
ミュージシャンと近い距離感で、彼らの演奏をその場で絵に表現する「ライブペインティング」。近藤さんの絵には、どうして音楽がそばにあるのか。そして、これからの活動についてもお話をうかがいました。ついに最終回です。

ライブペインティングパフォーマー・近藤康平「キャンバスに生まれた物語」
物語の始まり


1975年生まれ。2009年、友人のミュージシャンに誘われ、ライブペインティングパフォーマーとして活動を開始。樽木栄一郎 、あらきゆうこ、Schroeder-Headz(渡辺シュンスケ)、白井良明(ムーンライダーズ)など、共演アーティストは多数。また「絵描き」として個展を開き、CDのアートワークや舞台美術も多く手がけている。
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「絵」にこだわる理由

あらためてうかがいますが、近藤さんには、なぜライブペインティングというスタイルが合っているのでしょうか?

それは、僕の中で、音楽の存在が大きいからですね。僕はやっぱり音楽が大好きなんです。絵描きとして音楽に関われて、音によって自分の知らない世界が描けることがとても大切なんです。



なるほど。だとすると、絵だけではなく、音楽そのもので表現してみようとは思わないのですか?楽器を弾いてみるとか・・・。

それはあまり考えていないですね。

それはなぜでしょうか?

自分にとって、絵という表現がなによりも手っ取り早くて、わかりやすいと感じるからです。

なるほど。近藤さんにとっては、音や言葉よりも、絵がいちばん自然な表現なのですね。

はい。言葉は、とても具体的な表現なので、時には面倒に感じることがあります。絵はもう少し抽象的な表現です。見た人によって伝わる内容が違うんです。僕はそういった、受け手が想像で完成させるための余白が好きなのだと思います。



海外を目指して

今後の活動では、どういったことを考えていますか?

「絵描き」としては、個展を大切にしつつアートワークなどの絵の提供や画集の製作もしたいです。ライブペインティングでは、今自分がやっているユニット「calyboo」に力を入れつつ、あとは海外での活動ですね。



10月のライブでは、balai(巴賴)※さんという台湾のミュージシャンが出演されましたよね。balaiとは現地で知り合ったのですか?
※balai(巴賴):台湾原住民・パイワン族出身のシンガーソングライター。2016年、台湾のグラミー賞とも呼ばれる金曲獎にて、原住民歌手最優秀賞を受賞。近年では民族や国籍を超えたコラボレーションに取り組み、創作の可能性を広げる活動をしている。

はい。青山にある「月見ル君想フ」※というライブハウスの姉妹店が台湾にできてからすぐに知り合いだった店長にお願いして、ギタリストの木暮晋也※さんと一緒に2015年に台湾でのライブに出させてもらったんです。それが初めての台湾でのライブだったのですが、それからはほぼ毎年行くことになりました。balaiくんとは、今年の夏のツアーがきっかけで出会いました。
※月見ル君想フ:南青山にあるライブハウス。名前の通り、ステージの背景には大きな月モチーフがあり、ステージを綺麗に照らす。
※木暮晋也:ギタリスト。ヒックスヴィルのメンバーとして活動するなか、フィッシュマンズやオリジナル・ラヴなど、多くのアーティストのレコーディング、ライブに参加。豊富な知識や経験による、プロデュースやアレンジワークにも定評がある。

なるほど。では、これからは海外のミュージシャンとも積極的に共演したいと思っているのですね。

そうですね。現地のミュージシャンたちと一緒にやって、ライブペインティングの存在をもっと広めたいです。あとは、台湾や韓国やタイなどのアジア圏をぐるっと歩いて一周して、そこで見た風景をもとに本をつくってみたいとも思っています。あとは絵本をやりたいですね。




いいですね。近藤さんなら、すごい絵本がつくれそうです(笑)。

かつて絵本業界にいたこともあって、自分のなかで絵本へのハードルがとても高いんですけど(笑) でも、絵本が今一番やりたいことかもしれないです。

絵本をつくるときは、ぜひ303 BOOKSで出版させてください! 今日はありがとうございました!

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代田橋駅北口の路地にあるギャラリーカフェ。町工場を改装してつくられた店内は広く、ゆったりとした空間でアートが楽しめる。定期的に、さまざまなアーティストによる個展やLIVEイベントが開催される。