VSコロナ コロンビア編#16

3度目のロックダウン、そして街は再び動き出す。

この記事は約5分で読めます by ユースケ“丹波”ササジマ

4月27日から3度目のロックダウンが始まったコロンビア。一部の仕事が活動を再開することになったようです。コロナウイルスと戦う世界の様子を紹介する『VSコロナ コロンビア編』。最終回となる今回は、ロックダウン延長を決めたコロンビアの政策についてご紹介していきます。日本でも4月29日に緊急事態宣言の期限を延長する方針で調整することが発表されました。依然として厳しい状況の続くコロナ禍を乗り越えるために我々が大切にしなければならないものはなんなのでしょうか。笹島佑介が現地からお伝えします!

VSコロナ コロンビア編#13でちらっと紹介しましたが、コロンビアでは4月27日から第3回目のロックダウンが始まりました(コロンビア国内メディアでは「第2期ロックダウン」としているが、これは、第1回目のロックダウン延長を1回目のうちに含めるか2回目としてカウントするかの違いによるもの)。今回のロックダウンでは、停滞した経済活動を再活性化させるために、建設業と製造業が生産活動を再開させます。

ダプレ(スペイン語ではDapre。日本でいう内閣府的な行政機関)のディエゴ・モラーノ氏によると、建設業と製造業は比較的に感染の危険性が低く、コロンビア国内の雇用やGDP(国内総生産)において重要な役割を果たしている部門なので再開を決めたようです。EL COLOMBIANO(国内3番手のメデジンの新聞社)によると、建設業と製造業で活動を再開する具体的な業種は以下の7つのようです。

  • 建設、インフラ
  • 製造
  • 繊維
  • 木材加工
  • 製紙
  • 鉄鋼
  • 金属加工
  • 電化製品製造

27日をもって上記のすべての企業が活動を始めたわけではなく、これから徐々に活動再開するところが増えていくようで、最終的には400万人の労働者が仕事に復帰することができるといわれています。

仕事を再開する人が増え、街に人出が多くなると、感染拡大が心配されます。たとえば、公共交通機関における感染です。労働者の多くは公共交通機関で通勤しているので、公共交通機関で感染爆発が起こるかもしれません。そのため、電車やバスといった交通機関では乗客同士が密接しないために乗車率を上限35%に設定して運行しています

メデジン都市圏を走る鉄道「メトロ」では、ロックダウン以前と比べて乗客が85%も減っている。ちなみに、車両の床には適切な間隔の確保を促すためのシールが貼られている。
(出典 :
https://www.elcolombiano.com/antioquia/movilidad/metro-de-medellin-en-primer-dia-de-reactivacion-economica-en-colombia-PC12891680 )

密集した環境を避ける対策として、通勤する時間帯をずらす試みも行われています。今回の活動再開で50万の人出が見込まれているメデジンの都市圏では、当局と産業界が調整して労働時間帯を以下の3つに分けています。

  • 午前6時から午後2時
  • 午前8時から午後4時
  • 午前10時から午後6時

また、同じくメデジンでは、外出できる人を管理するために「Medellín me cuida empresa」というシステムが導入されます。このシステムは、ある機器で身分証を読み取るとその人が活動再開によって外出が許可されている人がどうかがわかるというもので、27日から活動再開する分野の企業や事業者はこのシステムに登録しなければいけません。

金額は明らかにされていませんが、このシステムに登録しないと罰金があるそうです。ちなみに、当初は29日から未登録企業へ罰金が課される予定でしたが、システム上の不備が相次いで起こり、登録期間が5月3日までに延長されて5月4日から罰金が課されるようです。

ほかにも、活動再開にあわせて、メデジンがあるアンティオキア県では県外に通じる主要な国道22箇所に検問所を設置して感染拡大防止のために管理を強化しています。

今回の部分的な活動再開について、ボゴタ市長などが感染拡大の危険性を理由に反対を表明していましたが、経済的に苦しい状況に置かれている人々がたくさん出ていることを考えると、決しておかしな判断ではないでしょう。コロンビア事業者年金/失業手当基金連合という団体の報告によると、新型コロナ感染拡大による経済活動の停滞で、730万人が仕事を失う危険と隣合わせになっているようです。その中には生産活動を再開する建設業、繊維、製紙などの分野で働く人も多くいるそうですから、やはり可能な範囲で経済を動かしていく必要性を感じさせられます。

技術は高いものの、医療サービスを提供する体制が十分に整っていないコロンビアでは感染爆発が起こるとすぐに医療崩壊してしまう可能性が高いです。そのため、感染拡大を確実に阻止しつつ経済を少しずつ動かしていく慎重さと大胆さが求められています。

コロンビアでも日本でも、感染拡大を防ぎつつ経済を動かしながら特効薬の開発や効果的な治療法の確立を待つというのがコロナ禍を乗り越える唯一の方法だと思われます。それを踏まえると、清潔な生活習慣、比較的しっかりした医療体制、巨大な経済、さらにアビガンまで備えた日本と、それら全てが無いコロンビアを比べると「やっぱり日本は大きな国だな」と改めて母国の地力を実感します。

ただ、どの国にもそれぞれ光と影があり、対応が遅い政府、政府批判や世論煽動にいそしむマスメディアなど日本の影の部分にも気付かされました。また、最近では「不況になると自殺者が多発するので過度な自粛はよくない」と言う人を見かけますが、自粛だなんだというより先に、不況になると自殺者が多発する傾向や毎年約2万人も自殺者がいる現状を変えるほうが重要だと思うのですが、もはやそれはそういうものとして放置している印象があります。

今回のような非常事態は、そうした光と影をより浮かび上がらせます。国のあり方だけの話ではありません。本連載で紹介した医療従事者や感染者に対する差別や家庭内暴力は、私たち人間の影の部分です。

いくらコロンビア人が陽気で親切といっても、いくら日本人が礼儀正しく真面目だといっても、差別や暴力をはたらく人がいます。ロックダウン中のコロンビアにいて、コロンビアや日本、他の国の無数のニュースを眺めながらコロナ禍を過ごして感じたことは、「国や文化、宗教が違えど、ウイルスという脅威に対する人間のすることは変わらない」ということでした。

もちろん、人間のすることは差別や暴力だけではありません。コロンビアには自分も貧しいのに配給された食糧をより貧しいご近所に譲る人がいます。日本には給付金を寄付する人がいます。辛い思いをしている人のために何かできないかと考える人が世界中にたくさんいます。こうした他人を思いやる心こそ人間の光の部分であり、コロナ禍を乗り越えるために不可欠なものでしょう。

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執筆・編集・撮影
株式会社オフィス303の元社員。黒豆で有名な兵庫県丹波篠山市出身。2017年に日本を飛び出して1年ほどラテンアメリカ諸国を行脚する。現在はライターやフリー翻訳者として働きながら超低空飛行で生き延びる。