いやー、あの時はほんとにやばかったね。急だったからキャリーケース一つで東京に出て来たんだけど、契約した家の入居日が二日先で、満喫から通勤するっていうスタート。

無事入居できても、当時は本当にお金がなかったから電気もガスも通ってなくて、家に何もなかったから段ボールかけて寝たもん（笑）

しかも大学の授業もあったから、週一で大阪に帰ってて、行き来する中で荷物をちょこちょこ東京に持ってきてた。

無一文だったから、当時持ってたゲームや漫画類を全部売って、そのお金で一ヶ月耐えるみたいな生活してたよ。ちなみに、6000円くらいだったかな。

会社の撮影に行くとご飯がもらえるからそれでしのいだり、社員の人たちのお土産のクッキーを漁ったりしてた（笑）

インターン生だった最初の3、4ヶ月はロケーション手配したり、現場のディレクターの手伝いだったりっていう手配系の仕事をして、正社員になった時に企業VP（ビデオパッケージ）のディレクターをやり始めたね。

最初はほとんど小さめの案件をやってたんだけど、ある時大手自動車メーカーのコンペがあって、その時にVコンを作って提案して。

ビデオコンテのこと。本番の役者じゃない人を代わりに立てて、一旦映像を仮で作るイメージ映像って感じかな。

そうそう。で、カット割りとか自分の好きなようにやってみたそのVコンが社内でも評判よくて、結果、見事コンペ勝ったんだよね。

まさかの一年目で大手自動車メーカーのディレクターになることができたんだけど、そこからめちゃしんどくて。

映像はなんとなくセンスで作れたけど、クライアントとのやりとりとかが全然わかんなかったから、いろんなことを手配したりするのが大変だったね。

結局その案件は半年くらいかけて10月に無事終わって、そしたら周りからも「こいつできるやつじゃん」っていう感じになっていって。だんだん会社に認めてもらっていってるのは楽しかったよね。

先輩とかともだんだん仲良くなっていったから、もともとフリーになろうと思ってたんだけど、ワンちゃんこのまま会社にいるのもいいと思ったんだよね。

うん。やっぱり、大学生の時に撮ってた自主制作映画とか、そういう自分の好きな映像を撮りたいっていうのがあったから。

先輩と仲良くなったっていうのもあったけど、年末から面白そうなコンペ案件があって、結構手応えある感じの企画を出したんだよね。そしたらそれが通って。

だからそれを実績にしてから辞めようと思ってたんだけど、その時会社の仲間に「自主制作映画を撮ろう」って誘われて。

もちろん参加したよ。会社の合間を縫って打ち合わせとかしてたんだけど、年末のコンペ案件もあったから、なかなかスケジュールが詰まってきて。
そしたらその時に、たまたまインフルになったんだよね。

いや、インフルエンザになったら強制的に一週間休みになるでしょ？　だから、今だ！と思って。

うん。

さすがにカメラマンとかに怒られたけど、もう今しかないと思って自主制撮って、編集して映画祭に出して。会社は会社で年末のコンペ案件を無事納品して、全部綺麗に終えてから、会社に辞めますって伝えた。

ないない。さてどうしようって思って、そこからいろんな人に「フリーになりました」みたいなメールを送りまくってた。

やばかったよね、よく考えたら。でも、辞めた翌日に映画祭に出した自主制が入選したから、それでちょっと自分のこと測ってみようかなと思って。

そうそう。なにか賞が取れるのか、そのまま終わってなんのツテもできないのか。でもせっかく何か変わりそうなタイミングだから、もうちょっと様子みようと思って。

辞めた翌月に最後の給与が振り込まれるから、最低一ヶ月は猶予があると思って、先輩の手伝いで編集とかをやったりして、最低20万稼ぐことを目標にしてたよ。足りなかったら、罰としてバイトもしてた。

缶を補充するバイト。日雇いだったから、足りなさそうと思った時に入れてた。

そう。そしたらありがたいことに、二ヶ月目に差し掛かったくらいで大きめの編集案件の話があったのと、さらにそのタイミングで自主制の作品が「ミュージックShort部門クリエイティブアワード」っていう賞も撮ったから、これはこのままフリーランスでいったほうがいいなと思って。