コロナウイルスと戦う世界の様子を紹介する『VSコロナ コロンビア編』。今回は、コロンビアの性産業で働く人たちを取り上げます。日本でも性産業で働きながら子どもを育てている人たちには、休業に際しての助成金を支払わないと政府が一度表明し、大論争になりました。さて、ロックダウンしているコロンビアでは、性産業で働く人たちがどうやって生き抜いているのか、どうやって人々とつながり合っているのか。笹島佑介が現地からレポートします。
VSコロナ コロンビア編
175人でロックダウン
緊急事態宣言の下、国民が力を合わせて国難を乗り切ろうとしているさなか、【立民 高井議員「セクシーキャバクラ」利用で除籍処分】という、なんとも情けない見出しのニュースが日本で話題になっているとかいないとか。バカバカしすぎて怒る気もしませんが…。
さて、今回はコロンビアのセックスワーカー(性風俗産業で働く人々)が、ロックダウンによってどのような影響をうけているかを少し紹介したいと思います。
本題に入る前に少々雑談を。セクシーキャバクラとは客が接客係の身体を触れることができるお店のことですが、コロンビアにはセクシーキャバクラなるものはなく、キャバクラもありません。
コロンビアのセックスワーカーとは、基本的に性交を含めたサービスを提供して金銭を受け取る人々のことになるかと思います。労働形態はおもに以下の4つです。
- 店舗型(店舗に所属してサービスを提供する)
- デリバリー型(店舗に所属もしくは所属せず、指定された場所に訪問してサービスを提供する)
- ストリート型(店舗に所属せず街角に立って客を探し、近くにある日本のラブホテルのような施設でサービスを提供する)
- ネット型(ネット上の動画配信サイトで性的な動画を提供する)
編集部注:業態についてより詳しくユースケは書いてくれましたが、編集部判断で割愛しました。
さて、ロックダウンや外出自粛でもっとも影響を受けている業種の1つと言われているのが、この性風俗産業です。セックスワーカーがコロンビアに何人いるのか正確な統計は出ていませんが、ロックダウンで街から人が消えた今、その多くが仕事を失い路頭に迷っています。たくさん稼げるというイメージがあるかもしれませんが、そんな人は一握りです。
そもそも、コロンビアでセックスワーカーとして働く人の中にはベネズエラからやってきた経済的に困窮している移民の人もたくさんいて、家族を養うためにその日その日をどうにか食いつないでいるというケースが多いようです。
コロンビアでは成人の売買春は違法ではありませんが、セックスワーカーを保護する法律はありません。今回のロックダウンの場合でも当然休業補償もありません。性産業で働く人たちの労働組合「SINTRASEXCO」や地域の企業が協力して仕事が失くなり困窮した人たちに食糧の配給を行ったり、セックスワーカーのグループが支援を求めて首都ボゴタでデモをしたりしていますが、苦しい状況は続いているようです。
こうした中、セックスワーカーたちの収入を少しでも確保する試みも見られます。ボジャカという街にある売春宿では、宿で働く女性たちの収入が無くなることがないよう、なんと果物販売を始めました。地域の協力もあり、この思い切ったアイディアは功を奏しているようです。
一方では、多くの会社がテレワークに移行したように、アダルトライブ動画配信サービスなどで収入を得るネット型に移行したセックスワーカーたちもいるようです。世界でもっとも人気のアダルトライブ動画ストリーミングサイトの1つ、「CAM4」 というサイトによると、世界各地のロックダウンの影響によってこの1ヶ月でサイトユーザーが33%も増えたそうです。
1日あたり平均で1850万のユーザーが利用しているこのCAM4には、40,000人ほどのコロンビア人のカムガール(上記のようなサイトで性的な行為を配信して収入を得る女性セックスワーカー)がいるそうで、こうした需要の増加は彼女たちにとって好ましいでしょう。もちろん、全てのカムガールが稼げるわけではなく、1ヶ月に250ドル、およそコロンビアの最低賃金ほどしか得られない人もいるようです。
それもで、ロックダウンで働くことができない今のコロンビアの状況を見ると、セックスワーカーとして働く人にとって、カムガールいう道は生きるため家族を養うための大きな支えになりえるかもしれません。しかしながら、カムガールになれる人もあまりいないのが現状です。セックスワーカーとしてギリギリの暮らしをしている人は、スマートフォンもパソコンももっていません。厳しい現実です。
ところで、カムガールのÁngela Cianuro(アンヘラ シアヌロ)さんによると、以前はセクシーなダンスなど性的なものを配信していたが、最近では失業中だったり独り身で不安を感じている人の話を聞いてアドバイスをするといったことが多くなったといいます。べつのカムガールRebecca Stonee(レベッカ ストーン)さんは、最近は性的なものよりも単純に誰かと話したり笑ったりしてつながりたいというユーザーが多くなったように思う、と語っています。
アンヘラさんは、現在の状況におけるカムガールの存在を「心理カウンセラーみたいなもの」と言っており、「多くの人がコロナウイルスでなにかと心配になっているので、そういう人たちの支えになれば」と語っています。誰もが不安になってもおかしくないコロナ禍において、彼女たちのようなカムガールを精神的な支えとして必要としている人は少なくないかもしれません。
次回は、ロックダウン中の教育現場の動きについて紹介したいと思います。