
Kバレエカンパニーのプリンシパルとして『ドン・キホーテ』や『ロミオとジュリエット』、『白鳥の湖』などさまざまな舞台で活躍している堀内將平さん。第2話では、書籍『くるみ割り人形 The Nutcracker』の感想や、2022年1月に上演される『クラリモンド~死霊の恋~』全編のこと、今後の目標についてなどをうかがいました。

Kバレエカンパニー・プリンシパル堀内將平インタビュー
公演『くるみ割り人形』にかかった魔法

熊川ディレクターの思いが再現された『くるみ割り人形 The Nutcracker』

書籍『くるみ割り人形 The Nutcracker』は読んでいただけましたか?

はい。バレエって言葉がない芸術ですよね? でもダンサーには、込めている気持ちがあります。『くるみ割り人形 The Nutcracker』では、それが活字として再現されていたので、読んだときにまるでアフレコされてるような気持ちになりました。

僕たちも、公演を観ただけでは、わからなかったところは確認しながら進めたので、熊川哲也さんの頭の中にあったものを出せたかなと思っています。

そうなんですね。新しい役をやるときに、役の感情を勉強するのにも役立ちそうです。

本の中で好きなシーンはありますか?

全部好きだったのですが、中でもクリスマスツリーのページがいちばん好きですね。僕たちもそこまで考えてなかったっていうくらい細かい設定が出てくることに感動しました。

役作りで大事なのは、観客がどれだけ共感できるか

普段はどういうふうに役作りをしているんですか?

役にもよりますが、ある程度自分の中でイメージを作ってから、最後に他の方の映像を少し観てヒントを得ます。いつも意識してるのは、お客さまがどれだけ共感できるかです。その役に対して、もし僕だったらどうするか、ということをすごく考えますね。

作者の当時の暮らしや生い立ちも調べたりしますか?

僕は作者が描こうとしたものを現代に置き換えて考えています。例えば昔の常識には、現代だと驚くことがたくさんありますよね? 一夫多妻であったり、人殺しが許されたりとか。でも今は常識がちがうので、現代のお客さまがどうやったら共感できるかということを意識していますね。

堀内さんはもともとロシア人の先生に指導を受けていましたよね。熊川さんとの考え方や指導の違いってありましたか?

ロシアでのバレエって「これが美しい」とされる型がきっちり決まっているんです。自由度があるようであまりないんですよ。それに対して、Kバレエは、あくまで王道をベースにしつつ、お客さまをいかに楽しませるかという部分をとても重視しています。

僕が初めてKバレエの公演を観劇したときも、作品のストーリーと踊りが融合されていて、初心者にも、作品世界がとてもわかりやすいと思いました。

バレエに活かされた演技の経験

今年公演されたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』に“死のダンサー”役で出演されましたね? 演技はもともとトレーニングされていたんですか?

きっとバレエの役に立つだろうと思って、演技の勉強もしていました。結果的にすごく役に立ってます。

得るものはありましたか?

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の演出を担当していたのが小池修一郎先生だったのですが、小池先生から求められてるものはものすごく高いものでした。それについていくことで、たくさん勉強させていただきました。あと、クラシックバレエの枠ではないところに挑戦させていただくということで、共演した小㞍健太さんに、いつもと全く違った体の使い方を教えていただきました。とても貴重な経験でしたね。

その経験は『くるみ割り人形』の公演にも活きましたか?

活きました。ドロッセルマイヤーを演じてるときも、実はちょっと『ロミオ&ジュリエット』を意識しながらやっていた部分もありましたからね(笑)。
次の役は、影のあるロミュオー

2022年の1月に上演される『クラリモンド~死霊の恋~』全編で堀内さんはロミュオー役を演じられますが、ロミュオーはどういう役だと思いますか?

「許されない恋」というのがベースにあって、その上に自己犠牲などの何層もの感情が積み重なっていきます。恋愛物語なんですが、ロミュオーは影のある役ですね。

2018年の『死霊の恋』では熊川さんのクリエーションに参加されたそうですね?

熊川ディレクターが振りを出して、演技を決めていく中で、自分らしい表現を加えながら一緒にその場面を作ってくという、共同作業のようなかたちです。

『クラリモンド~死霊の恋~』全編は日髙世菜さんとのコンビですよね。Kバレエでパートナーとして踊るのは初めてですか?

ルーマニア国立バレエ団では一緒だったものの、パートナーとして一緒に踊る機会はなかったんです。白鳥の湖のパ・ド・トロワとかは一緒にやったことがありますが、こうして主演としてじっくりと一緒に踊るのは初めてですね。楽しみです。

今後はプリンシパルとして憧れられる存在に

堀内さんは、2020年に最高位であるプリンシパルに昇格されましたが、プリンシパルはカンパニーの中でどういう役割だと思いますか?

バレエ団を代表するべきダンサーとして、私生活を含め、みなさんから見られてるという意識を持って生活しなくてはいけないと思ってます。僕、Kバレエの名誉プリンシパルの中村祥子さんのことが人柄も含めて大好きで、心から尊敬しているんです。プリンシパルはダンサーとして優れているだけでなく、祥子さんのように後輩の指導などを通して、ほかのダンサーから憧れられる存在であらねばならないと思っています。

なるほど。中村祥子さんへの、敬意をすごく感じます。

そうなんです。僕はプリンパルですから、後輩たちにとって目標になれる存在でなければならないと感じています。

子どもの頃に憧れたダンサーはいたんですか?

もちろん今もですけど、子供の頃からロイヤル・バレエ団のイヴァン・プトロフさんがとても好きです。あと、ロベルト・ボッレさんも憧れのダンサーですね。しかも2人ともたまたま駅や道でお会いできたことがあったんです。

ええ! 偶然会えるなんてすごいですね!

夢を与えてもらうとは、こういうことかと実感しました。

そういう憧れの人たちがいて、今は堀内さんが憧れられる存在になっているんですね。本日は、たくさんお話を聞かせていただきありがとうございました。『クラリモンド~死霊の恋~』全編楽しみにしています!

東京都生まれ。10歳よりバレエを始める。2008年ジョン・クランコ・バレエ スクールに留学。12年よりルーマニア国立バレエ団に在籍し、ファースト・ソリストとして『白雪姫』の王子、『ラ・シルフィード』のジェームズなどを踊る。15年「オーチャード・バレエ・ガラ~JAPANESE DANCERS~」に出演。
15年8月Kバレエ カンパニーにアーティストとして入団。16年9月ファースト・アーティスト、17年9月ソリスト、18年9月ファースト・ソリスト、19年9月プリンシパル・ソリスト、20年10月プリンシパルに昇格。
主な出演作は、熊川版『ドン・キホーテ』のバジル/エスパーダ/トレアドール、『ロミオとジュリエット』のロミオ、『くるみ割り人形』のくるみ割り人形/王子/雪の王/アラビア人形、『海賊』のコンラッド/ランケデム、『ジゼル』のヒラリオン、『白鳥の湖』のジークフリード/パ・ド・トロワ/マズルカ、『シンデレラ』の王子の友人、熊川振付『クレオパトラ』のアントニウス/選ばれた神殿男娼/3人の官僚、『カルメン』のドン・ホセ、『ベートーヴェン 第九』第3楽章主演、アシュトン振付『バレエ ピーターラビット™と仲間たち』のピグリン・ブランド、『レ・パティヌール~スケートをする人々~』『ラプソディ』、プティ振付『アルルの女』など。初演キャストとしては、熊川振付『マダム・バタフライ』のピンカートン、『カルミナ・ブラーナ』のダビデ、『死霊の恋』のロミュオーがある。
17年8月Kバレエ ユース第3回公演『眠れる森の美女』のフロリムント王子を踊る。Kバレエ スクール ティーチャーズ・トレーニングコース修了。同校にて教師を務める。
21年ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』に死のダンサー役として出演。
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