの七味メゾンではありますが、全国的に有名となったのはもう少し後で、六年に一度の善光寺御開帳や1997年の新幹線開通、1998年の長野冬季オリンピック開催などによって、長野のおみやげとして「八幡屋礒五郎の七味唐辛子」は広く知られるところとなりました。

こちらが八幡屋礒五郎の本店。

現在は、県内に合計3店舗。こちらの写真は平成20年3月に立て替えられた新しい本店です。

写真左端にぎりぎり写っていますが、善光寺の入口のすぐそばにあります。この辺りは「竹風堂」や「長野 風月堂」と言った老舗和菓子屋さんや、長野に拠点を構え全国展開している「サンクゼール」、江戸時代から続く旅館にルーツを持つ「藤屋御本陳」などが軒先を連ね、それはもう錚々たる顔ぶれ。

そんな一等地にある店内の様子はこんな感じ。

入口から向かって左手。七味唐辛子はじめとする各種スパイスや贈答用セットがある。

アイコニックな「八幡屋礒五郎の七味唐辛子」は、全国のスーパーなどの小売店でも取り扱いがあるためご存知の方も多いかと思いますが、他にも色々あるんですよ。

「KONGEN SPICE」と呼ばれるミックスされていない単品スパイスの数々、また「ゆず七味」や「山椒七味」、「七味ガラム・マサラ」等、様々なスパイスミックスが並んでいます。さらに「七味炒め油」や、「七味ぽん酢」、「山椒みそ」といったスパイスを加えた各種調味料もあるので、料理好きには堪らないスポット。

商品はWEBサイトでも紹介されていますので、是非覗いてみてくださいね。

【八幡屋礒五郎 商品のご案内】

多くの商品はオンラインショップで購入することができますが、一部店舗限定の商品も存在しています本店を含めた直営3店舗の限定商品として特筆すべきは「カスタムブレンド」。好みに合わせてスパイスを調合してもらうことができます!

唐辛子一つとってもその種類は無数にあり、信州大学と共同開発した信八と呼ばれる品種をはじめ八幡屋礒五郎には8種類もの唐辛子が用意されています。

もちろん唐辛子だけではありません! 紫蘇、ゆず、花椒と言った和のスパイスから、八角、クミン、コリアンダー、パセリ…と言った世界各地の香辛料が、8種類の唐辛子に加えてさらに30種類も用意されています。その組み合わせは無限大、わがまま気ままに好みの辛さや風味を相談することができます。

さて、画角の関係で写真に収まりきらなかった店内の奥…。

入口向かって右手と店内奥。

ここには七味屋ならぬ商品が沢山並んでおります。

七味唐辛子の振り幅の広さに驚かされるのですが、なんとコスメまで! 壁側の陳列棚に置いてあるピンクのパッケージがコスメシリーズで、他にも本物そっくりの小さな七味唐辛子の缶がついたストラップなどのグッズが用意されています。

奥のカウンターはスイーツがズラリ。

「モノ」以外にも、スパイスを使った様々なスイーツが並んでいます。

一番右端にある冷凍ショーケースには様々なスパイスを使用したジェラート、そして真正面にあるのが七味唐辛子を使ったチョコレート、マカロン、琥珀糖…といったスイーツ。

ということで、今回の主役に行って参りましょう。

今回買ったもの…

八幡屋礒五郎では2008年から《Kongen Sweets》といって、スパイスを使用したスイーツを自社キッチンで開発・製造し、販売しています。ここで言う“Kongen”とは、「根元」と言う言葉からきており、今で言う「元祖、本家、大元」という意味になります。八幡屋礒五郎の七味唐辛子の袋に江戸時代より表記されていた言葉なのだそう。

スイーツも沢山あってどれを特集するか悩んでしまいました…。今回はコロナ禍で旅行が難しいことを考慮してオンラインで購入できる物、かつ「肌寒くなり濃厚なスイーツが恋しくなってきたな…」という私のキブンに適ったこちらのお菓子にいたしました!

上段がタブレットで下段がアソートボックス。

「SPICE CHOCOLATE」です。

タブレットが一枚648円(税込)で、各種ミニサイズで全種類入っているアソートボックスが1296円(税込)です。今回はほとんど全てのフレーバーが楽しめるアソートボックスを購入しました。

実はチョコだけじゃないんですよね(笑)
結局絞り込めなかった…。

ということで、「スパイス・マカロン」

マカロンのサンプル。ショップでは単品購入もでき、一個154円(税込)。

マカロンは常時8種類ありますが、それに加えて期間限定のものや季節のマカロンもあります。通年商品の中でもボックス入りの7種類はオンラインショップで購入できますが、限定商品は店舗限定。(今後、長野旅行の目的になりうるのではないでしょうか…。)

季節限定マカロンとアソートボックス。

マカロンのアソートボックスは、通年商品7種が入った1218円(税込)のボックスと、季節限定商品も合わさった10種類入り1734円(税込)のボックスがあります。今回はオンラインで購入できる7種入りのボックスを購入してきました。

マカロンとチョコレート…。

この二つにしたのはまた理由があるのですが、それについてはまた後ほど。

「七味唐辛子」じゃないほう、食べてみた(チョコ編)

まずは、「SPICE CHOCOLATE」 1296円(税込)

金の箔押しが施されている黒い紙箱。

開けてみるとカラフルに個包装されたチョコレートが並んでいます。

この手の色々な種類の詰め合わせはやはりキュンとしますね~。大きさは4×3×0.5cm で、証明写真くらいでしょうか。箱裏に「直射日光を避け、25℃以下で保管」と書いてありますので、口溶けが良いのでしょう。

中に入っている説明書きをみると、ベースに大まかな区切りがあるのがわかります。

・Bean to Bar(唐辛子、麻種、紫蘇)
・Bean to Bar Milk(生姜、山椒)
・その他(白胡麻、柚子)

まずBean to Bar製法でチョコレートを作っていること自体に驚きました。唐辛子の焙煎・粉砕技術が応用できるようで、Bean to Barチョコレートの開発につながったそうです2016年に販売を開始し、通常商品7種と丸山珈琲コラボ2種(軽井沢店限定)の合計9種がこれまでに開発されました。

Bean to Bar 
以下3種はビターチョコレートのBean to Bar。

唐辛子:チョコレート自体はカカオ65%くらいのビターチョコレートで、ジワ~っと辛さが広がってきます。喉にくる辛さですね。舌先で溶かすとかなり唐辛子が感じられ、やや頬が熱ってしまうほど。

麻種:麻種とかいて「おたね」と読むそうです。近年ヘルスコンシャスな人々の間で人気の「ヘンプシードオイル」の圧搾前の種子です。この種子自体、滅多に見かけませんよね。味は松の実に似ており、まったりした青い香りがします。麻種の顆粒が入っており、製造過程でそれが程よくチョコレートに混じったためか全体的にナッティな仕上がりで、チョコレート自体ビターでありながらその苦味を緩和しています。クセがあるフレーバーですが、松の実がお好きならきっと気に入るはず。チョコレートはニカラグア産。

紫蘇:こちらは酸味のあるベトナム産ビターチョコレートに“赤”紫蘇の粉末が練り込まれています。赤紫蘇ジュースなど、赤紫蘇加工品に馴染みがあるとわかると思うのですが、赤紫蘇はキュッとした爽やかな酸味がありますよね。同系統のチョコレートと合わせることで、酸味の深みが増して非常にユニーク。好みは分かれそうですが、お土産にするならハズせないなと思いました! チョコレートの中に目視できる紫蘇の粉末が入っており、チョコレートが口の中で無くなったあとにも赤紫蘇の香りが残ります。

Bean to Bar Milk
以下2種はミルクチョコレートのBean to Bar。両方ともトリニダード・トバゴ産チョコレートがベース。

生姜:生姜は様々なお菓子に使われていますよね。辛味と香りの二つの特徴がありますが、どう強弱をつけるか…と言うところ。こちらのチョコレートに関していえば、辛みはほぼ感じられない程度。ただ生姜の華やかさが感じられ、ミルクチョコレートと合わさって優しくてホッとするようなお味です。後味に酸味がのこり、思いのほかスッキリとしたミルクチョコレートです。

山椒:かじるとブワッ山椒香りが走り込んでくる感じ。ベースとなっているミルクチョコレートに酸味が感じられ、キレがよく、あま~いミルクチョコレートのソレとは異なる後味です。チョコレートが全て溶けてしまったころに痺れが追いかけてきます。山椒好きとしては、これはもう後日タブレット購入を決め込むだろうという一品です。

その他

柚子:まさかルビーチョコレートがこのシリーズ中にあるとは知らず、すごく感動しました。ルビーチョコレートは少し前から流行っていますよね。いちごチョコレートのように可愛らしいピンクの色味はルビーカカオ豆に由来する天然のお色で、フルーティーな酸味が特徴です。個人的にはルビーチョコレートはベリー系の酸味に近いかな?と思っており、これがゆずの柑橘の香りと合わさってキュートな印象。スパイスチョコと言う珍しさ抜きにして、チョコレート屋さんに売られていてもおかしくない美味しいさ。

白胡麻:甘いミルキーなコロンビア産のホワイトチョコの中に白胡麻が粒状で入っています。胡麻の入ったチョコレートは以前どこかで食べたことがあり味の見当はだいたいついていたのですが、「ごめんなさいナメてました!さすが七味屋!」と思わず拍手したくなるほどに鮮烈な白胡麻の香りが閉じ込められていました。まず胡麻自体の表皮がパリッとしているし、噛んだ時のプチプチ感たまらないし、弾けて漂う香ばしさにウットリ。

開発担当者の方にお話を伺ったところ、山椒など素材の特徴が強いものには、トリニダード・トバゴ産などの土臭いドシッとしたクセのあるチョコレートを合わせてあげると、相乗効果でスパイスがマイルドになるとのこと。お料理に七味をかける時のように、「元々の食べ物の美味しさを邪魔せず、引き立ててあげる」。そんな姿勢で《Kongen Sweets》も開発されているそうです。

全部食べてみてどれもユニークで驚かされましたが、特筆すべきはやはり「唐辛子」でしょうか。辛いんですよ、ほんとに! 一応伝えておくと、私はそこまで辛いものが苦手というわけではありません。エスニック料理は大好きですし、辛ラーメンも平気です。

八幡屋礒五郎の唐辛子チョコは、汗が噴き出すほどではないものの喉にカーッとくるので、ナメているとむせてしまうと思います(笑)

それも一興、どれも個性豊かで美味しくて楽しい時間でした!

「七味唐辛子」じゃないほう、食べてみた(マカロン編)

お次は、「スパイス・マカロン」 7種入り 1218円(税込)

カラフルな水玉模様の箱。マカロンは要冷蔵です。
一つ一つ個包装されており、背面にフレーバーと原材料の記載がある。大体直径4cmくらい。

並べるとやっぱりマカロンは可愛いですね~。テンションが上がります。色はやや和風カラーというのか、渋めで逆に新鮮な印象を受けました。

マカロンは一気に紹介していきますね。朱色の唐辛子から時計回りにいきます。

唐辛子:食べると唐辛子の風味はするものの、匂いはあまり感じられず「あれ、こんなもんか」と思っていると、後から喉にジンジン・チクチクとカプサイシンの攻撃がやってきます。辛いです!侮るなかれ!

麻種:荒めの粒子が残っていて、噛み締めるほどミルキーなナッツの濃厚なあじ。チョコレート同様、香りは松の実のよう。こっくりもったりとした脂質にバタークリームが調和してリッチな味わい。

生姜:辛味もなく、喉にも来ない。温かみのある生姜の香りがフワッと心地よく、万人ウケしそうですね。

黒胡麻:さすがゴマ。素朴で力強い香りがグワッと鼻腔を突き抜けて行きました。たまに遭遇するプチプチでさらに香ばしく感じられて美味しいです。

柚子:食べる前からゆずのいい香りがします。冬至の思い出があるからなのか、この柑橘の香りは優しいあったかさを感じます。

紫蘇:酸味のないストレートな赤紫蘇の香り。バタークリームのまろやかさも何故だかスッキリと感じられます。

山椒:マカロンなのに終始「爽やか」!後味に僅かながら山椒のピリリとしたシビ辛味が残ります。めちゃくちゃ美味しい!

断面はこんな感じ。ちょっとうまくカットできなかったのですけれど…。シェルの表皮は結構しっかりしているので歯触りはサックリしていますが、内側はそれと対照的にしっとり。

シェルの方にスパイスが練り込んであり、フィリングはどれも同じバタークリームとなっていました。マカロンのシェルも各製菓店によって硬め~柔らかめとスタイルが異なると思いますが、八幡屋礒五郎のマカロンはデリケートな印象。表皮のカリッとした感じはありながら、食べるとホロリと崩れてしまう感じで、軽やかなバタークリームが馴染んで美味。ごちそうさまでした!

おわりに

さて、先ほどこのチョコレートとマカロンの二つを今回選んだのには理由があると申しました。

チョコレート7種、マカロン7種。

勘の良い方ならもう既にお気づきかと思うのですが、「八幡屋礒五郎の七味唐辛子」に入っているスパイス7種類に対応しているんです。元からそれを意識して作ったというわけではなく、オリジナルブレンドに使用する数々のスパイスの中から試行錯誤を経て開発された、選ばれし7種類なのです。黒胡麻/白胡麻の違いや陳皮を柚子で代用している部分もあるのですが、その他は全て八幡屋礒五郎の七味唐辛子の成分です。

長野で育った私にとっては〈七味=八幡屋礒五郎〉だったこともあり、この世に七味唐辛子のバリエーションがあるなどということ自体これまで知りませんでした。ですが、今回この《Kongen Sweets》をいただいたことで、これからはいつ聞かれても間違いなく「八幡屋礒五郎の七味唐辛子」の中身が言えると思います(笑)

美味しいだけでなく、楽しい。久々にこんなお菓子を食べました。

特にアソートボックスはお土産にも良いですし、自分のお気に入りを見つけるのにもピッタリなのでオススメです。

おいしいものを、もうひとつ。

【取材協力】
根元 八幡屋礒五郎 本店

住所:長野県長野市大門町83
TEL:026-232-8277
営業時間:9:00〜18:30
定休日:なし
公式サイト:https://www.yawataya.co.jp/

CREDIT

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執筆・編集・撮影
長野で野山を駆け回り、果物をもりもり食べ、育つ。好奇心旺盛で、何でも「とりあえず…」と始めてしまうため、広く浅いタイプの多趣味。普段はフリーで翻訳などをしている。敬愛するのは松本隆、田辺聖子、ロアルド・ダール。お腹が空くと電池切れ。