(上記イラスト:池下章裕 )
2014年12月3日、宇宙にむかって
打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ2」。
約52億4千万kmの宇宙の旅を経て、
2020年12月6日、小惑星「リュウグウ」の
サンプルが入ったカプセルを無事地球に届けました。
「はやぶさ2」の偉業を祝し、
ミッションマネージャ吉川 真さんにお話をうかがいました。
「はやぶさ2」ミッションマネージャ吉川 真さん インタビュー
多くの世界初を成し遂げた、小惑星探査機「はやぶさ2」
小惑星「リュウグウ」がそろばんの珠型のわけ
「はやぶさ」の目指した「イトカワ」は細長いラッコのような形で、「はやぶさ2」の目指した「リュウグウ」は、そろばんの珠のような形でした。
小惑星は、丸いものが少ないのですか?
天体は、自分の重力が強いと丸くなるのです。だから小惑星でいうと、自己重力の強い大きな小惑星しか丸くないんです。小惑星帯でいちばん大きい「ケレス」や「ベスタ」など、丸い形の小惑星は自己重力が強いのです。ところが「イトカワ」や「リュウグウ」などの小惑星は、自己重力が弱いので丸くならないのですね。
「リュウグウ」は丸くはないですが、「イトカワ」よりは球に近いですね。
自己重力の弱い小惑星は、普通だったらいびつな形になります。「リュウグウ」がそろばんの珠みたいな、球に近い形になっている理由は遠心力です。「リュウグウ」の自転が速いと仮定すると説明がつきます。
遠心力によって、小惑星がそろばんの珠型になるのですか?
「リュウグウ」は、もととなる天体がほかの天体の衝突などによってバラバラになり、そのかけらが重力によって集まってできたと考えられます。自転によって起こる遠心力は、外に向かって働く力なので、赤道付近でいちばん強く働きます。そのため、遠心力が強いとかけらが赤道付近に集まるのです。
自転が速いとは、どのくらいですか?
赤道直径約1000mの「リュウグウ」があの形になるための遠心力は、自転周期が3.5時間。3時間半で一周するような自転じゃないとダメなんです。ところが今の自転周期は7.6時間。この速さだと、あの形が説明できないんです。
考えられることは、「リュウグウ」が誕生した頃は、自転が速かったのではないかということです。3.5時間くらいでグルグル回って、その後なんらかの理由で自転が遅くなり、今の7.6時間という自転周期になっただろうと。
自転の周期って変わるんですね。
そうですね。自転の周期はあまり変わらないといわれていたんですけど、今はいくつかの要因で、自転の周期も変わると考えられているんです。
星の王子さまに会いに
小さくて丸い小惑星が存在するなら、『星の王子さま』※の星もあるのではないかと思えてしまいます。
※『星の王子さま』:フランスの小説家サン=テグジュペリの作品。小さな星から地球にやってきた王子さまの話。
そうですね、星の王子さまは、本当に小さな小惑星からきてるので、まさに「リュウグウ」はイメージと合いますよね。
「はやぶさ」「はやぶさ2」ともに、「星の王子さまに会いにいきませんかミリオンキャンペーン」をされていましたね。
皆さんのお名前や応援メッセージなどを募集して、探査機に載せるというキャンペーンです。
「はやぶさ」同様、名前が刻まれたシートを、小惑星の表面に放つターゲットマーカに入れたのですか。
そうですね。いつか誰かが「リュウグウ」でターゲットマーカを拾うと、中に20万人以上の名前が書かれたものがある、というようなことになります。
さぞ、びっくりすることでしょうね。(笑)
今回は「はやぶさ」の時とはちがうこともしています。「はやぶさ2」のカプセルに小さなメモリーチップを搭載して、この中にも皆さんから寄せていただいたお名前やメッセージなどを入れたんです。このメモリーチップは「リュウグウ」まで行って戻ってきたということになります。
「はやぶさ2」といっしょに約52億4千万kmの宇宙の旅をして、帰ってきたということですね!