良原リエさんは、音楽家としてアコーディオンやトイ楽器を操り、またある時は料理を作り、ある時は裁縫をし、お弁当を作り、それぞれの分野で著書を書かれています。そして満を持して今年4月に出版したのが『食べられる庭図鑑』(アノニマスタジオ刊)です。興味の幅が広く、しかも深度が深い良原さん。植物好きにはたまらない期待通りの充実の一冊です。
植物はおおらかな気持ちで育てることを知った前回ですが、今回は庭に出て植物を見ながらお話を伺いました。
音楽家・良原リエさんの「食べられる庭」インタビュー
失敗しても大丈夫
今はコロナで大変なご時世ですが、どう過ごされていますか。
遠くに遊びに行けないし、家に友達を呼べないのがつまらないですね。ごはんを作って友達と食卓を囲むことが最大の趣味なのに。1年以上できていません。
私は心が荒れています。
もうムダに飲んじゃいますよね。「もう飲むか、飲むぞー!」みたいに(笑)
それはそれでちょっとたのしそう(笑)。
去年の自粛期間は、庭があって本当に良かったなと思いました。
ちょっとお庭を見せてもらってもいいですか。
――ここから庭での会話
(自転車に絡まる植物を指差し)
これは左側がブラックベリーで、右側はスーパーの野菜コーナーで売っている豆苗の豆を、一個外して埋めておいたら育ったものです。
何が収穫できるのですか?
さやエンドウ、絹さやです。
!?
豆苗はえんどう豆なんですよ。よく見ると、ちゃんとパックに「えんどう」って書いてあります。
それは知らなかったです。
花が咲いた後に絹さやができます。もういくつか食べました。今もつぼみがついています。すごいですよね。こういうことがたまらなく好きです。
うれしいですよね。
うれしいでしょー? ミニトマトは去年栽培した最後の1個を取っておいて、土の上に置いておいたら、秋冬を超えて春に芽が出ました。
埋めなくても出てくるものですね。
トマトが自然としぼんで種だけになって、芽が出ます。ゴーヤもひとつほったらかしておいたら芽が出ました。
自然の力ってすごい!
こういうことに心がときめくんです。植物のパワーを感じます。
僕もにんじんの頭の部分を切って、水につけておいたんですよ。葉っぱが出てきたから土に植えてみたら虫に全部食べられてしまいました。
残念ですね。でもほら、期待しちゃだめですよ(前話参照)。
そう、そんなときは虫が喜んだと思えばいいと思います。にんじんと言えば、去年にんじんを注文しすぎて庭のそこら中に埋めたから、あちこちから芽が出て育っています。そろそろ花が咲くので、そのうちに種ができます。次はいよいよにんじんができるはずです。庭は長いタームで考えています。
長い目で見ると、目の前の失敗もそこまで気にならなくなりますね。
これはセロリです。苗から植えたものですがこんなに大きくなりました。
庭にあるとちょっと使いたい時に便利ですね。
大根は虫がつきやすいので、ネギをそばに植えておくといいですよ。私はスーパーで売っているネギの根元をさしておいています。
ネギも伸びて一石二鳥ですね。本にはバジルとトマトを一緒にして植えるといいと書いていました。
そうですね。他にもイチゴは虫に授粉してもらうと形がよくなるので、虫を呼ぶビオラやボリジを隣に植えています。
本にコンパニオンプランツと書いていましたね。このあたりは「食べられる庭図鑑」を読んでいただきましょう。
あとニンニクは殺菌効果があるから、一緒に植えておくと虫や病気を予防してくれますよ。台所にあるニンニクを埋めておけば育ちます。
あ、これ春菊です。
え? 春菊ってこんな花が咲くんですか?
かわいいでしょー♡ これは種から育てました。花が咲く前の若葉がおいしいのですが、花を見たくて今は大きく育てています。
こんなかわいい花が咲くだなんて……。長い目で見ることの大切さを感じます。
これはキャベツ、これは水菜……。
ほんとですか? なんだか似ていますね。
種ができるのを待っています。キャベツや水菜を収穫する時に、最後の1~2個を残します。種ができれば、そのうちにばら撒かれるので。
やがてどこから生えてくるのですね。
種とりもしますが、どこからか生えてくるのを待つのが個人的には好きです。
自然に任せてどこまでいけるかと 。
カレー用に買ったひよこ豆やレンズ豆も芽が出たし、ドラゴンフルーツの芽も出ましたね。
ドラゴンフルーツの芽って出るんですねえ。
スプーンですくって土にのせておいたら芽が出ました。どこまで育つかは分からないけど、芽が出るだけでも楽しいです。
水菜の花を見たことがなかったり、春菊の花を初めて見たりと、自分の手で育てるからこその楽しみがありますね。