「はやぶさ2」ミッションマネージャ吉川 真さん インタビュー

どうして小惑星のサンプルから地球の生命の起源がわかるの?

この記事は約4分で読めます by 小熊雅子

(上記イラスト:池下章裕 )

2014年12月3日、宇宙にむかって
打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」。
約52億4千万kmの宇宙の旅を経て、
2020年12月6日、小惑星「リュウグウ」の
サンプルが入ったカプセルを無事地球に届けました。
「はやぶさ2」の偉業を祝し、
ミッションマネージャ吉川 真さんにお話をうかがいました。

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「はやぶさ2」ミッションマネージャ吉川 真さん インタビュー

多くの世界初を成し遂げた、小惑星探査機「はやぶさ2」

プロフィール(ページ下部へ移動します。)

小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトについてはこちら 

小惑星「リュウグウ」を目的地にしたのは?

「はやぶさ」が目指した「イトカワ」と、「はやぶさ2」の目指した「リュウグウ」には、どんなちがいがあるのでしょう。

小熊

「はやぶさ」が向かった「イトカワ」はS型小惑星といって、あまり有機物を含まない、岩石だけの天体なんです。「リュウグウ」はC型小惑星といって、岩石だけでなく水や炭素といった物質を含んでいます。
サンプルを持ち帰って分析すれば、地球のような惑星や太陽の誕生の謎や、地球の生命や海の水の起源を知る手がかりとなります。

吉川

地球の誕生の謎というのは?

小熊

太陽系の惑星は、約46億年前の宇宙空間で、ガスやチリが集まった星雲が、自分の重力でどんどん縮んでいって生まれたと考えられています。星雲は水素が主成分なので、生まれた太陽もおもに水素でできた天体になりました。しかし、宇宙空間に水素しかなかったら、地球みたいな惑星は生まれないわけです。ですから星雲の中には炭素や鉄など水素以外の物質があって、地球が生まれる材料になったんじゃないかと考えています。

吉川

地球の生物の生命の起源に関してはいかがでしょうか。

小熊

地球の生命は、ご存知のように有機物でできています。今、地球上にはたくさんの生物がいるので、至る所に有機物があるわけですが、約46億年前、地球が生まれたばかりの時は、表面が高温でドロドロに溶けた状態でした。その後、隕石などが落ちてきて、水や有機物などを地球にもたらしたのではないかと考えられます。

吉川

生物の生命のもとは、宇宙から運ばれてきたということですね。地球が誕生した約46億年前の宇宙空間には有機物があったんじゃないかと。

小熊

そうですね。そして、小惑星の地下には約46億年前の物質が、ほぼそのままの形で残っている可能性があるということです。

吉川

サンプルを採取する目的の小惑星は、どんな成分の天体なのかが大切なのですね。

小熊

有機物は炭素を含む化合物です。「リュウグウ」は、炭素を含んだ物質のあるC型小惑星なので、目星をつけたわけです。
「リュウグウ」の炭素や水を含むサンプルを持ち帰れば、約46億年前の有機物にきっとつながるはずです。それで、サンプルを採取して地球の生物の生命との関係を調べていきましょうと。そんな感じでプロジェクトは始まったのですけどね。

吉川

地球の水や炭素と比べみるわけですね。

小熊

今後の宇宙開発の発展につなげる

「はやぶさ2」の成功は、今後の宇宙開発の発展にどのようにつながっていくと思われますか?

小熊

直近にはJAXAが、MMXという火星の衛星からサンプルを持ち帰ろうというミッションの計画を始めています。そういった惑星探査のミッションには、「はやぶさ2」の往復探査やサンプルを採取などの技術が、当然つながっていくことになります。

吉川

MMXのスケジュールは、どのような予定なのですか?

小熊

MMXは、今のところ2024年に打上げ、2025年に探査機を火星軌道に投入、2029年に地球帰還を想定しています。

吉川

4年後、もうすぐですね。

小熊

あとは、「リュウグウ」のサンプルの分析がどうなるかですね。その結果次第で、さらに新しいミッションを考えたりですね。別の天体からサンプルを持ち帰りたくなるとか、そういうこともあるかもしれませんね。今回の炭素を含んだ物質の分析が楽しみです。

吉川

今後の宇宙開発の発展が楽しみですね。
お忙しい中、ありがとうございました。

小熊
写真:JAXA
大気圏に再突入したカプセル。オーストラリアでは、流れ星より明るい火球として見えた。

プロフィール

写真:JAXA
吉川 真(よしかわ まこと)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS)准教授。
専門は天体力学および太陽系小天体の軌道解析。
小惑星探査機「はやぶさ」ではプロジェクトサイエンティスト、
「はやぶさ2」ではミッションマネージャを務める。
2018年には、科学誌「Nature」が選ぶ
今年の10人「The 2018 Nature’s 10」に選出される。

CREDIT

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執筆・編集
『ダジャレーヌちゃん 世界のたび』の担当編集者。好きなものは、絵本・紙芝居・銭湯・目玉焼き。最近ジョギングに目覚め、10kmマラソンに参加することが夢に。