作家・神戸万知、Kバレエ『海賊』千秋楽レポート!

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Art Novel『海賊 Le Corsaire』を執筆された、作家の神戸万知さん。神戸さんは熊川哲也さんがKバレエカンパニーを設立したころから、ずっと観劇されています。そんな神戸さんがKバレエ『海賊』の千秋楽を観劇し、興奮そのままにレポートをします!

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作家・神戸万知、Kバレエ『海賊』の世界にふたたび出会う

神戸万知(ごうどまち)
翻訳家・作家。ニューヨーク州立大学卒業、白百合女子大学大学院博士課程満期退学。訳書に「バレリーナ・ドリームズ」シリーズ、『バレエものがたり』『わたしたちが自由になるまえ』、著書に『世界一のパンダファミリー』などがある。

まずは、中村祥子さん、遅沢佑介さん、すばらしい公演をありがとうございました! 長い間ほんとうにおつかれさまでした。

まさにバレエの神さまが降臨した、忘れられない舞台になりました。帰宅してからも感動がおさまらず、なんと今もライブビューイングを購入して観てしまっています。

コロナ禍で公演が延期となり、再始動して無事に迎えられた楽日、さらに祥子さんと遅沢さんがプリンシパルとしてのラスト公演です。出演者も観客も並々ならぬ思いでこの日を迎えたのではないでしょうか。観客数の制限があったにもかかわらず、満員時に負けない拍手の嵐で、劇場が振動したかと思うほどでした。やはり舞台は、劇場という空間で、出演者と観客が一体となって作りあげるものだとあらためて感じました。

祥子さんは、2004年に「ローザンヌ・ガラ」で初めて観て以来、ずっと大ファンです。祥子さんのインタビューによると、熊川さんも同公演で祥子さんに注目し、Kバレエにゲストに招くようになったそうです。

Kバレエへの初登場は2005年の『白鳥の湖』でした。当時在籍されていたウイーン国立歌劇場で白鳥デビューし絶賛されていて、祥子さんの白鳥を観たいと心から願っていたので、すごく嬉しかったです。そして、オデットもオディールも、期待よりもはるかに素敵でした! 

それ以来、ずっと祥子さんがKバレエで踊ってくださったこと、熊川さんが祥子さんを大切に起用し、育ててくださったことには、ほんとうに感謝しかありません。

遅沢さんは、ダンスール・ノーブルにふさわしいラインと佇まいとマナーを備え、踊りは超一流で、しかもサポートも抜群という、日本ではいちばんお気に入りの王子さまです。ヴァルナ国際コンクールで1位を取りドイツで活躍されていたので、日本に戻ってKバレエに入団されて、当時は正直ちょっとおどろきましたが、理想の王子さまを定期的に観られることは大歓迎ですし祥子さんと組むことも多くて、この大好きなペアを観られるのはいつも幸せでした。

今日はその集大成でした。やっぱり素敵! やっぱりこのふたり大好き! その思いばかりあふれてきました。というわけで、ライブビューイングの期限が切れるまではもう少し余韻にひたりたいと見続けています。

そして、今回は嬉しいことに「世代交代」もしっかりと感じとれました。1月の『白鳥の湖』公演でプリンシパルに昇格した山本雅也さんは、熊川さんの魂を受け継いだ、さわやかで軽快なアリで、これから大注目です。

グルナーラの小林美奈さんは、祥子さんが怪我で降板された『白鳥の湖』で代役を踊り、お気に入りになったバレリーナ。アナニアシヴィリが『海賊』にゲスト出演したときもグルナーラを踊っていましたが、音の取り方やちょっとしたニュアンスがとても好みで、今後もますます応援したいです。

別の公演日にメドーラを踊った成田紗弥さん、毛利実沙子さんはオダリスクで、ふたりともラインは美しいし、わたし好みのかわいい系。これまでは祥子さんと遅沢さんの日を迷いなく選んでいたのですが、今後はどの日にしようか悩みそうです。17日夜にランケデムを踊った栗山廉さんも、もともと王子キャラなので注目していましたが、悪役もハマっていました。

さて、カーテンコール。熊川さんが登場するのは想定内だったのですが、おどろいたのは、終演アナウンスがあっても拍手が鳴り止まなかったことです。退場の案内が流れているのに、だれひとり帰ろうとせず、総立ちでひたすら拍手を送り、さらに2回カーテンコールがありました。20年以上バレエを観劇していますが、こんなこと初めてです。

かつては、熊川さんが踊る舞台を熊川さんのファンが観に来るという印象だったKバレエが、熊川さんが出演しなくても、こんなに愛され、熱狂を受けるバレエ団に成長したんだと感慨深かったです。(スミマセン、なんだか偉そうに。一応、熊川さんがロイヤルを退団されたときから見守ってきたので……。)

今回の公演は、ダンサーにとっても、バレエ団にとっても転換期になるのでしょうね。祥子さんと遅沢さんの新たな旅立ちを寂しいながらもお祝いしつつ(でも、またきっとKバレエでも踊ってくれますよね!)、若手のダンサーが切磋琢磨して看板スターに成長していくことを楽しみにしています。

2020年10月15日〜18日Kバレエカンパニー公演『海賊』

芸術監督:熊川哲也
会場:Bunkamura オーチャードホール
日時:この公演は終了しました。

Kバレエカンパニー オフィシャルサイト