畑の中にある本屋さん、その名も「はたけのほんや」 

絵本を読んだら10秒待とう

この記事は約5分で読めます by 宗我部香

303 BOOKSの『そらのうえ うみのそこ』を置いてくれている「はたけのほんや」さん。その名前のとおり、畑の中に絵本がかわいらしく並べられている珍しい本屋さんです。前回は「どうして畑の中に本屋さんが?」ということや、子育てと畑の共通点をお聞きしました。今回は絵本についてのお話です。

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畑の中にある本屋さん、その名も「はたけのほんや」 

“子育て”と”植物”には共通点がある!?

内田早苗(うちださなえ)
(株)きいろいおうち代表。待ちよみ絵本講師。「絵本、子育て、暮らし」をテーマにして全国各地で講演を行う。
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前回、絵本を読んだ後に「10秒待つ」と仰っていました。

宗我部

そう、読み終わったらすぐに感想を聞く親が多いから。すぐに「おもしろかった?」って聞くんですよ。“おもしろい”という言葉は、大人は色々なものを含めてのおもしろい意味だと分かるけど、子どもにとっては、「ゲラゲラ笑うおもしろさかな?」と混乱してしまいます。大人ほど語彙力がないから、おもしろいかと聞かれても子どもにとっては意味が分からない。ましてや「どうだった?」だなんて、とらえどころのないような質問もやめてあげてほしいですね。

内田

言いがちですよね。私も自分の子どもに言っていたような気がします……。

宗我部

あとやりがちなのが読んでいる最中に、この本のメインだろうと思う部分を読み手が決めて、指差しながら読むことです。例えば犬の話だったら犬に注目をさせたいから、「この犬が今このセリフを言っているよ」という感じで、犬のセリフのときは犬を指さして、猫のセリフのときは猫を指さすんです。指をさしたら私にしたらもう最後、絶対子どもはそこしか見なくなります。

内田

間違いなく見ますね。

宗我部

読み手が指差すまでは、子どもはあちこちに目線を配っています。子どもの視線の送り方には個性があって、眺めるだけの子もいれば、あちこち見てる子もいる。指差してしまうと、それをさえぎって誘導することになるんですね。

内田

なんだかもったいないですね。

宗我部

そう、もったいないの。だから親はただ読んであげるだけでいい。子どもの方が「これ何?」と言ってきたら、そこから話をふくらますのはありです。ただ読んでいれば、子どもからアクションを起こすか、もしくは起こさないのも子どもの選んだことなんです。子どもって不思議なもので、キャッキャと笑って喜んでいた本だけに印象が残っているかといったらそんなことはない。さほど読んだ記憶もない、喜んだ記憶もない本が実はすごく好きだった、ということもよくあることなんです。

内田

絵本はただ読むだけでいいのですね。「はたけのほんや」では、303 BOOKSの『そらのうえ うみのそこ』を置いてくださっていますが、選書のポイントはどういうところだったのでしょうか。

宗我部

はじめは303 BOOKSから送っていただきましたよね。この絵本のことは知らなかったけど、おもしろいと思いました。ここにきてくれる子って、虫や植物がいるから科学好きな子が多いんです。いわゆる好きなことがハッキリしているオタクっぽい子が結構いるので、私の知っている親子さんはきっとこの本も好きになるというイメージがわきました。それでここで売ることにしたんです。

内田

ありがとうございます。具体的にはどういうところがよかったですか?

宗我部

この本のおもしろいところは、空と海が全部つながっていて関わりがあることが、なんとなく伝わるところです。空と海と宇宙は無関係じゃないから。というのも子どもって一部分に興味を持つことがあっても、全部まるっと興味を持つ子はあまりいないんですよ。たとえばうちの子は魚だけが好きだったし、『そらのうえ うみのそこ』でいうと、宇宙だけ興味がある子はそこだけ見ればいいし、深海魚が好きならそこだけ見ればいい。でも自分がすごく好きな宇宙が、実は海ともつながっていることを、口で説明されてもなかなかピンとこないんですよね。そういうのがビジュアルとして入ってくるのがいいと思うんですよ。

内田

確かに空の上からはじまって、段々と海におりていくので、空間として把握がしやすいですよね。

宗我部

あとは長くたのしめますね。子どもの興味の幅はだんだん広がってくし、移動もする。それって後で全部つながればいいんです。たぶんこの本は、オタク心のすさまじい2〜3才ぐらいの子にポンとあげると、「ここだけ好き!」みたいな子が絶対にいる。そしたらそこだけ読めばよくて、全部読むことにこだわらなくてOK。子どもがそこのジャンルが好きだったら、そのジャンルの本ばかりずっと読めばいいと思っています。子どもの望むことをしてあげるのが一番です。

内田

親としては最初から最後まで全部読まないと気が済まない、みたいなものはありますよね。

宗我部

そもそも「最初から最後まで本を読みなさい」と言うことに私は反対派です。ただし、本当は最初から最後まで読むことで作品としておもしろいはずだから、その点で言うと、大人が本を最初から最後まで読む姿を生活の中で子どもに見せていればいいと思うんです。ただ、子どもに口でそれを言う必要はないです。「最初から最後まで読んで」と言ったり、最初から最後まで無理やり読み聞かせるのはよくないですね。子どもがやりたくないことに親がエネルギーを注いで、それができなくて叱るぐらいだったら、好きなことさせてお母さんもその間好きなことする方がいいと思います。

内田

それはすてきな考え方ですよね。ただ、それでいいのかと不安になる人もいそうです。

宗我部

そう、だからそれでいいと思うお母さんだけがやればOK。一般的なものが落ち着くならそれでいい。子どもに好きなことばっかりさせて、「子どもが他の子に遅れを取る」と感じてその圧が子どもに出るぐらいならやめた方がいい、ということですね。

内田
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“絵本のある暮らし”はもっとカジュアルでいい

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執筆・編集
最近は303BOOKSの動画を担当していることが多い一応編集者。私立中学に通う長女に作るお弁当をインスタにアップすることを日課としている。中学2年生と小学5年生の女の子の母。故郷・高知を世界の中心と思っている。
撮影
千葉県千葉市美浜区出身。ゴースト・オブ・ツシマにはまってます。パンダが好き。