前回は、近藤さんのライブペインティングパフォーマーとしての始まりについて迫りました。第3回では、今までどのようなミュージシャンと共演し、どうやってライブペインティングで人々の心を掴んできたのか、詳しくうかがいたいと思います。
ライブペインティングパフォーマー・近藤康平「キャンバスに生まれた物語」
物語の始まり
多くの出会い
初ライブから始まって、今のようにライブペインティングアーティストとして知られるようになっていく転機はなんだったのでしょうか?
最初のころは、知り合いのミュージシャンと一緒にやるぐらいでした。あるとき、当時あったライブハウス「渋谷屋根裏」※の店長、赤木健さんが僕のスタイルを気に入ってくれて、いろんなミュージシャンを紹介してくれたんです。
※渋谷屋根裏:1975年創業した渋谷で最も古いライブハウス。ステージに立った有名なアーティストは、THE BLUE HEARTSやRCサクセションなど。一度、下北沢に店舗を移すも渋谷で再オープン。2013年に営業を休止した。
それから、さらに多くのミュージシャンと共演する機会が増えたのですね。
はい。白井良明※(ムーンライダーズ)さんや渡辺シュンスケ※(Schroeder-Headz)さんなど、尊敬する多くのミュージシャンと出会うことができました。
※白井良明:ギタリスト。ムーンライダーズのメンバーとして参加し、プロデューサーとして沢田研二や小泉今日子など、数多くのアーティストを手がける。自身のソロ活動も積極的に行っており、今まで多くの作品を発表している。
※渡辺シュンスケ:セッション・キーボーディスト。今までPUFFYや後藤まりこ、柴咲コウなど、数多くのアーティストのレコーディングやライブに参加。自身のポスト・ジャズ・プロジェクト「Schroeder-Headz」としても活動中。
そうして活動が活発になるなかで、ライブペインティングを生活の中心と考えるようになる出来事はありましたか?
本格的に活動を始めたのは2012年です。その頃は、出版社で絵本や児童書の編集をしていたんですが、前に共演して仲良くなった原田茶飯事さんと一緒にツアーを回ることになって。それだと仕事との両立も難しくて、もうそろそろ絵だけでやっていこうかなと考え始めました。
チャンスが増えそうな予感もあったんですね。
はい。その年に会社を辞めて、自分の作品づくりとライブペインティング中心の生活になりました。その後、シンガーソングライターの樽木栄一郎※くんと一緒に何度もツアーに出ました。年によっては150本ものライブペインティグをしましたね。
※樽木栄一郎:シンガーソングライター。ギター弾き語りスタイルで、カフェやギャラリーなど、さまざまな場所で数多くのライブを行う。2015年には奥田民生や岸田繁(くるり)とも共演を果たし、大きな反響を呼んだ。ドラマーとしても活動中。
150本も!? 最近ではどの方と共演することが多いですか?
最近だと、「sleepy.ab」※というバンドでボーカルをやっている成山剛くんが多いですね。彼との共演で、A4くらいの紙に絵を描く様子をプロジェクターに映すという、ライブペインティングの新たな手法が生まれたりたんですよ。
※sleepy.ab:札幌市で結成された3ピース・バンド。バンド名の接尾語「ab」(abstract)が意味する抽象的で曖昧な世界を、シンプルに美しいメロディや内に向かう歌詞、空間を飛び交うようなサウンドで表現する。
絵描きとしての活動
ライブペインティングだけではなく、「絵描き」(画家)としての活動はどうでしょうか?
「絵描き」としての活動では、個展を開くことを大切にしています。他には、CDのアートワークを担当させてもらうこともあります。また、舞台美術をしたこともあります。
「CHUBBY」でも毎年個展を開かれていますよね。
はい。「CHUBBY」の店主は、かつてロンドンのギャラリーに勤めていて。「ロンドンみたいに、帰り道に気軽に絵を買ってもらうような文化を日本でもつくりたい」という考えを共有しています。今年で、11年連続CHUBBYでの個展の開催となります。
なるほど。近藤さんの絵へのスタンスって、なんというか、全体的に自由で、誰にでも開かれている感じがしますもんね。
そうですね。アーティストになるにも、美大で勉強をしてギャラリーなどに所属する、っていうのが大体の道筋じゃないですか。僕は全くそうではなかったので、やり方を固定せずに絵の文化を広めたいんです。
僕には近藤さんの意図がすごく伝わってきました。次回が最終回となります。近藤さんにとって、どうして絵と音楽が大切なのか、今後の活動についてもうかがいました。お楽しみに。
三軒茶屋駅のいわゆる「三角地帯」と呼ばれるディープでユニークな店が立ち並ぶ裏路地にある。グランドピアノや音響設備があり、ライブやイベントが行われている。