『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』 刊行記念トークイベント

レポート#3

この記事は約8分で読めます by 小熊雅子

『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の刊行記念トークイベントのレポート#3では、詩にまつわるお話をご紹介します。お話をうかがったのは、絵本の文を担当された、林木林さん、絵を担当されたこがしわかおりさん、そして、ゲストは内田麟太郎さんです。
(上の写真は右から、内田麟太郎さん、こがしわかおりさん、林木林さん、小熊。)

作家プロフィール(ページ下部へ移動します。)

詩集の絵とは

こがしわさんは、内田さんの詩集『ぼくたちはなく』の挿絵を描かれていますね。

小熊

私は、フリーの編集者として内田さんにお会いした後、なんだかんだで絵を描き始めることになって。最初の作品は『白いおうむの森』という、安房直子さん※の童話集の挿絵でした。この本ができた時、お恥ずかしいとかいいながら、内田さんに送りつけて(笑)。読んでいただいたんです。そしたら、とても気に入ってくださって。

こがしわ

※安房直子:1943年、東京に生まれる。児童文学作家。かずかずの美しい物語を発表。『北風のわすれたハンカチ』(産経児童出版文化賞推薦)『遠い野ばらの村』(野間児童文芸賞)など受賞多数。1993年没。

本をお送りしたのが、きっかけになったわけですね。

小熊

画家の古賀春江※さんでしたっけ? その方の絵をなんとなく思い出すね、みたいなお葉書を内田さんからいただいて。ひとりで舞い上がっていたら、「2〜3年後に詩集を出すんだけど、絵も装丁も全部任せてやる」っていう、恐ろしくも嬉しい言葉をいただいて、ますます舞い上がってしまったという感じです。

こがしわ

※古賀春江:福岡県生まれ。大正から昭和初期に活躍し、日本ではじめてシュルレアリスム絵画を描いた画家。淡い色の織り成す水彩画を数多く遺した。

左:『ぼくたちはなく』(詩 内田麟太郎 絵 小柏 香/PHP研究所)、右:『白いおうむの森』(文 安房直子 絵 こがしわかおり/偕成社)

こがしわさんに、詩の絵をお願いしたいと思われたのは、『白いおうむの森』の絵が詩のイメージにあっていたからですか?

小熊

詩集の絵っていうのは、あまり詩に近すぎると困るんですね。例えば一番腹が立つのは、「雨の日」の詩があるとしますね。そこに、画家があじさい描いて、でんでんむし描くとするでしょう。絞め殺したくなるんですね。雨は降っているんだけど、そういう直接パッとくっつくものではなく、ちょっと離れてて、しかし尚且つ雨を感じさせてくれるという、詩の絵はそういう絵だなっていうのがあって。

内田

こがしわさんの絵は、見ているとイメージがどんどん広がる絵ですね。

小熊

話は飛ぶんですけど、この2人で作るマザーグースっていうのを見たいなあと。

内田

やりたい!

こがしわ

マザーグースの詩集には、北原白秋がありますね。これはかなり昔の。それから谷川俊太郎さんの『マザー・グースのうた』。堀内誠一さんの絵で。これは手作り感があるね。

内田

あまりまじまじと見たことはないんですけど・・・。

ダジャレーヌから、白秋も揺り動かしたマザーグースにいくっていうのがちょっと飛躍なんだけど。いつかこの2人のマザーグースを見たいなあ、2人ならできるんじゃないかな。だから、まあ頑張ってください。

内田

ありがとうございます。堀内誠一さんの絵のマザーグースは、すごいおススメの本で、今の子どもたちはあまり知らないかもしれないので、ぜひ見てほしいなあと思います。巻ごとに毎回違った描き方をされていますよね。内容にあわせて、変身するさまっていうのがすごく素敵でした。私、堀内誠一さんの絵を、もうほんとにたくさん模写しました。

こがしわ

機会があれば、ぜひやってみたいです。

物書きの業

詩集のタイトルというのは、どのようにつけるのですか? 最後につけることが多いのでしょうか。それともテーマとして最初につけるとか。

小熊

ケースバイケースで変わるんじゃないんですかね。内田さんは、自分で詩をセレクトして、自分でタイトルつける場合は、どうされていますか? 先にタイトルをつけることもありますか?

いや、私は後ですね。何か面白いタイトルないかなって考えて…例えば「なまこのぽんぽん」っていう言葉が出てくるよね。アホらしくていいなと。もう、中の詩とは一切関係ない。この『なまこのぽんぽん』っていう詩集の中に、なまこなんか出てこない。要するに、ただ面白ければいい、それだけ。

内田

そうなんですね。初めて知りました、私。

こがしわ

『なまこ饅頭』っていう詩集も出されてますよね。

ああ! そう、昔『なまこ饅頭』とか『あかるい黄粉餅』とか。20代で最初に出した詩集は『これでいいへら』。これね、植木等※がいっていた言葉からつけたんです。そのとき、今は若気の至りでこんなタイトルをつけているけど、年を取ると真面目にね、「橋」だとか重々しいタイトルにしたくなるかもしれないと。しかし、それをやらないで、死ぬまでアホなタイトルでやったらかっこいいなと思って。だから今度78歳で出す詩集は、やっぱり『なまこのぽんぽん』※。最期の詩集に『僕の生き方』とか『明日への希望』とかね、そういうタイトルは絶対につけない。

内田

※植木等:昭和を代表する日本のコメディアン、俳優。ハナ肇とクレージーキャッツのボーカリスト、無責任シリーズなどの喜劇映画で人気を博した。
『なまこのぽんぽん』:トークイベントの2か月後、2020年1月に銀の鈴社より刊行されました。 

林さんはどうですか?

小熊

『明日への希望』でいいですよ(笑)。

内田

『明日への希望』はちょっと……。でも、美しい言葉のほうがいいかもしれないですね。自分が出すのなら、好みとしては。いつか子ども向けの詩画集を出したいと思っているのですが。

そうなの? 私は詩集は6冊、次に出るので7冊目。もう歳っていう自覚があるので、1年に1冊出していきたいなと思ってるんだけど。

内田

意外と少ないですね。もっと多いかと。

こがしわ

始めたのが60歳目前だったから。55歳くらいの時、急に体力の衰えを感じて、あれ?このままいったら童話も書けなくなるなって。そういう老後って寂しいんじゃない? その時、まどさん※が浮かんできたんですね。うわーこのじいさん90歳過ぎて書いてる。詩は布団に寝てて動けなくなっても書けるじゃない、じゃあ少年詩を書くじいさまでいたいなあと思って手を挙げた。ただ途中で気がついたのですが、物書きって業があるんですよ。

内田

※まど・みちお:1909年山口県生まれ。詩人。日本人初の「国際アンデルセン賞作家賞」を受賞。数多くの詩を残し、「ぞうさん」「一ねんせいになったら」などの童謡で国民的な人気を博す。2014年没。

内田さんの物書きとしての業とは、どんなものでしょう?

林さんは、絵詞作家として絵本の文章を書く私を潔いとおっしゃったけどね、やっぱり物書きはね、絵本の言葉だけ書いていると、ちょっときつい時が確かにある。するとどうしても文章が長くなっていく。詩を書くことによって、自分は言葉に対するこれくらいの感性は持ってます、っていうのを見せていけば、絵本への道が拓くんじゃないの?っていう考え方が生まれましたね。絵本は絵本で思い切って書けるっていう。

内田

内田さんもきついと思われる時があるんですね。

詩を書いてなかったら、結構欲求不満が溜まるかなあって感じはある。長新太さんも1枚ものの絵と絵本と漫画をやったりして、上手く精神のバランスをとっておられたと思いますね。

内田

たしかに、長新太さんも絵本だけ描かれていたわけではないですね。

昔はよく言われました。『がたごと がたごと』※で手抜き作家ってね。西村繁男さんに細々とした絵を描かせて、自分は「がたごと がたごと」だけで印税をもらっているって。あれは非常に緻密に計算した絵本なんだけど、そこまではなかなか皆わからないから。言葉の仕事ができますよっていうのをチラチラッと見せていくには、詩集がいいかなっていうのがあって。だから、林さんの気持ちは本当にわかる。

内田

※『がたごと がたごと』(文:内田麟太郎 絵:西村繁男/童心社)
電車は「がたごと がたごと」と市街地をぬけて、「おくやま駅」へ。思いもしない展開に、ページをめくる楽しさいっぱいの絵本。第5回日本絵本賞受賞。

絵本の中に美しい言葉をなんとかして入れたくて、もがいて作っているんですけど。OKが出ないときもあって(笑)。なかなか難しいです。

『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』は、ダジャレを林木林が書いて、こがしわかおりは、それを寄せて絵を描く。それはそれで、いい作り方だと思いますよ。

内田

レポート#4


作家プロフィール

はやしきりん
林木林

山口県生まれ。詩、絵本、童話、作詞などで幅広く活躍中。詩のボクシング全国大会優勝。『ひだまり』で産経児童出版文化賞産経新聞社賞受賞。詩集に『植星鉢(ぷらねたぷらんた)』、絵本に『おちゃわんかぞく』、『こもれび』、翻訳絵本に「ぜったい あけちゃダメッ! 」シリーズ、『でんごんでーす』、童話に『二番目の悪者』などがある。

    こがしわかおり

    1968年埼玉県生まれ。イラスト、デザインの分野で活躍中。装画・さし絵に『ちいさなおはなしやさんのおはなし』、『料理しなんしょ』、『ぼくたちはなく』、『魔女のレッスンはじめます』、『だれも知らない葉の下のこと』など多数。作・絵に『ツツミマスさんと3つのおくりもの』、『おうちずきん』などがある。

      うちだりんたろう
      内田麟太郎

      1941年福岡県生まれ。詩人、絵詞(えことば)作家。『さかさまライオン』で絵本にっぽん賞、『うそつきのつき』で小学館児童出版文化賞、『がたごとがたごと』で日本絵本賞、詩集『ぼくたちはなく』で三越左千夫少年詩賞を受賞。他に「おれたち、ともだち!」シリーズなどがある。

        取材協力
        Book House Café
        東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル1F
        「神保町」駅より徒歩1分
        神保町で唯一の新刊の子どもの本(絵本・児童書)専門店。約11,000冊を揃え、子ども連れに嬉しいカフェスペースやキッズスペースがある。ギャラリーでの展示やイベントも多く開催している。

        CREDIT

        クレジット

        執筆・編集
        『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の担当編集者。好きなものは、絵本・紙芝居・銭湯・目玉焼き。最近ジョギングに目覚め、10kmマラソンに参加することが夢に。
          撮影
          千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。
          撮影
          某研究学園都市生まれ。音楽と東京ヤクルトスワローズが好き。最近は「ヴィブラフォンの入ったレアグルーヴ」というジャンルを集めて聴いている。