おいしいものを、もうひとつ

うさぎやのどら焼きじゃないほう

この記事は約8分で読めます by 笠原桃華

こんにちは、笠原です。

―夕方の阿佐ヶ谷。
子供連れ、若い女性にお年寄り、スーツを着たサラリーマン。

行列…とまではいかないけれど、常に4人ほど列を成し、次から次へと人が来ては「どら焼きを2つ下さい」などと言って、少量ずつ買っていきます。

そう、ここはどら焼きの有名店。
「どら焼きと言えば?」と聞かれたら、必ず名前が上がるお店です。


おいしいものを、もうひとつ…。
今回は「うさぎや」です!

うさぎや概要

「うさぎや」、みなさんご存知でしょうか。

冒頭でも述べました通り、どら焼きの名店として名高く、その人気と美味しさは《東京三大どら焼き》のうちの一つとして名が上がるほど!

「うさぎや」は、大正2年に創業した上野店、そして創業者の親族が運営している日本橋店、阿佐ヶ谷店の合計3店舗あります。

創業者初代谷口喜作が卯年生まれであったことから、「うさぎや」となりました。

創業より「材料は最上のものを選び、 味を専一に、価格は廉価に、容器は廃物利用のできる素材」を常に心がけており、今もこの営業方針を変わらず守っているそうです。

当時砂糖が高価だったことから、サッカリンやズルチンといった人工甘味料を使う甘味処も多かったそうですが、当時の店主は断固としてそれを許さなかったそう。

そんなエピソードからも、「うさぎや」が守り続けてきた素材へのこだわりがうかがえます。

うさぎや 阿佐ヶ谷店

今回、私が訪問したのは阿佐ヶ谷にある「うさぎや」です。

上野店オーナーの親族が、1950年に西荻窪に「うさぎや」を設立し、その後1957年に阿佐ヶ谷に移転しました。

移転する際、商品が傷むのを避けるために、北の方角を向いている建物を探したのだとか。

古書店が北向きだと言う話は聞いたことがありましたが、和菓子屋さんの向きはあまり考えたことがなかったので、勉強になりました。

こうして写真を撮影している間にも、お客さんの出入りが続きます。

ショーケースにサンプルが入っています。ここで注文すると、店員さんが奥で商品を経木箱・パック等に入れ、紙に包んで渡してくれます。
イートインスペースの様子。現在、店内での飲食は休止しています。

店内に入ると、小さなショーケースと数席分のイートインスペースがあります。

イートインスペースは感染防止のため現在使われていないようですが、甘味をいただくことができます。

通年メニューとしてあんみつがあり、夏はかき氷、冬はお汁粉やぜんざいを注文することができます。

そして、ショーケースの中はこんな感じ。

最上段に、全商品が並べられています。

上段左手。

3月と4月に訪問させていただきましたので、桜の可愛らしい上生菓子が目に晴れやかでした。

上段右手。

この他にも季節ごとのお菓子が並びます。お花見シーズンには桜餅や草餅、5月に入ると柏餅、夏場は水羊羹や葛桜…など。

二段目にはアソートボックスが並んでいます。

うさぎ餅、上生菓子、うさぎ饅頭、味噌饅頭など…。

アソートボックスは目にも楽しいですね。

卯年にはうさぎ饅頭が飛ぶように売れるのだとか!

可愛いうさぎさんたちがこちらを見ています。

また、卒業式シーズンには「紅白うさぎ饅頭」を学生への餞として注文する学校もあるそうです。うさぎ饅頭2つを一箱にいれた特別商品です。

最後の三段目には、「うさぎや」名物のどら焼きがズラリ!

「うさぎや」看板商品のどら焼きですが、阿佐ヶ谷店のみパッケージがうさぎ模様になっています。

単品注文の場合は簡易包装で手渡されます。

現店主で3代目の瀬山妙子さんにお話をうかがうなかで、同店が創業以来人々に愛されてきた背景に「個包装での販売」があるのではないかとおっしゃっていました。

お店の中。店員さんたちが一つ一つ手作業で包んでくれます。

このようにレジカウンターの奥では店員さんたちが忙しそうに作業しています。

商品自体は簡単に包装されていますが、紙袋等は有料です。

もし贈答用に購入される場合は、ショーケース2〜3段目にあるような箱に入ったものを注文した方が良さそうです。

今回買ったもの…

今回もまた、たくさん買ってしまいました…。

トトロがくれる小包のように包んでくれます。

紙の包装を取ると、そのまた中はグラシン紙のような紙で包装されています。

今回の購入したのはこちらです。

左上から順に…うさぎ饅頭、どら焼き、兎月最中、月影です。

どらやきじゃないほうだけ買うつもりでしたが、結局どら焼きも買ってしまいましたね…。

うさぎ饅頭以外の3点は裏に成分表示がありました。

どれもシンプルな素材でできていて、安心感があります。

(…カロリー表示は見ない主義です。)

手のひら大のずっしり大きめのどら焼き。

わたし自身、こちらのどら焼き、大好きです!

封を開けた瞬間、蜂蜜のキュッと締まった甘い香り…。

堪らないんですよね、これ。

あんこもほろりと解けてゆく儚い系のつぶあんです。

食べてみると驚くと思うのですが、このユルさの餡にもかかわらず、中に原型を留めている小豆がたくさん残っているんですよね…。かと言って、びちゃびちゃしているわけでもありません。

これ、本当に凄いことだと思います。

ゆっくり極限まで小豆を水戻ししたあとに、そーっと炊き上げられた…

というような、そんな「餡」です。

うさぎやさんがいかに真摯な水分コントロールをされているかというのが伝わってきます。

店主の妙子さん曰く、このどら焼きの作業行程では、皮の表裏を毎日職人が手作業でひっくり返しているそうです!

「例えば1日で1,000個売れた日があったら、その日は2,000回ひっくり返してるっていうことなのよ」と、笑って教えてくださいました。

「どら焼きじゃないほうの特集じゃないのか!!」と突っ込まれそうですが、どうかお許しを…。

「どら焼き」じゃないほう、食べてみた

もちろん、どら焼きレビューでは終わりません。

最初は「うさぎや」第二の名物であり、お店の名前を冠している「うさぎ饅頭」からご紹介しますね。

寒天入りの餡で書かれたうさぎさんのお顔が愛らしい。

ここで問題が発生しました…。

レビューするので、切らないといけないんですよね…。

ススッ

切ってしまうのを憚られる可愛さです。(食べ物で遊ばない!)

成分表の表示がなかったので予想ですが、薯蕷饅頭だと思います。

お薯が入ったもっちり・しっとりした表皮と、食べた時の歯切れの良さがさっぱりしていてとっても品の良いお味でした。

餡も美しい…。

午前中にいただいたのですが、朝日にきめの細かいこし餡が透けるようで綺麗です。

ひんやりとした舌触りが最高です。

お次は「兎月最中」をいただきます。

見えにくいかもしれませんが、最中は片面が小麦色、もう片面が淡いみどり色になっています。

ぱっと見、限りなく質素ではありますが…。

半分に切ってみるとこんな感じです。

見てください、これ…。

「うわ〜〜〜〜!」と声が出るくらい、ちょっと正直感動してしまいました。

こし餡、白餡、求肥が入っています。

こんなサービス精神旺盛な最中、見たことありません。

最中はやはり保存がきくよう、甘み強めですね。

とてつもなく“お茶がウマい”お菓子です。

ただ、求肥も入っているので甘すぎて飽きちゃうと言うこともなく、いいバランスです。

かじる角度によって味を変えられるのも楽しい…。

こう言う和菓子に出会うと、

「あ〜、日本に生まれてほんとに良かった…」と思わされますね。

幸せです。

最後に、「月影」です。

持って帰る途中ちょっと潰してしまったので、斜めから…。小ぶりだけど重量感のある、丸いお菓子です。

こちらに関しては、店頭で販売員の方に「隠れた名品だと思うものはどれでしょうか」と、おすすめをうかがい、購入しました。

切ってみるとこんな感じ。

クッキー系の生地の間に餡が挟んであります。

実はこの餡が、店員さんおすすめのポイントでした。

他の「うさぎや」の和菓子とは異なり、こちらだけ黒糖餡が使用されています。

黒糖の香り高さがクセになりそう。

「これはいいものを教えてもらったな」とニヤニヤしながら食べました…。

コクのある餡ですが、スッキリした後味です。

「おっ…コーヒーに合いそう」と思い、急遽コーヒーを淹れました。

…合いますね。

洋菓子派の友達にもオススメできる和菓子だと思います。

幅広い世代に喜ばれそうな手土産を一つ選ぶとしたら、私はこちらを購入するかもしれません。

おわりに

今回記事を書くにあたり、阿佐ヶ谷育ちの友人に「うさぎや」のことを聞いてみました。

すると、「え、うさぎや知らない人いるの?」との返事が…(笑)

それくらい馴染みのある和菓子屋さんだと言うことでしょうね。

確かに、訪問したときに店頭でお客さん同士、

「これ好きなのよねぇ」

「あら〜、もうそれ売り切れなのね…残念だわ」

なんて、会話をかわし合っている光景を実際に目にすると、本当に地元の人に愛されているんだな〜と感じられます。

うさぎやのお菓子の美味しさはもちろんなのですが、

「近所の和菓子屋さんを探してみようかな…」と、そんな気持ちにさせられる温かみあるお店でした。

看板商品のどら焼きだけでなく、今回食べた「うさぎ饅頭、兎月最中、月影」の丁寧な美味しさにも感動しました。

創業以来、変わらず受け継がれている「うさぎや」の心意気が伝わってきます。

どら焼きに限らず、是非みなさんに楽しんでいただけたらと思います。

おいしいものを、もうひとつ。

【取材協力】
うさぎや 阿佐ヶ谷店 
東京都杉並区阿佐谷北1-3-7 
TEL:03-3338-9230
営業時間: 9:00~19:00 
定休日 土曜、第1・2・3金曜 (2021年5月現在)

CREDIT

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執筆・編集・撮影
長野で野山を駆け回り、果物をもりもり食べ、育つ。好奇心旺盛で、何でも「とりあえず…」と始めてしまうため、広く浅いタイプの多趣味。普段はフリーで翻訳などをしている。敬愛するのは松本隆、田辺聖子、ロアルド・ダール。お腹が空くと電池切れ。