湊 RELEASE TOUR 2024 in愛知 『繋がる』 インタビュー

レゲエシンガー・湊 繋がって生まれた成果と軌跡

この記事は約8分で読めます by 加藤季余乃

愛知県新城市出身のレゲエシンガー・湊が、初のアルバム『繋がる』のリリースを記念して、愛知県の岡崎市・名古屋市・豊川市をめぐるツアーを開催した。

ツアー最終日5月19日、愛知県豊川市にあるMUSIC&BAR『GrooveStock』で行われたワンマンライブにも、湊の歌を聴くために多くの人が集まり、まさに音楽で”繋がる”時間を過ごした────

インタビュー1から続く今回は、レゲエシンガー・湊、自身のことついてインタビュー。

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湊 RELEASE TOUR 2024 in愛知 『繋がる』 インタビュー

レゲエシンガー・湊 繋がって生まれた成果と軌跡

湊(みなと)

レゲエシンガー。
愛知県新城市出身。2023年12月に、初アルバム『繋がる』をリリース。YouTubeで公開した『ありがとう(produced by Gacha Medz)』は再生回数4万を超えて、現在も伸び続けている。
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photo by Yuhei Fujimura ( Instagram

いつの間にか”レゲエを歌っていた

前のインタビューではツアーやアルバムの収録曲について聞いたけど、今回はレゲエシンガー・湊自身のことについて聞いていきたいな。

まず、何をきっかけにレゲエっていう音楽を始めようと思ったの? 昔は、レゲエシンガーになるんだなんて思ったことがなかった。(笑)
(湊と筆者は古くからの友人。)

加藤

放課後にサイファーみたいなことをして遊んでた。歌おうと思って始めたというより、いつの間にか歌ってた感じかな。

<サイファー>
ラッパーが集まって、スキルを高めたり、音楽を楽しんだりするために、フリースタイルラップをしあうこと。

じゃあ、友達と遊びでカラオケに行くみたいな感覚で、サイファーをやっていたんだ。

加藤

当時ラップが流行ってて、ラップをしている人が周りに多かったから入ったんだ。そこにはレゲエを歌う人もいて、俺はラップよりもレゲエが好きだったから、自然とレゲエを歌っていた。

好きな曲とか憧れていた人はいたの?

加藤

その時は、ちーかまんっていうアーティストが身近にいるちゃんと音楽活動をしている人だったから、まずその人を追っていった。

ワンマンライブの会場『GrooveStock』は、サイファーをしていた時、初めてマイクを握った場所でもある。(photo by Yuhei Fujimura)

前のインタビューで、レゲエには「Deejay」や「Singer」っていうスタイルがあるってことを聞いたけど、それでいうと湊は「Singer」なんだよね。

加藤

歌い始めた時は、「Deejay」って言って歌ってたんだけど、気がついたらだんだん周りから「Singer」って呼ばれるようになった。

歌詞はいつから書き始めたの?

加藤

サイファーみたいなものに入った後、高校3年生の時かな? サイファーをしていると、自分の持ち曲が欲しくなって書き始めたんだ。2、3回参加したあたりから、「俺は歌うぞ」って気持ちになっていたかもしれない。

PINOになって、初めて歌を作った。それまで、書いても作っても、出してない曲は多い。世に出せるレベルじゃないものもある。

『PINO』って名前は、誰がつけたの?

加藤

ちーかまんくん。サイファーで歌ってる時に、『ファミスタ』っていうゲームのキャラクターを紹介するみたいな歌を歌ってて、そしたらちーかまん君が、そのゲームに出てくる『ピノ』っていうキャラクターからとって、『PINO』って名前をつけてくれた。

『PINO』から『湊』に名前を変えたのはどうして?

加藤

30になった時に『PINO』ってきついと思って。(笑)

自分の将来を考えたんだ。 (笑)

加藤

っていうのもあるけど、「PINO」って、どちらかというとかわいい感じがしていて。かわいくてポップな音楽よりも、「音楽」っていう感じの音楽を作っていきたかったっていうのも理由。あと歌詞に英語をひとつも入れていないから、名前だけ英語なのもあれかなって。

『湊』って名前は自分でつけたの?

加藤

そう。新城って『山の湊』って言われてるでしょ? 新城に入る道路の脇にある「ようこそ ”山の湊” 新城市へ」みたいなことが書かれた看板を見て、地元の言葉が入っていていいなって思った。

<山の湊>
新城は江戸時代、交易の拠点として栄えていた。たくさんの馬が行き交っていることを浪(波)に例え、馬の浪が出入りする新城を山の湊(港)として、新城のまちなみは『山湊馬浪』と呼ばれていた。

湊がよく訪れる、レトロでおしゃれな新城の喫茶店『阿露摩』で取材。

ジャマイカで自分の”芯”を再認識した

活動しているうちに、Gacha Medzさんっていう音楽のプロデューサーさんに出会ったんだよね。

前のインタビューで、ジャマイカに住んでいるGachaさんに会いに行ったことがあるって話してたけど、レゲエの聖地・ジャマイカはどうだった?

加藤

何もかもが違う。景色も人も、音も匂いも。

それは日本と違って、どうだったの?

加藤

レゲエを聞いていても、その歌が生まれた環境を知らなかった。だから、ジャマイカに来て、こういう環境だから、こういう歌が生まれるんだっていうのを肌で感じた。

その文化に触れて、何か受け取ったことはあった?

加藤

日本では普通なのに、ジャマイカでは普通じゃないことがあるっていうのを感じて、ジャマイカで感じた「いいな」と思ったところや、自分と掛け合わせてできることを持ち帰ってきた。

そこで受け取ったものを持ち帰って、音楽への向き合い方は変わった?

加藤

人間の本質を等身大で表現すること、それからシンプルな歌詞がレゲエのいいところだと思ってて、それが自分の音楽の芯。どんな音に乗せようと、どういうジャンルの音に乗せようと、自分の中にブレない芯があるっていうのを再認識した。それが俺にとってのレゲエだっていうのを、ジャマイカに行って確信したよ。

新城を音楽のある場所にしたい

アルバム『繋がる』のブックレット。

ついに、ファーストアルバム『繋がる』ができたね! アルバムについているブックレット(歌詞などが載っている小冊子)の写真のほとんどは、新城で撮影したんだよね。

地元の新城にこだわっている理由はあるの?

加藤

新城は、音楽が少ない街だと思うからかな……もし、音楽の溢れる場所の出身だったら、別にそこまで地元にこだわらなかったかもしれない。だから、新城に音楽の文化を増やしていきたい。

それはレゲエシンガーをやろうと思った、一番最初の時にも考えていたことなの?

加藤

最初は自分がそうなれるなんて思ってなかったけど、この新城って街に音楽を根づかせられるかもしれないって、自分が成長していくたびに強くなっていったよ。

その目標を叶えるために、何か具体的にやりたいことはあるの?

加藤

一番最後の最後の目標は、新城に自分のスタジオと、みんなが音楽に触れられる場所を作りたい。

今は新城に限らず、いろんな場所で幅広く活動をしているみたいだけど、いずれは新城に戻って音楽活動をしたいんだ?

加藤

うん。今は旅の途中で、そういう場所を作るための材料を集めてる。音楽を作るのにも色々なものが必要だから、知識や道具、人も含め。ここにいても成り立つってなったら多分帰ってくると思う。

湊の歌詞が生まれる源

『俺にとっちゃいい人』とか『ありがとう』とか、湊の歌詞って胸を打つような熱いものが多いと思っているんだけど、それが生まれる源ってなんだと思う?

加藤

ネガ。心の底に潜んだネガティブ。

そうなんだ! 個人的にレゲエって陽気でポジティブなイメージがあるんだけど、湊の歌はネガティブから生まれている?

加藤

今のところそうだと思う。俺がめっちゃ落ち込んでる時に聞くのは、明るい歌より暗い歌の方が多いから。レゲエだからといって、全部がポジティブな歌である必要はないと思ってる。ただ、ネガティブな歌を聞いて気持ちが楽になったりするなら、それはある意味ポジティブなのかもね。

あるスポーツ選手が、湊の『ありがとう』を落ち込んだ時に聴いているって話していたらしいね。きっと、人の心のネガティブに寄り添う歌も、何かを頑張っている人の心に響くのかもしれないね。

加藤

レゲエって音楽は、すごいパワーを持ってる音楽だと思う。だから歌をあまり聞かない人も、イベントに行かない人も、家の中だけで音楽を聞く人も、聞ける音楽であるべきだと思う。

今後もそういうスタイルの歌を作り続けていくの?

加藤

それが今のところ一番無理していない、等身大の表現だと思う。自分の音楽の本質的なところ。

(photo by Yuhei Fujimura)

最後に。湊の歌を聞いたことがない人に向けて、湊の歌ってどういう歌なのか、湊の歌を聞いてどんなことを受け取ってもらいたいか、教えてくれる?

加藤

自分と向き合うための音楽だと思う。受け取り方は人それぞれだし、いろいろな歌があるから、それだけじゃないかもしれないけど。俺にとってのレゲエも、自分と向き合う音楽だと思ってるよ。

湊・ファーストアルバム『繋がる』トラックリスト
  • いつの間にか (Acoustic Ver.)
  • 俺にとっちゃいい人
  • ヒトメボレ
  • 繋がる
  • なんとかなる
  • 言い訳 (2024 Ver.)
  • ありがとう
  • 誰もいなくなった世界 (feat. sumiya takuro)
取材協力

珈琲讃香阿露摩
愛知県新城市字宮ノ西4-5

新城市にある素敵な喫茶店です。
ご協力ありがとうございます。

CREDIT

クレジット

執筆・撮影(インタビュー時)
303BOOKS編集スタッフ。コーヒーをいれることにハマっているけれど、ブラックコーヒーが飲めず、ミルクをいれたカフェオレしか飲めないことを、ちょっとだけ気にしている。