引っ越しの邪魔をする、ねこの絵本#3

『ねこのホレイショ』

この記事は約2分で読めます by 桑原るみ

引っ越しをするので、本棚の本をダンボールに詰めている。引っ越したあとのことも考えてジャンル分けをしていたら、ねこが出てくる絵本のコーナーができた。大好きなねこたちだ。ちょっとだけなら、と読みはじめて3冊目。

絵本のなかのねこを飼えるとしたら、あなたはどのねこを飼うのか、と聞かれたら(だれにも聞かれないと思うけど)、答えは決まっている。

ホレイショだ。

『ねこのホレイショ』
エリナー・クライマー 文 ロバート・クァッケンブッシュ 絵 
阿部公子 訳(こぐま社)

ホレイショとは、距離をとるのがむずかしい。表紙のしかめつらを見ると、「キャー、ホレイショ~」と呼びかけそうになる。表紙の写真を撮るのも、正面から、右から、左からと、うきうきして楽しい。この感覚は「ミーハー」だ。ホレイショにはミーハーになってしまうのだ。

ホレイショはちょっと太り気味の、中年のおじさんねこ。だっこされるのがきらいで、人間にかわいがられたいなんて、ちっとも思っていない。むしろ、人間には自分のことを「そんけいをこめてあつかってほしい」と思っている。

しかめつらをして不機嫌な理由は、飼い主のケイシーさんが、だれにでもやさしくて、のらの子犬や羽をケガした鳩など、こまっている動物を次々と家にむかえいれてしまうから。ホレイショからすれば、「いったい、ここはだれの家なんだ?」となる。そしてある日、ホレイショは「もううんざりだ」と家を出てしまうのだ。

ここからがホレイショの見せ場なのだけど、家出をしたホレイショがその後どうなったのかは、読書のお楽しみにとっておきたい。この本は今も書店で買うことができる!

この本で、ホレイショと同じくらい好きなのが、飼い主のケイシーさんだ。ケイシーさんのところへ行けば心配ない、そう信頼される大人は、なんてかっこいいのだろう。youtube で、保護されたのらねこがミルクをもらい、お風呂に入れられ、健やかになっていく動画がある。のらねこの剣のあった目つきが和らぎ、鳴き声まで変わる。安心しきってとろけたように眠る姿には、じいんとする。動物を助けるのは、簡単なことではないだろう。今もどこかで動物を助けている、全てのケイシーさんを、私は尊敬する。

最後のページまで読んで、あらためて表紙を見ると、きっとホレイショに「キャー」と言いたくなるにちがいない。しかめつらもご愛嬌、ちっともこわくないぞ、キャー。もうすぐとろけそうなホレイショが大好きだ。やっぱり読んでよかった。ダンボールには入れないで、ちょっと飾っておこう。

CREDIT

クレジット

執筆
小学校中学年のときに『ひみつの花園』を読んで本が好きになる。まだインターネットが普及していなかったころ、雑誌の『フロムA』を見て当社の学生アルバイトに。以来編集に携わる。引っ越し先は緑が多いので散歩が楽しみ。
    イラスト
    1994年、福岡県生まれ。漫画家、イラストレーター。第71回ちばてつや賞にて「死に神」が入選。漫画雑誌『すいかとかのたね』の作家メンバー。散歩と自転車がちょっと好きで、東京から福岡まで歩いたことがある。時代劇漫画雑誌『コミック乱』にて「神田ごくら町職人ばなし」を不定期掲載中。