音楽家・良原リエさんの「食べられる庭」インタビュー#1

食べられる庭インタビュー

この記事は約5分で読めます by 宗我部香

良原リエさんは、音楽家としてアコーディオンやトイ楽器を操り、またある時は料理を作り、ある時は裁縫をし、お弁当を作り、それぞれの分野で著書を書かれています。そして満を持して今年4月に出版したのが『食べられる庭図鑑』(アノニマスタジオ刊)です。良原さんの庭への愛は、ずいぶん前から庭好きの間で知られていましたが、いよいよ本となったのです。興味の幅が広くしかも深度が深い良原さん。植物好きにはたまらない期待通りの充実の一冊です。本を携えて、新緑の良原家のお庭に伺いました(取材時4月26日)。

良原リエ(よしはらりえ)
音楽家、という肩書きだけには収まらず、「食べられる庭図鑑」以外にも「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)「音楽家の台所」(コノハナブックス)と著書多数。良原さんの奏でる美しいアコーディオンの音色は必聴です。Eテレ『いないいないばあっ! 』では音楽を担当、映画『アーヤと魔女』でアコーディオンを演奏しています。
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私は「音楽家の台所」の愛読者ですが、読み応えがありますよね。良原さんの本は内容が濃いイメージがあります。

宗我部

嬉しいです。濃くしかできなくて(笑)。あ、でもお弁当の本はお母さんに向けて作ったので「そんなにがんばらなくていいよ」というメッセージを込めて、わざと情報を少な目にしたけど、自分自身はまだまだ入れたかったですね。

良原

「食べられる庭図鑑」はかなり充実しているように思えます。

宗我部

これでもかなり削っています。本当は書きたいことがまだまだいっぱいあったから。「雑草」だけでも、ものすごい量を書けますね。

良原

雑草は雑草ではないと以前に良原さんがおっしゃっていました。「雑草に優しく」ですね。

宗我部

そう、優しくです。結構みんな根こそぎ引っこ抜いちゃうから。野菜やハーブのこぼれ種が今の時期は出てきているんだけど、ドクダミなどにそれらが負けることがあるので少し抜きますが、全部は抜かないです。

良原

植物って育てるの難しいですよね。

宗我部

私が適当なだけかもしれないけど、みんな頑張りすぎだと思うな。よく「うまく育たない」って聞くけれど。

良原

私は植物大好きですけど、ちゃんと育ちません(涙)。

宗我部

それは期待をし過ぎているからじゃないかな。手をかけたからって、本の通りにうまくいくわけじゃないから。環境にも大きく左右されるので、どうして育たなかったかな?と向き合うと見えてくることがありますね。

良原

失敗もあるってことですよね。

宗我部

もちろん。私はあるなんてものじゃないぐらい失敗しています。種をまいて出てこないことも当然あるし、生えてきたけどそのまま消えていったのもたくさんあります。夫に「私の今までの稼ぎは全部土に還してきた」と言われているぐらい(笑)。

良原

そんなに買っているんですか。

宗我部

そうね、春はちょっとまずいですね(笑)。種を買い、苗を買い、あれこれ蒔いて、植えているけど全部が育っているわけじゃないです。でも放ったらかしていたのにすくすく育つものもあって。この場所にぴったりなもの、そうでもないものを見つけたり、観察するのがたまらなく面白いです。

良原

すべてうまく育てようと思うから落ち込んでしまうんですね。もう少しおおらかにいきたいと思います。

宗我部

家の中で育てることはないですか?

宗我部

スプラウトを育てたり、リボベジをやってます。大根、カブ、人参の葉っぱ、キャベツの端切れとかを水に浸けておくんです。腐りにくいので、冬にやることが多いです。

良原

キャベツってどうやるんですか?

宗我部

キャベツって芯を残すでしょう? ちょっととんがった三角になってるのをコップに水を入れてつけておくと、葉っぱがぶわーっと出てくるんです。

良原

え!?

宗我部

そのうち茎が出てきて花も咲きます。

良原

すごいですね。

宗我部

そうなの。それが楽しいの。だいたい11~2月の冬の時季はそういうことやっています。水菜も根元を水につけておけば、新たな水菜が出てきます。ベビーリーフとして食べられますよ。あとね、セロリがおすすめです。結構うわーっと出てきます。

良原

ええ!? セロリの根元なんて何にもついてないですよ?

宗我部
植物の芽が出たり、花が咲いたりするとトキメクという良原さんにときめきます。

セロリの根元を2センチぐらいとっておいて、水に浸けておくと葉っぱが出てくるの。かわいいですよ。たいていのものは芽が出るから、気になるものは水に浸けてみるといいです。実験です実験。私は実験が好きなんです。トライしたことがどうなるのか観察するのが楽しいので、うまくいかなくても大丈夫。成功したら嬉しいけど、しなくても構わないんです。たぶん皆さん、うまくいかなかったときに落ち込むかもしれないけど、あまり一喜一憂しなくてもいいんじゃないかな。私の人生がそんな感じだから。いっぱいトライして何かがちょっとうまくいけばOKです。

良原

ご自身のことそんなふうに思っているのですね。私からみると成功者に見えます。

宗我部

いえいえ、すごーくがんばった9割ぐらいはうまくいってなくて、1割ぐらいがたまたま本になっている感じです。庭だって物心ついた頃からやっていて、かけた年数としては生きている年数のほとんど(笑)。それが、今、やっと本になっているので。

良原

なるほど、確かにそうなのかもしれない。

宗我部

たまたま縁があって本を出させてもらったけれど、すべてがうまくいっているわけじゃないから。植物も同じですね。だけどすごくうまくいった時はうれしいし、学びになるし、経験になるし、積み重ねて自分の糧になる。それが好きなんです。

良原

一個ずつていねいですよね。何事も適当にしないイメージがあります。

宗我部

広く浅いので結構適当ですよ。でも好きなことは、とことん頑張れます。

良原

#2 こぼれ落ちた種が芽吹く喜び

CREDIT

クレジット

執筆・編集
最近は303BOOKSの動画を担当していることが多い一応編集者。私立中学に通う長女に作るお弁当をインスタにアップすることを日課としている。中学2年生と小学5年生の女の子の母。故郷・高知を世界の中心と思っている。
撮影
千葉県出身。どんな趣味も一年であきてしまう45歳。最近始めたジョギングにいたっては冬を越せるか心配中。チーバくんとパンダが好き。