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今回は、長田さんが絵本を描き始めたきっかけでもある、絵本作家・五味太郎さんとの出会いについて聞かせていただきました。それは突然で、運命のような出会いでした。
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ほんとうの長田真作、そらごとの長田真作
感覚と理屈、意識と無意識
絵本作家との出会い
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絵本作家の五味太郎※さんとは、深いお付き合いをされているんですよね。おふたりの出会いについてうかがってもいいですか?
※五味太郎(ごみ たろう):1945年生まれ。絵本作家。『きんぎょが にげた』(福音館書店)、『たべたの だあれ』(文化出版局)、『ことわざ絵本』(岩崎書店)など、現在までに400冊以上の絵本を手がける。
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上京して学童保育で働いていたころ、あるとき五味さんの書かれた本を読んで、衝撃を受けたんです。それまで僕のなかでなんとなく納得いっていなかった、あるいは消化しきれなかったことがものすごく腑に落ちるように書かれていたので。僕もそのとき20歳を過ぎたころで、思い悩んでたんでしょうね。
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なんていう作品だったんですか?
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『とりあえず、絵本について』という。五味さんが若い頃に書いたエッセイ集なんですけど、それを読んで「何だこの人!?」と思って。何というか、僕と考え方が似てるなあ、と。
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それまで五味さんのことはまったく知らなかったんですか?
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知らなかったです。僕はもともと特別に絵本が好きだったわけではないので。出会いはとにかくそのエッセイだったんですよ。読んだとき、感覚と理屈の両方からこう、ショックを受けた感じ。これがまた“出会い”ってやつですね。めったにくることはない、かなりはっきりとした感じですね。僕はそれを逃したくなかった。それですぐ五味さんに会いたくなったのですよ。
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会いに行くといっても、どうやって連絡先を知ったんですか?
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たしか五味さんのWEBサイトを見て、まず電話して。思い返すと礼儀もわきまえてなかったんですけど、いきなり「長田と申しますが、会ってお話を聞かせていただけませんか」ってお願いしたんです。訳わかんないですね(笑)その後、メールも送りましたね。そうしたら、なんと数日後に会ってくださることになって。
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長田さんの行動力を、五味さんが受け入れてくださったんですね。
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行ってみたら、絵本がすごくいっぱいあるかっこいいアトリエに、颯爽と五味さんが現れた。えーとね、たしか…最初、僕は一応新品の大学ノートを持っていったんですよ。で、ペンと一緒に机に置いて…。でも五味さんはすぐさま、「お前それ書く気ないだろ」と言ってきて…。僕も「いやあ、ないんですよ」って…。いやあ、見抜かれてましたねえ…(笑)そんな感じで、和やかな雰囲気で話させてもらいました。
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どんなことをお喋りされたんですか?
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本当に長い時間話したんですけど、哲学、経済、教育、野球…森羅万象さまざま、そして絵本の魅力を語ってくれたんです。「こんなに飽きっぽい俺が何十年も続けている、絵本はすごいものなんだ」って。それまで僕は、絵本の魅力なんてまったく知らなかった。いや、むしろ気がついていなかったのかも。絵本ってのは子どもが読むものだと思ってたけど、全然違うってそのときにはっきりわかりました。今となっても最大の出会いですね。一気に僕のベクトルが絵本に向かったんです。
「絵本をやるんだ」と決めた
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五味さんとの出会いがきっかけで、絵本を描き始めたんですね。でも絵本を描こうと思っても、いきなり始めるのは難しかったんじゃないですか?
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今思えばね、心が「できるかなあ」じゃなくて、「やるんだ」となってて。五味さんにお会いした帰りに2、3冊、絵本をいただいて、教科書ってわけじゃないですけど、話の展開や本のつくり、装丁の具合などはそれで学びました。
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それ以前は、作品を作ったことはまったくなかったんですか?
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なにもしてないです。絵本が最初ですね。
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最初は作品を作って、いろんな会社に持ち込みに行ったんですか?
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そうです。「見てください!」って持ち込みに行きました。そうしたら、わりと早い時点で出版が決まって。
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そして、学童で働きながら『あおいカエル』(リトル・モア)でデビューされたんですよね。
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はい。『あおいカエル』は僕が描いた絵に、映画監督の石井裕也さんが文をつけたんです。デビューしてからも、しばらくはフリーランスでいろいろやりました。五味さんのお知り合いで家具デザイナーの方がいて、その家具の荷降ろしを手伝ったり。途切れることなくいろいろやってきて、今がある感じですね。
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ほんとうの長田真作、そらごとの長田真作
長田真作の未来
CREDIT
クレジット
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