「プロレス」に対するイメージは人それぞれ。もしかしたら、プロレスファンではない人は「乱暴」「恐い」「男くさい」・・・そんな風に思うかもしれない。しかし、現代の新日本プロレスは、そんなイメージをぶっこわすほど、ただただ「すごい」「かっこいい」があふれています。男性も女性もファミリーも、幅広い人気を獲得し、観客数が増加し続けている新日本プロレス。そのひみつを、新日本プロレスに所属する、ジュニアヘビー級のレジェンドである獣神サンダー・ライガー選手に聞きました。
プロレスのイメージを変えたひとりの漢「棚橋弘至」
はじめまして! 今日はよろしくお願いします。あの、インタビューに際して、はじめに言っておきたいことがあるんですが・・・
はじめまして! こちらこそ、よろしくお願いします。
(言っておきたいことって、いったいなんだろう・・・)
ライガーには「NGの質問」とかないからっ! どんな質問もOK!
だから今日はもうな〜んでも、聞いてください。
(よかった)ありがとうございます! では早速、僕はじつは、2018年の夏頃から新日本プロレスを観戦しはじめた、いわゆる新参ファンです。こうした新規のファンが増えている要因はなんでしょうか。
それを語るには、まず今と昔のレスラーの違いから話そうかな。僕はよく「昔の選手はプロレスラー、今の選手はアスリート」と言うんです。例えば、昔のレスラーって身長が高い、とにかく飯食う、体を分厚くする・・・それで正面からぶつかり合う感じの試合が多い。
「プロレスラー」と聞くと、昔ながらのイメージで「ごつごつした、いかつい人たち」と思う人も多いかもしれません。
そう、体でぶつかりあって勝負する世界。そこに猪木さんやドリー・ファンク・ジュニアさんとか、技術でも勝負できるレスラーが現れて、時代はどんどん変わっていきました。
新日本プロレスという団体を立ち上げた「燃える闘魂」アントニオ猪木さん※ですね。
※日本には数多くのプロレス団体がある。昭和から続いている代表的なプロレス団体には、ジャイアント馬場が立ち上げた「全日本プロレス」や、アントニオ猪木が立ち上げた「新日本プロレス」などがある。
猪木さんは「ストロング・スタイル」という「戦うことはどういうことだ? 怒りだよ。怒りを持たなきゃ戦えないだろう」ということを大切にしていました。猪木さんは眼力(がんりき)というか、眼力(めぢから)というか・・・すごいものがあったし。とにかく「戦う」「怒り」それを全身で表現していた。
まさに「闘魂」そのものですね・・・。
そして今・・・プロレスの世界を大きく変えたのは、僕は棚橋弘至選手だと思うんですね。
僕が新日本プロレスを観ようと思ったきっかけのひとつは、棚橋選手※でした。
棚橋選手は試合が終わった後に「愛してま〜す」って言うでしょ? あれ正直、僕は嫌だったんです。愛してますって何? 何だそれ? 試合と全然関係ないやん! って。僕の中で違和感もあったしね。
今ではそれを言わないでリングから帰ろうとしたら、棚橋コールが起こりますよね。「忘れてるよー!」って。
そう。それを言わないと、1日の興行が締まらなくなった。ファンのみなさんも、棚橋選手の「愛してま〜す」を望んでいるんですよ。それは、彼のパワーだよね。よくそこまでもっていったなと。昔から新日本プロレスを観てくれている人とか、昔の関係者とかレスラーは「あんなこと言って・・・」とか否定的に言うこともありました。
ライガーさんも「はじめは嫌だった」とおっしゃっていましたが、そういう声もあったんですね。
最初はブーイングさえ起こっていたんですよ。でも、あの一貫した意志の強さというか、プロレス界を変える、やり抜く、貫く、その気の強さ。それにみんなが惹かれたんじゃないですか。変化を嫌がる雰囲気があったり、一部のファンの人から反感を買ったりしても、それでも自分を信じて、ファンサービスを貫き通すことができた。それは本当にかっこいい生き様だなと思います。
実際にファンにも支持されて、観に来てくれているお客さんが増えていますしね。
おもしろくなきゃ、お客さんは二度と来ないでしょ。でも、おもしろかったら「また来るわー」って来てくれる。で、口コミでも広まって、どんどん増えていく。
そういう下地をつくったのは棚橋選手なんですね。
新日本プロレスは低迷期があって、団体が消え去っていたかもしれない。それをここまで持ってこられたのは、もちろん会社やレスラーみんなの努力もあります。でも、棚橋選手が新日本プロレスの「闘魂」という根底にある精神を残しつつ、「その上に流れているもの」を変えたから、今があるのかなと思います。
昔と変わったというと、今は女性のプロレスファンもとても多いですよね。
昔は女の子って会場にいても、ほんの一握りというか。いる? 女の子、この中で。っていうぐらいだったんですけどね。
今の後輩たちは、みんな体もバリバリだしね。ぶっちゃけ後楽園ホールなんて、6: 4とか、5: 5くらいで女性:男性って感じです。
家族連れとか、中学生くらいの子どもだけで観戦してる姿なんかも見かけますね。
中学高校くらいの子は、上村選手とか辻選手とか、ヤングライオンと呼ばれる若くて自分の年齢に近い選手に「いけー!」って言ってますね。あとは、棚橋選手は体バリバリだし、飯伏選手※とかも、女性ファンがキャッキャ言っていますよ。
女性ファンが本当に多いし、熱心だというのは感じますね!
私の妻もプロレスにはまっています。
女性ファンというのは1回観に来ておもしろかったら、口コミで広めたりとか、友だちを連れて来たりとかもしてくださるじゃないですか。プロレス観たけど、おもしろかったよーとか。あと会場に1人で来て、ファン同士で知り合って、連絡を取り合って、プロレスを観に来たりもしているんでしょうね。
プロレスを楽しむために、知識はいらない
ライガー選手は解説に呼ばれたとき、よく「すげー! かっけー!」と叫んでいますよね。
あらためて、プロレスラーってどういうところがかっこいいのでしょうか。
さっき話に出た棚橋選手なんかは観ていて色気も感じるし。100年に一人の逸材と言うだけあるなと思う。体もすごいし、かっけーし、色気があるし。
棚橋選手大好きですね!
そのほかにも、かっこいいと思う選手はいますか?
カズチカがかっこいいよね。
現IWGPチャンピオンのオカダ・カズチカ選手※ですね。
確かにオカダ選手の入場はテンション上がります。
棚橋選手はかっこいいんだけど、衣装の羽※がよく落ちてるのよ(笑) そっちに目がいっちゃうんですよ。いつか羽なくなるんじゃね? みたいな。
カズチカ選手はきらびやかで雰囲気あってさ、彼も色気あるよねー!
そうですね! 2019年の1.4東京ドームで観戦したときに、リングまですごく遠かったんですけど、それでもオカダ選手の入場はすごくかっこいいなって、印象に残ってます。
いいよね! キラキラ感があってねー。いや~、これじゃファンの座談会だね(笑)
今日はほとんどそういう、ちょっと居酒屋ぐらいのテンションで(笑)
ね! そのノリでいこうか! オッケーオッケー(笑)
ライガーさんはそういう純粋な目線でプロレスを楽しんでいるんですね。
体が全然違うのに真正面からぶつかっていく選手、棚橋選手みたいな生き様を感じる選手、みんなかっこいいよね。感じたままなんですよ。かっこいいとか、すげーとかって、どうして? って言われると、1番簡単な答えは「かっこいいから」「すげーから」そのままですよ(笑)
見たまま、すごいぞ、ということですね。
そう! だから僕の「解説」って言っていただいて、すごくうれしかったんですよ。
解説じゃないからね。感想だから!
(笑) でも、感想だからこそ、1番分かりやすく伝わってきますね。
僕も中学校から、ずっとプロレスが好きで観ていて。今でもファンだから。
だって考えてごらん? 1番いい席、1番真ん前の席でさ、プロレスが観られてるのよ。
解説席は確かに、もっともいい観戦席でもありますね。
そうなのよ。それで、ギャラまでいただいてさ、解説するからって。
お金もらってプロレスを観て、わーわー騒げるんだよ。最高だよね! 本当に。
最高ですね! まずは難しいことを考えないでいい、プロレスは本当に見たままを楽しめばいい、ということですね。
そういうことです!
次は「かっけー」「すげー」という流れで、プロレスの技についてとか、ライガーさんの個人的趣味とか、そういうところをぜひお訊きしたいなと思います!
ほいな!